第8話 町娘とボーナスステージ

「君は魔王として多くの勇者を倒してきたんだけど、僕が思っているよりもこの世界の住人から恐れられていないようだね。魔王っていうモノは本来は人々から恐れられてこそ輝くものなのだが、君の場合はこの世界の住人に無関心すぎるんじゃないかな。もう少し多くの人を殺しても良いと思うよ。だってさ、この世界の住人は君達魔王や勇者に殺されたってすぐに生き返ることが出来るんだからね。生き返ると言っても、殺された記憶と恐怖はちゃんと残るんで、結果的には君が恐れられることに繋がるんだよ。それなのにさ、君は事もあろうに人間を殺して回っていた勇者を倒したんだよ。それってさ、どっちが魔王でどっちが勇者かわからないじゃないか。バランスをとるためにも君はもっとこの世界の住人を無駄に殺すことにした方がいいんじゃないかな。今さら倫理観とか罪悪感とかはどうでもいいからさ、君が魔王たるゆえんを見せてあげたらどうかな」

「そう言われてもな、俺は別に人を殺したいって思ったことは無いし、今だって戦いが終わったら少しは後悔してたりもするんだよ。まだ俺が直接手を下したんだったら話は分かるけどさ、俺の場合って戦いに関しちゃ何の実感も無いんだからね。それだけはどうにかならないかな」

「どうにもならないね。君が一度死んで難易度を変更すればいいんだけど、今の君じゃ誰が相手でも死ぬことなんてないだろうね。でも、他の世界に行ってみたら君より凄い人がいるかもしれないよ」

「それってどうやったら行けるんだ?」

「さあ、神にでもなればいけるんじゃないかな。そんなの無理だと思うけどね」

「そう言えば、最近はサキュバスを見ないけどどこかに行ってるのか?」

「ずっと見てないけどどこかに行ってるのかもな。それは君が女の子ばっかり相手にしてて男に何もしてないってのが原因なんだけど、君は男に興味なんてないだろうから仕方ないよな。俺もサキュバスには魔王アスモは男に興味無いから他のとこに行った方が良いって言ってたんだけど、他の誰よりも君の側にいるのが良いって言ってきかなかったんだよ。それが今ではどこにいるのかも知らないって事になるけどさ、どこかで見かけたらたまには顔を見せろって伝えておいてくれよ」

「どこかで見かけたらッて、あんたらは連絡を取り合える関係じゃないのか?」

「自慢じゃないけどな、俺達って現実世界では何も出来ない無益な存在なんだよ。普通だったらこうして君と話すことも出来ないんだけど、君が送ってくれる力が凄すぎてこうして現実世界に無駄にやってきて力を浪費しないと破裂しそうになってるんだよ。そういう事もあってサキュバスは不貞腐れてるのかもしれないな。でもよ、今日も若い女を抱きに行くんだろ。俺が言うのも変な話だけどさ、お前の性欲って尋常じゃないのな。俺にとっちゃそれはとってもいい事なんだけどさ、そっち方面で魔王アスモの名前を轟かせ過ぎてる気もしないでもないんだよな。お前がそれでいいんなら俺は気にしないんだけどよ」

「別に俺もそうなりたくてしてるわけじゃないんだよな。普通に恐れられた方が良いんだろうけど、気付いたらそっち方面の方が有名になっちゃったんだよな。直接俺に声をかけてくるやつなんてほとんどいないけど、今日は珍しく声をかけてきたあの町の女の子と遊んでくるよ」

「そうかそうか、お前もついにこの世界の人間に手を出すようになったんだな。だがな、何も気にしないで思う存分楽しんでくるといいぞ。お前はこの世界の人間と交わったとしても、異種族間で子供が出来るなんてことは無いから安心してくれていいぞ。魔王と勇者だって子供は出来ないようになってるから安心してくれていいんだからな」

「そうだったのか。そういう事は早めに言ってほしかったな」

「そう言うと思ってたよ。お前は気を失いそうになっている女の胸に出すのが好きだもんな。全部出きる前に口元に運んで掃除させるのも好きだもんな。別に俺は否定しないけど、たまには他の場所に出してみるのもいいんじゃないか」

「検討するよ」


 俺は基本的に食事を必要としないのだが、魔王城にいる魔物や人間たちは生きていくうえで食事は必ずとらないといけないものだ。俺も元は人間なのでそれは理解しているのだが、この体はなぜか普通の食べ物を食べても消化が出来ないのだ。いつまでも腹の中に食べ物が残っている感覚があって、それが無くなるには俺の体内にいるらしい寄生生物の食欲次第という事なのだ。ただ、普段からその寄生生物は俺の魔力を吸いながら活動の糧にしているそうなので、食べ物に興味を示すことはほとんどないのが困るところでもあるのだ。

 約束の時間まではまだ少しあるのだが、魔王である俺がその辺をうろつくわけにもいかず、なるべくならと人通りの少ない場所を選んで向かっていた。人通りの少ない場所を選んで歩いていることも悪いのだが、この世界の住人は家の中だけではなく外でも発情をして盛っているのだ。

 それの原因が俺であるのは間違いがないので何も言えないのだが、されている最中の女が俺を見付けるとみんな死肉に集まるゾンビのように手を伸ばして求めてくるのはちょっとやめてほしかった。約束が無ければ多少は相手をしてあげてもいいのだけれど、今日は先約があるため何もすることは出来なかった。だが、出来ないなりに何かすることが無いかと思っていたのだが、ちょうどそのタイミングを計ったかのように俺が以前作ったオモチャの量産品を大量に持ってきていたフクロウと牛の魔物が現れたのだ。

 俺はその二体にオモチャを配るように命令をしたのだが、急に目の前に現れた魔物に驚かない人間なんているはずもないので、オモチャは誰の手にも渡ることは無かった。ただ、そのおもちゃを配っているという噂が何故か世界中に広まってしまい、俺の住む魔王城は今まで以上に女性客が増えることとなってしまったのだ。しかし、それはまた別の日のお話しなのだ。


 俺は指定された場所に無事にたどり着いたのだが、そこは遠くから見ても怪しいネオンが輝く夜の店にしか見えなかったのだ。場所を間違えたのだと思って引き返そうと思ったのだが、二階の窓から俺を呼ぶ女の声が聞こえてきた。


「魔王様、本当に来てくれて嬉しいです。今案内させるんでそこで待っててくださいね」


 町娘はここで働いていたのか。昼間に見た時はもっと固い仕事をしていそうに見えたのだけれど、ここでもある意味固い仕事をしているのだろうな。でも、その割には気持ちいいエッチをしたことが無いというのは多少引っかかる発言ではあった。

 別に軽蔑するわけでも差別するわけでもないのだが、このような夜の店で数を多くこなしているはずなのに気持ちよくなれないというのは疑問だった。この店がまだどういうシステムなのか理解してないのでハッキリとはわからないが、それだけの数をこなしていれば自然と自分に合う相手を見付けることも出来たのではないかと思う。それよりも、数をこなしていくうちに無意識のうちに妥協をして理想よりも劣って入るものの、それなりに気持ちいい相手もいたのではないかと感じていた。


「お待たせいたしました。これよりバス姫様のお部屋へご案内いたします。御存知ではないかもしれませんが、ここではあなた様の欲望の赴くままお好きな事をお好きなだけ行っていただいて構いませんので」

「一つ質問なんだけど、ここってお金を払った方が良いの?」

「いえいえ、お代はいただきませんよ。ここはあなた様がお楽しみいただく事で成り立っている空間でありますから」


 たぶんなのだが、あの町娘はサキュバスなのだろうな。名前もバス姫とか呼ばれているし、何よりもここがお金ではなく俺が楽しむことで成り立っているというのもサキュバスだと思う理由の一つなのだ。

 俺がそんな事を考えながらたどり着いた場所はこの建物の一番奥にある豪華な扉の前であった。普通の人間では開けることも出来なそうな重厚感のある扉であり、試しに触ってみても力を入れないと動かないという手ごたえはあった。


「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。今から私がお開けいたしますので。では、この扉より中に入られましたらそのまま奥へとお進みくださいませ。その奥にあるもう一つの扉の先でバス姫様はお待ちいたしておりますので」


 俺はここまで案内してくれたこの人にお礼を言うと、そのまま開けられた扉の中へと入っていった。俺が中に入ると奥にもう一つの扉が見えたのだが、それを確認したと同時に後ろの扉が大きな音を立てて閉められたのだ。扉が大きな音を立ててしまったことで少し驚いてしまったのだが、その扉を開けようと力を入れても開くことは無かった。俺の力でも能力でも開けることが出来ないというのは変な話ではあるが、これから会うバス姫がサキュバスで今は夢の世界にいるのだとしたら、納得は出来ないが理解は出来る話だと思う。

 戻ることは諦めて俺はもう一枚の扉に手を伸ばすと、その扉は俺の手が触れる前に自動で開いたのだ。この世界にも自動ドアがあるのかと思っていたのだが、俺はいつの間にか全裸になっていてどこからともなく現れたバス姫に俺のモノを咥えられていたのだった。

 俺はこのような態勢で見上げられるのが好きなのだが、バス姫は俺のモノを咥えたままゆっくりと品定めをしているようにゆっくりと味わっているようだった。十分に大きくなった俺のモノからいったん口を離すと、バス姫は眉間にしわを寄せてこれ以上は咥えられないと言った視線を送ってきたのだった。


「こんなに大きくなるなんて聞いてないんだけど。でも、これだったら気持ちよくしてもらえるのかな」


 バス姫は期待と不安が入り混じったような表情で俺のモノをじっと見ていたのだが、その時に軽く唇をなめていた舌がとてもいやらしく見えていた。俺がバス姫の頬を触ろうと手を伸ばすと、バス姫はその手を掴んで指の一本一本を丹念に舐めてくれたのだった。

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