第1話 Anotherstory

ㅤ朝、7時。

ㅤお気に入りの三味線のバチのマスコットキャラクター、三味八ちゃんの目覚まし時計を止めるところから私の1日が始まる。


ㅤ大学3年になったが、新年度になったからと言って何か変わることも無い。朝食を取るまで滞りなく終わらせる。


ㅤ今日の授業は夕方から。とりあえず、師走の家に行ってお惣菜を届けよう。なんだか少しそわそわする。


ㅤ「ほら、紫桜音。起きて。今日2限から授業あるんでしょ。がんばって」


ㅤ午前8時。朝が弱い妹、紫桜音を起こすのも私の役目。


ㅤ「え〜……もう朝〜……?」


ㅤ「私、師走の家に行くから、朝食べて大学行きなさいよ」


ㅤ「わかった〜。師走によろしくね〜」


ㅤもう。相変わらず、紫桜音は危機感ないんだから。でも思えば、昔からそうだった。

ㅤ紫桜音の口癖は、


ㅤ「なんとかなるよ〜。大丈夫大丈夫。」


ㅤかなりゆるい。それでも、仕事はいつの間にか終わらせている。ほんとに不思議。これまで紫桜音が焦っているところをほとんど見た事がない。

ㅤそんな紫桜音の性格だから、大丈夫だろう。


――――――ガチャ。


ㅤ「いってきます」


ㅤ気持ちに身体が相乗効果をもたらたしたのかと思うくらい足取りも軽かった。



ㅤ曇天。今、雨が降った気がした。

ㅤ師走の家までは歩いて20分と言ったところか。早く行ってしまおう。


ㅤ――――――ピンポーン。


ㅤ10秒……20秒……1分。出ない。


ㅤ――――――ピンポーン。


ㅤ家にいない……?でも、確かに昨日RENONEで連絡したはずだけど。


ㅤ――――――ピンポーン。


ㅤ流石に、家にはいないだろう。急用でもあったのだろうか。しかたないから、お惣菜は1回持って帰ることにした。



ㅤRENONE:山名ㅤ柚希


ㅤ師走が家にいなかったから、煮物持って帰っちゃった。急用がある時でも連絡しなさいよね。



ㅤ一旦家に帰ろうとしたら、小雨がパラパラと降ってきた。とりあえず、早く帰った方がよさそうだ。

ㅤ遠くの方で雷がなった気がした。


ㅤ柚希の心配は虚しく、送ったRENONEのメッセージに既読がつくことは無かった。



――――――――――


ㅤおはようございます。7時になりました。朝のニュースです。


ㅤ今朝未明、桂散市に在住の大学に通う男性の行方がわからなくなっていることが判明致しました。

ㅤ防犯カメラから、大学の最寄り駅で電車に乗っていることが確認されましたが、そこからの行方はわかっておりません。

ㅤ警察は捜索願いを受け、今朝から事件性の有無も考慮しながら、捜索を開始したとのことです。


ㅤ次のニュースです

ㅤ――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る