第7話ㅤ自分にできること
ㅤRuralsounZを行った前後では自分の身体に全くの変化を感じなかったが、ナイトノートは変わっていた。
ㅤ[ステータス]
名前:サガエㅤシワス
適役:剣士
装備:ふつうのリュック
特性:徴羽之操
スキル:跳躍Lv1
ㅤナイトノートを作ったときはスキルはなかったから空欄だったはずなのに、跳躍のスキルを習得したことになっている。
ㅤ「ねぇ、これってどういうこと?」
ㅤエスプルは信頼を置く人物であるため、自分のナイトノートを見せることにした。スキルも特性もわからない方が自分としてはもどかしい。
ㅤ「オルパス……スキル…………もらえる……たまに」
ㅤ確かに、何気なく押した選択画面の中に「スキルモード」という選択肢があった。これは、そういう事なのか。
ㅤ「この跳躍ってスキル、使えるのかな……」
ㅤあくまで現実世界のフィクションの考え方だけど、スキルには当たり外れがあるという知識が頭の片隅に残っていた。外れスキルじゃないか不安だった。
ㅤ「しわす!そこ……きのみ…………とって!」
ㅤそんな僕の考えを見透かすかのように、エスプルは笑顔で果実を取るように言った。
ㅤ「ちょっと届かないよ、あの木の実は」
ㅤ「とる……!とって……!」
ㅤエスプルがここまで子供っぽくお願いするのも珍しいので、努力だけしてみることにした。
ㅤ「ほらね、届か……な、えぇ!?と……と……危な……えぇ!?」
ㅤ届いてしまった……が、着地に失敗して尻もちをついた。これがスキルか。Lv1でこれだけ跳べるのは聞いてない……
ㅤ「はい……エスプル」
ㅤ「あり……がと!」
ㅤエスプルのおかげ……でスキルの効果も知ることが出来たが、まだわからないことがある。
ㅤ「ちなみに、エスプルは特性って何かわかる?ギルドのお姉さんに聞いてもわからなかったんだけど……」
ㅤ「わから…………ない」
ㅤなにか歯切れの悪い返事だったが、ギルドのお姉さんでもわからなかったなら、エスプルが知らなくて当然だろう。
ㅤ「つぎ……つぎ……いこ!」
ㅤこの後、エスプルがいろんな村のあちこちに連れ回したこともあり、家に着いて靴を脱いでそのまま倒れるように寝てしまった。
ㅤ――――――し……しわ…………しわす!!
ㅤ「しわす!」
ㅤ「あぁ、エスプル……おはよ!」
ㅤ気づいたら、朝。突然、エスプルの声が聞こえてびっくりした。どうやら家まで来てくれたようだった。
ㅤこの異世界に来てどうなる事かと思ったけど、2日間何とかなった。現実世界ではあてもなく大学に通っていたが、異世界に来たのもなんかの縁だろう。
ㅤ――――――この世界で何がしたいんだ……?
ㅤ「しわす…………?」
ㅤ1番に思いついたのは、エスプルの笑顔を守ることだった。多分異世界で活躍したいとか、もはやゆっくり生きてたいなんて考えもあったのかもしれない。でも。
ㅤ――――――この世界を知らなさすぎる。
ㅤこの村とエスプルを守れるくらいに強くなって、この世界をもっと楽しめるようにたくさん知ろう。
ㅤ「だい……じょぶ…………?」
ㅤ「うん!大丈夫!今日はどうするの?」
ㅤ「また…………もり……いこ!!」
ㅤ深く考えても仕方ない。今わからないことは、どうしようもない。とりあえず、この世界に慣れるために今日もエスプルについて行くことにしよう。
ㅤエスプルがオレンジの瞳を輝かせて、今日も袖を引っ張られるのであった。
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