第4話 長座体前屈


「じゃあ二人組を作って体操するよー。はいチャッチャと動けー」


 体育の時間、準備運動をするのに何故か二人でやらされる。

 一人で出来るし極力触れたくないから、誰も近づかせないように生徒を睨みつける。

 いつもはこれで押し通していた。

 なのに……


「アンナさん、一緒にやろ?」


 笑顔で私の元へ寄ってくる長閑さん。

 調子が狂うから、その顔はやめてもらいたい。


「私ね、身体柔らかいんだよ」


 床にペタリとつく手の平。

 股割りも見事である。


 私は身体硬いし……考え方も硬いのかな……


「じゃあペア同士で前屈やってー」


 足を伸ばして座り、互いの手を握……


「ご、ごめん長閑さん、私やっぱり──」

「はい、アンナさん私を引っ張って」


 強引に私の手を握り催促される。

 わけも分からず引っ張ると、これ以上伸びない程身体はペッタリとしている。 


「ふふっ。ちょっとだけ近づけたね」


 顔を上げて微笑むその顔が、私を狂わせる。

 そう、この顔のせいなんだから。


「今度はアンナさんの番だよ? せーのっ──」


 普段よりも遠くへ身体を伸ばせた理由なんて……考えただけで馬鹿らしいから、ぶっきらぼうに笑ってやった。

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