第13話 あなたがいると、あなたといると


 年が明けて冬休みが終わり……二つ隣のクラスに転校生がやって来たって、噂になってた。

 友達に見に行こうって誘われたけど、私は転校してきたその日に出会っていた。

 美術室へと続いている渡り廊下。その窓から見える中庭の木の下で見たその人を取り巻く景色は……美術館で見る絵画のようだった。

 その日その光景が焼き付いて離れなかったから、家に帰って何度も何度も絵に起こした。

 次の日の放課後、淡い期待を胸に小さなスケッチブックと水彩セットを抱え渡り廊下を通ると……素敵な絵画はまたそこに現れてて、無我夢中で鉛筆と筆を走らせた。

 四月、三年生になった私は胸が高鳴った。

 描き続けたあの人と同じクラス。席が隣。

 緊張して中々声が出なくて、始業式が終わった放課後……渡り廊下はワックス掛けをして使えなかったから、外に出て絵を描いていた。 

 

【ねぇ、何描いてんの?】


 あの日あの瞬間、何かが切り替わる音がハッキリと聞こえた。

 いつも歩いている通学路も教室も、タコさん公園も私の部屋も……あの切り替わる音が聞こえると、見える景色も色も違って見える。

 それはまるで美術館の絵画のようで……その音が聞こえる時はいつもあの人が隣にいる。



 そんなあの人のお家でお泊り会。

 一緒のお布団で目が覚めた朝。私色だと言ってくれたスウェットを纏ったあの人は寝惚け眼。


「ふふっ。おはよう、アンナさん♪」

「……ん、おはよ」


 今日もまた、あの切り替わる音が私の中で響き渡る。

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アンナは長閑と触れ合いたい @pu8

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