第7話 罰ゲームの代償
「ほら、ちゃんとしたぞ? デートの約束」
「よくできましたぁ」
俺をからかうように雄哉が言ってきた。
「うっせぇ」
「でもこれは一大ニュースだな! 学年一のイケメンが学年一の陰キャと付き合ってんだもんな」
三人とも俺が苦しんでいるとは露知らず、この状況をこの上なく楽しんでいる。
「絶対に広めんなよ?」
「いやぁ、広めるっしょ。面白いし?」
分かり切っていた返答にため息が漏れた。
「わかった。広めるのは許す。ただ来週にしてくれ」
「なんで? いつ言っても変んなくね?」
「そうなんだけどさ、心の準備って言うかなんて言うか……」
「わかったよ。そこは約束する」
クールな浩介が落ち着いて返す。こいつがいちばん信頼できる。
「マジ頼んだぞ? じゃあな」
「おう!」
三人と方向が別々になる道で手を振って別れて、俺は一人で家までの道を辿った。
「マジか……」
口を開けばその単語しか出て来ない。自分はロボットになってその言葉しか話せないようにプログラムされたんだろうか。心が重たくて苦しい。原因は既に特定できている。けど、ここまでひどくなるとは思っていなかった。
俺には"好きな奴"というのがいなかった。これまでの人生で一度も人を好きになった事も、気になるなと思ったこともなかった。"恋"だ"愛"だと言った言葉は、俺にとって無縁のものだった。だから今日、カノジョ(仮)が出来たとしてもテキトーに乗り切れると思っていた。
だが、いざ付き合ってみると、好きでもない奴とデートする苦痛や相手に対する罪悪感のようなものが、心にちらほら見受けられるようになった。これが"罰ゲーム"というやつなんだと改めて実感した瞬間だった。
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