第26話 乾杯

空はもうすでに紅色に染まっていた。


タイタニアの母親はちょうど洗濯物を取り込むところだった。


「お母さーん! タイタニア君……」


先生はタイタニアの母親を見つけてそう言いかけた。


「ちょっと先生! 俺が言うから」


そう言って、母親のもとへ着陸した。


「母ちゃん 俺2次行けることになったよ!」


満面の笑みでそう告げると、母親も同じように笑顔を返した。


「本当! よく頑張ったわね タイタニア それにガングちゃんも 今日はお祝いしないと 


そうだ! ミートパイを作ってあげるわ」


「本当! やったー」


「今日はもう勉強はいいかな じゃあ私は先に帰るとするよ」


「先生 すぐに帰ろうとするんだから あなたもよ」


「え 私も?」


「“え”じゃないわよ 当たり前でしょ」


「そうだよ先生 先生のおかげで2次行けるんだからさ」


「……づらくなるじゃん……」


(ん?)


先生の後ろにいたオリビアとロイは先生が何か口にしたのを聞いて、顔を見合わせた。


「モーガンさん 手伝ってくれる?」


「もちろんです」


「僕も手伝いますよ」


「あら ロイ君も料理できるの?」


「はい!」


「私よりもお上手ですよ」


「そうなの?!」


「さすがにそれは言い過ぎですよ」


「じゃあ何か一品任せようかしら」


向こうで先生が本を読みその隣でオリビアが驚いた表情でこっちを見ていた。


タイタニアはガングの世話をしに琉舎に出払っていた。



  † † †



一通り料理を作り終え、机に並べた。


「ロイ君って 料理できたのね」


「え 晩御飯 いつも僕が作ってるじゃん」


「うそ……」


(え 本当なの?! いつも馴れ合う気はないとか距離を置いてた私が モーガンのだと思って『美味しい 美味しい』言ってたのが恥ずかしいじゃない)


「晩御飯だけやけに素直に僕のこと間接的に褒めてくれてたのは そう言うことだったのか…… どうかした?」


「なんでもないわ 少し驚いただけよ」


(もう『美味しい』って言えないじゃない)


これ以来、オリビアが晩御飯を『美味しい』と言う回数がめっきり減った。



乾杯!


[タイタニアの大好物はミートパイ。ロイの得意料理はパスタ特にペペロンチーノ。オリビアは甘いものを好んで食べない。]


___

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