第12話 巨人と姫

「お前は! 留守番野郎!」

「お前は! リンキッドの取り巻きの!」


「取り巻きのじゃない 俺はタイタニアだ!」


「留守番野郎じゃない 僕はロイだ!」


「あれ お友達だったの?」


「違う!」

「違う!」


二人は先生に向かって大声で言った。


「ちょっと 五月蝿い! 静かにして!」


奥から女の子の声が聞こえてきた。


声色は甘いが、語気は辛い。


気になって僕は、タイタニア越しに奥を見ると白髪でポニーテールの彼女が座っていた。


「第一印象は最悪かな? まあいいや 


自己紹介から始めよう! 


さあ皆んな席に着いて」


そう言うと、タイタニアは振り返り席に移動した。


白髪の彼女も席に移動した。


僕と彼女の目が合った。


彼女は眼光をこちらへ放った。


(睨んだのか? 顔は整ってる……)


端正な顔立ちに少しの間見惚れてしまった。


席に着こうと家にお邪魔した。


(結構広いな あれはタイタニアのお母さん 


それにメイド?! 


メイドもいんのかよ タイタニアって金持ちだったのか?)


「まずは 改めて私から 


君たちの家庭教師を務めることになった 


マーティン・べハイムです 


気軽にマーティン先生って呼んでくれたら嬉しいな」


にこやかな表情で一人一人に目を合わせた。


「じゃあ 次はタイタン君 よろしく〜」


「タイタンじゃない 俺の名前はタイタニア タイタニア・ランドだ」


そう言い放った。


でも先生は視線をタイタニアに向けたままだ。


「なんだよ先生」


「えー 終わり? 自己紹介なんだからさもっとないの?」


「先生だって名前くらいしか言ってないだろ」


「それは先生だし じゃあさロイ君とはどういう関係?」


僕はタイタニアと目が合った。


「どうって言われても……リンキッドに連れられて一回会っただけだし」


「でも じゃあなんで そんな仲悪げなの?」


「べ 別に……まあ 道無しはこの村のもんじゃねぇし 道無しは……」


「タイタニア‼︎」


言葉を遮るように怒号が鳴り響いた。


「道無しって言うのはよしなさい!」


そう言ってタイタニアの耳を引っ張った。


「ごめん ごめん 母ちゃん もう言わないから ごめん ごめん」


タイタニアはほぼ泣いていた。


「ロイ君ごめんね ロイ君に嫉妬してるだけだから あんまり気にしないでね」


「あ はい大丈夫です」


(嫉妬?)


「道無しって何?」


彼女が口を開いた。


「道無しはドラゴンを従えてない人のこと言うんだったっけ? 


合ってるロイ君?」


タイタニアは下向いたままだ。


「あ はい そんな感じです」


「ふーん そんなのいくらでもいるじゃない」


「君は台地出身だからわからないけど ここじゃドラゴン以外の移動手段がないんだよ」


「なるほどね」


「ちょっと話がそれちゃったけど 次オリビア君 自己紹介」


「やっとね 


私の名前はオリビア・ベーカー 


先に言っとくけど私がここにいる理由は受験に勝つためだから 


馴れ合う気はない」


(かわいくないな)


「じゃあ最後 ロイ君!」


「え はい えっと 僕の名前はロイ・スチュワートです 宜しくお願いします」


(やばい 何話せばいいかわかんない 先生も「それだけ?」って顔で見てくる)


「りょ 料理がちょっとできます 以上です」


パチパチ。


先生が申し訳程度の拍手をした。


「まあ 最初はこんなとこか じゃあ勉強の続きしよっか」


[道無しはこの村特有の言葉で、差別的意味を含む。]


___

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