第4話ㅤ出会いとともに

ㅤ「ちょっと……まって……ね」


ㅤエスプルに言われた通り村の入口のような所で待っていると、村の1番大きな家から銀髪の初老の男性が出てきて、何やらエスプルと話をしている。

ㅤエスプルのベージュの髪が夕焼けに映える。改めて、エスプルは可愛らしいと感じた。


ㅤ初老の男性と一瞬、目が合った。その後エスプルを見て、少し驚いたような表情を見せたが、初老の男性は優しい眼差しに変わってエスプルの頭を撫でた。

ㅤある程度話したところで、ミディアムボブの髪を揺らしながら、エスプルは小走りでこっちに来た。


ㅤ「しわす!……いいって!」


ㅤ「いいって、なにが?」


ㅤ「むら……しわす……いる!」


ㅤ「この村に居させてくれるの?」


ㅤ「うん……うん……!しわす…………こま……る?」


ㅤ「そんなことない!とてもありがたいけど……いいの?」


ㅤ「よう……こそ!わたし…………の……むら!!」




ㅤ村を入って、見回す。

ㅤ木を基調とした村は、流石異世界と言うべきかファンタジー感あふれる素朴さに好感を持った。

ㅤだんだんと暗くなってきた村に、1つ、また1つと松明の灯りが灯る。


ㅤ「ここ……!ここ……!」


ㅤ気付けば、焦げ茶色の木の家の前にいた。まるでゲームのような色彩で、ロマンを感じる。


ㅤ「しわす!ここ…………つかう!」


ㅤ「こんな立派な家を使っちゃって……いいの?」


ㅤ「うん!」


ㅤ至れり尽くせりとはこのことだろう。この村の人に、とりあえずお礼を言いたいが、恐らく誰もがエスプルのように翻訳のスキルを持ち合わせていないだろう。


ㅤ「エスプル、さっきの男の人ってどなた?」


ㅤ「ん…………そん.……ちょう……?」


ㅤ村長…………村長!?

ㅤ1番偉い人に許可を貰ったのか!?せめてご挨拶に向かいたい……


ㅤ「村長様にご挨拶したいんだけど、エスプルもついてきてくれる?翻訳して欲しくて」


ㅤ「……?……いいよ!」



ㅤ入口で待ってる時に見た大きな家に着いた。もうすっかり夜になってしまった。


ㅤ「xxxxㅤxxxx!!!」


ㅤこの時代にインターホンはないし、ノックの文化もないのだろう。エスプルの言葉はわからないが、「ごめんください」的な言葉だろうか……?


ㅤ――――――カタッ


ㅤ中から村長が現れた。夜になって迷惑じゃないかと心配だったが、村長は優しかった。


ㅤ「エスプル、翻訳お願いできる?」


ㅤ「うん!」


ㅤ「この村に置いていただき、ありがとうございます。この村の為にできることは精一杯がんばります。よろしくお願いします。」


ㅤ「xxxxxxㅤxxxxxxㅤxxxx,ㅤxxxxxxㅤxxxxㅤxxxxxxxxxxㅤxxxxㅤxxxxxx」


ㅤ分かってはいたけど、村の言葉をとても流暢に話すエスプルはなんだか頼もしかった。


ㅤ「xxxxxxㅤxxxxㅤxxxxxㅤxxxxxxxx」


ㅤ「んー……むら……ゆっくり………って」


ㅤ「ほんとにありがとうございます!」


ㅤ通じるかわからなかったが、村長さんに誠意をこめてお辞儀した。住まいがなかったら今頃どうなっていたか……。感謝しかない。


ㅤ「あ……あと…………そんちょー……なまえ……リタル……ダント」


ㅤリタルダントさんか、かっこいいな……

ㅤ僕もヨーロッパに生まれてたら、かっこいい名前になっただろうか。


ㅤ「リタさんって、呼んでも……いいですか?」


ㅤ言葉は通じなかったかもしれないが、リタさんは笑顔で返してくれた。


ㅤその後、エスプルを介していろいろなことを教えてくれた。僕が田舎出身の旅人であると説明すると、村のしきたりやギルドの存在、種族の説明と言ったところだ。

ㅤ話が落ち着いた所で、エスプルが村長の言葉を聞いてぴょんぴょんした。


ㅤ「あした……しわす…………むら……あんない!……する!」


ㅤ胸を張って、ドヤ顔でこちらを見ている。やっぱりこういう所は年相応なのだろうか。

ㅤ実際ありがたいので、お言葉に甘えることにした。




ㅤ「いろいろとありがとうございました。リタさん、これからもよろしくお願い致します。」


ㅤ「xxx!」


ㅤやはり言葉はわからなかったが、拳と拳を突き合わせて村長と別れた。拳と拳を突き合わせるのが、この村の挨拶らしい。


ㅤリタさん……あまりに紳士だ。長身で優しそうな眼差し。あんな男に僕もなれたらいいなと憧れてしまう。




ㅤ「今日はほんとにありがとう、エスプル」


ㅤ「しわす……いい、ひと!あした…………たのしみ!」


ㅤ「明日も案内よろしくね。おやすみ、エスプル」


ㅤ「うん……!おや……すみ!」


ㅤ新拠点の前でエスプルと別れた。エスプルは小さな拳と突き合わせて、自分の家へと走って帰っていった。


ㅤ明日に期待をして、家の中に入ろうとした瞬間冷たい風が吹いた。

ㅤ近くの松明が1つ消えていた。


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