第2話 ふたりは友達
やってしまった。
あれだけ大切にしていた私の初めての一つが……
でも、温かくて柔らかかった感触。
それに……春色をしたあの笑顔がどうにも頭から離れない。
春休みボケが治っていないのだろうか……
「あっ、アンナさん!! アンナさんも帰り道こっちなの?」
「ののの長閑しゃん!!?」
「ふふっ、のが三つ多いよ?」
信号待ち、例の彼女はニコニコと笑いながら私の隣にやってきた。
心臓がおかしい位速く動いている。
呼応するように、右手がじんじんと疼いている。
……落ち着け。
あれはただの握手。そう、クラスメートで隣の席にいる友達の……
あれ?
「私達……友達?」
「……ふふっ、アンナさんがよければお友達になりたいな」
風に運ばれた春の匂いがするその笑顔、澄み切った瞳は一点の邪気も無い。
それは、私が見てきた人達とは何かが違った。
「……あれ、長閑さん頬に絵の具がついてるよ」
「ホント? んー……とれた?」
頬を擦るが、チークのように薄く広がってしまっただけで取れていない。
確か鞄の中に……
「私ウェットティッシュあるから……目瞑ってて」
渡して彼女にやらせればいいのに……
いや、これはただの善意だし。
ウェットティッシュ越しに感じる、彼女の頬。
まつ毛、長いんだ……
……ただの善意に、なんでこんなにドキドキしているのだろうか。
「……とれたよ」
「ふふっ。ありがとう、アンナさん」
この笑顔が私の何かを狂わせる。
べつに、嫌ではないけれど……
妙な距離感のまま、分かれ道についた。
そのままとっとと帰ればいいものの……
まぁ……一応友達だし……
「あ、あのさ……」
「……?」
「…………また明日」
「うん♪ また明日ね、アンナさん」
何度も振り返りながら手を振る彼女。
小さく手元で振ると、嬉しそうに大きく振り返した姿が眩しかった。
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