柊ゆふこの怪異レポvol.13

 みなさんこんにちは!


「ある山奥の集落の片隅に入ると死ぬ不思議な穴がある」


 今回は、この噂を解明しに行ってきました!

 現地ではなんと、詳しい場所を明かさないという約束で、穴のすぐそばに住むOさん(仮名・年齢不詳)が取材を受けてくれたんです。


 Oさんはとても元気なお婆ちゃん。果樹園を経営しながら村興し事業で訪れる人々に農業指導もしています。本当に元気!

 穴は、Oさんの家の庭にある高い柵にあいています。

 でも取材の前日、突然の大雪で、穴は埋まってしまいました。一晩で五〇センチの積雪です。五〇センチですよ!! 一晩でそんなに雪が降ることはなかなかないそうです。びっくりですよね!! Oさんも驚いていました。


 そんなわけで、穴の写真はナシです。残念。代わりに雪景色と私柊ゆふこのスナップを載せておきますね。ちなみに、Oさん個人や場所が特定できる写真は掲載NGですって。なのでこの写真は実際の場所とは関係ありません。雰囲気だけお楽しみください。


 さて、穴の写真をお見せすることはできませんでしたが、Oさんにインタビューをしてきました。

(ただし、Oさん個人や場所が特定できないように一部表現を変更しています。勿論、原稿をOさんに読んでもらっていますので、私や編集部による捏造はありません!)


 ――穴が出来たのはいつ頃ですか?

 Oさん「ううん、覚えてないねえ、わしが小せえ頃からあいてたからねえ」


 ――柵にあいてるとのことですが、どんな穴ですか?

 Oさん「はて、どんなだったかねえ。そういえば庭で取った写真に写ってなかったかねえ」


 ――その写真、お借りすることはできませんか?

 Oさん「それは出来ないねえ、ここ(村)さ見せねえ約束だで」


 ――そうでしたね。じゃ、じゃあ私にだけ見せてもらえませんか

 Oさん「そらええがなあ」


 というわけで、見せてもらいました! 写真には庭に立って恥ずかしそうにこちらをみる小さな女の子が写っていました。


 ――あら可愛い。

 Oさん「そのわらなあ、わしだでよ」


 ――え、そんな前の写真なんですか。


 女の子の後ろには大人の背丈よりずっと高い柵が立っていて、一ヶ所だけ朽ちて穴になっていました。


 ――穴ってこれですか?

 Oさん「そうさね。なんべん塞いでも腐ったり崩れたりすてまたっから塞ぐの諦めただね」


 ――入ったら不思議な体験をするんですよね。どんな体験ですか?

 Oさん「わしも入ったことはないんだがな、入った者は帰ってきた者もおるし、二度と帰って来なかった者もおる。帰ってこれた者は腕やら足やらを赤くさせとった」


 ――体の一部が赤くなるなんて不思議ですね! 夏エンカの汁とかじゃないんですか? あれ、美味しいけど食べると口の中が真っ赤になっちゃうんですよね。

 Oさん「夏エンカを食べる前に牛乳さ飲むとよが。それがなあ、帰ってきた者は自分の体の色が変わっておることが分からんようさね」


 ――それは不思議ですね。

 Oさん「穴の向こうにいる時間が長くなるほどに体の赤い部分は増えるんさね。一日目は腕と足、二日目は胸と腰。それより日が経ってから戻ってきた者はいねえな」


 ――穴の向こうで、夏エンカ投げでもやってるんですかねえ?

 Oさん「いや体の赤いのは夏エンカの汁じゃねえて。あとなあ、穴をくぐって全くの別世界に行くわけじゃねえのよ」


 ――夏エンカの汁、服に着くと落ちないんですよね。別世界じゃないってどういうことですか?

 Oさん「洗った後日光さあてたら消えるさね。穴をくぐった後も、村の中を自由に歩き回れての。夏エンカの収穫でみんな長袖だからの、他の者もみんなくぐっとることに気がつかねえのよ」


 ――ええーっと。聞くのが怖いんですけど、穴をくぐったことに気が付かずに二日以上経ったらどうなるんです?

 Oさん「消えるんだわ」


 ――なにそれ怖い。

 Oさん「毎朝、仕事始めん前にうちさ集まるんだがの、何時いつになっても来ねえから貸してる部屋に行ってみたら、荷物もなんもかんもそのままにしとってな。でもどこさ探してもいねかったんだで」


 ――明らかに失踪してるじゃないですか。それはそうと、あの柵を乗り越えるのは大丈夫なんですか?

 Oさん「雪が積もっとるときはあの辺歩き回るがねえ、なんも起こらんさね


 ――あの柵、壊さないんですか?

 Oさん「取り壊そうとはしたさ。したら、なんでん事故が起こるんでね、こりゃあどうしようもないってんでほかっとるんさね」


 壊そうとしたら、事故が起こるなんて怖いですね~!

 ちなみに、下見に行ったときにスタッフさんを言いくるめて穴をくぐってもらったんですが、Oさんの話通り一日目で手足、二日目で胴体が赤くなりました!! 噂は本当だったんですね~。みなさんは、万が一この穴を見つけてもくぐっちゃだめですよ!!


 Oさんが血相変えてスタッフさんを柵の穴にくぐらせちゃったから、次の日に消えるかどうかまでは検証してません! そうそう、スタッフさんが言ってたんですけど、夜中に女性と小さな男の子の親子連れらしき二人連れが散歩していたんですって。でもその日、村には小さな子供なんていなかったそうなんですよね。


 穴をくぐると見えない者が見えるようになるんでしょうか?

 それとも私達には「見えないもの達」から「見られるように・・・・・・・」なるんでしょうか?


【END】


 編集部では柊ゆふこに検証させたい怪異現象を募集します。お寄せいただいた怪異現象は、ゆふことスタッフが全力で検証および解明いたします。

 みなさまのご連絡お待ちしています!!

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