第25話 疾風勁草

楕円状のコースを先に7周回った選手から上位15人が2次予選への出場権を手に入れる。その後3次予選、決勝がある。


現在3/7周目を終えている。タイタニア26位。脱落者2名。


「タイタニア 行けー!」


(ここからだ まだ終われない 一次で救われた意味がここにある!)


4周目最初のカーブ、タイタニアは大きくアウトコースへ外れた。


それも、速度を上げながら。


タイタニアは速度に比例して手綱を強く掴んだ。


ガングは石柱に脚をつけるや否や、思いっきり蹴り飛ばした。


1つ2つ3つと、飛び石を渡るかの如く空を駆けていった。


しかし、集団の後方を飛んでいたタイタニアは思うように、順位が伸びない。


一方、リンキッドとサルバは互いに削り合い、やめ時を双方模索し始めていた。


彼らが続ける理由にはプライド以外何も無かった。


(このガキは いつまでやり合うつもりなんだ ペース配分とか考えろよ)


「おい まだやる気か?」


強がりな笑みを浮かべ、サルバはこう言った。


「え その程度っすか? じゃあこの勝負 俺様がいただきますね 老害」


「若い芽は摘んどくの基本なんだよ!」


(うざっ たいな!)



  ⁂ ⁂



「先生! 来た タイエイが1位」


「やっぱ速いな 独走じゃないか」


「2 3 4 5 リンキッド!それにサルバ!」


「タイタニアは? いつ来るの?」


「見えた! 8 9 10 11 12 13…… 19?20?」


「サルバ達の後ろは大混戦だな 彼らも攻め時をうかがっているのだろう」


タイタニアは前の周回、ラストコーナーでリンキッド、サルバ後方の集団のアウトにつけることができた。


レースはもうすでに半分を終え、5/7周目に差し掛かった。


第一コーナー、タイタニアは大きく前に出た。それはリンキッド、サルバの視界にも映り込んだ。


(ここだ ここで抜け出る あいつらがやり合ってる今がチャンス!)


「な! タイタニアー!」


リンキッドは声を荒げるよう言った。


そしてリンキッドはタイタニア向かって猛突進を仕掛けた。


その時だった。


秩序は乱れた。


リンキッド、サルバが争うことで抑えられていた後方の安寧が今、解き放たれた。


タイタニア、リンキッドが互いに竜をぶつけ合う。


巻き込みを恐れていた後方が一気に前へ前へと流れ込む。残りの周回を考えて、全員が攻め時を今この時に設定した。


サルバがリンキッドの急な奇行に呆気あっけに取られている最中さなか、アウトを選手がかすめ行く。


「おっ お前ら 抜けると思うなよ!」


全力でサルバが応戦するも、もうすでに何人かが前へ抜け出ていた。



6/7周目。


依然としてタイエイが1位通過していた。


その後を最初の勝負に勝った4人が後を追う。


そして、運良くサルバから逃れられた元後方集団の2人がさらにその後を追う。


8位以下は順位が安定せず、大混戦を極めた。



レースの成り行きを冷静に見つめる者。

声を枯らしてまで声援を送る者。

勝利をただただ祈る者。

乱れたレース展開に異を唱える者。



「い 行けー! 負けるなー!」


今まで静かにレースを見守っていたオリビアが声を上げた。


先生もロイも驚いた表情でオリビアを見た。


「なっ 何よ……」


「い いや その……」


「黙って見てられる試合じゃないでしょ……」


「う うん! タイタニア! 上げろー! 飛べー! 駆けろ!」


「行けー!」



7/7周目。


ついにラストを迎えた。7位までの顔触れは6周目と変わらない。


(リンキッドが邪魔して思うように前に出れない 


集団の前の方に位置するとはいえ 後ろは詰まってる 最後に抜け出され敗退なんてこともおかしくない 


いつスパートをかけるべきか……)


リンキッドは速度を上げた。


「俺様が 勝つ!」

「俺だ!」


タイタニアも速度を上げラストスパートをかけた。


だが、敵はリンキッドだけじゃない。


後方集団全員が抜け出させまいと加速していった。


互いにドラゴンの体をぶつけ合い、ラストコーナーを抜ける最後の直線。



  † † †



「只今から 順位発表を行います 


2次予選出場権を獲得した1位から15位の方は呼ばれ次第壇上へ 


では始めます 


1位 タイエイ・レンハット 


2位…… 3位…… 4位…… 5位…… 6位…… 7位…… 8位……


9位 サルバ・ウンブレ 


10位 リンキッド」


「リンキッドだ! タイタニアもほぼ同じところにいたんだ」


「11位 タイタニア・ランド」


「きた!」


「よかった……」


タイタニアに喜ぶ気力はもう無く、ただただこの結果に安堵していた。


「タイタニア君 ほら 行きな」


優しく背中を押した。


[ドラコニック・テンの2次予選は4つに分けて行われる。各地方の代表者が他地方の代表者と3次予選への切符をかけて争う。海越地方はジュート淼崖の代表者20人と、計35人で上位7名までの切符を争う。]


___

第25話 『疾風勁草しっぷうけいそう』を最後まで読んでくれてありがとうございますっ!


惜しくもタイタニアはリンキッドに勝つことができませんでしたが


それでも一次予選を突破することができました!


パチパチ


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ここまで読んでくださったことに感謝感激です。


これからもよろしくお願いします。




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