3.謎のニンゲンを追う
◯キャラクター(推奨4人、最大7人)
※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。
ナレーション(N)……ゴマの声。多
ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多
ルナ……♂、高い声の男の子。多
プレアデス……♂、爽やかに。少
青年……男。21歳のちょっとおっとりした大学生。セリフ4回。
ねずみの男の子トム……食いしん坊な男の子。小学5〜6年生くらい。セリフ3回。
ねずみの女の子ナナ……甘えん坊で、人間でいうと7歳くらい。セリフ1回のみ。
ねずみの女性……茶店の若い店主。セリフ1回のみ。
◯ポイント
新キャラ続々登場です\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/自由に楽しんでください。
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N「よく寝た。ボクは大あくびをして目を覚ました。ここは、ネズミの住む世界だったな。寝ぐらにしていた箱の中に、陽の光が射し込んでいる。既に昼を過ぎちまっているようだ」
プレアデス「……疲れてたんだね」
N「箱の外から、突然プレアデスの声が聞こえた」
ゴマ「うおあっ‼︎ プレアデス‼︎」
ルナ「しーーっ! 兄ちゃん静かに!」
N「プレアデスの奴め、どうやってボクらの居場所が分かったのだろうか。やっぱりニオイか」
プレアデス「よく寝られた? ごめんね、無理させて。少し休んでから出発すべきだったね……。でも今はネズミ族たちがたくさん出てきてるからチャンスだよ」
ゴマ「あ、ああ……ほんとか……?」
プレアデス「うん。よろしく頼むよ」
N「プレアデスはそう言うとまた、街の方へと走って行ってしまった。ボクらは被り物を装着し直し、服装も整えてから、箱を出た。そーーっと、抜き足差し足。ネズミに見つからないように慎重に、公園の広場に出てみた。だが、ネズミらしき姿はどこにもない。もう少し、通りのある所に行ってみるか。と、その時だった」
ルナ「兄ちゃん、兄ちゃん! いま何か動いた!」
ゴマ「何っ⁉︎」
N「いた。あれがネズミ族……。ボクらと同じくらいの背丈のネズミ2匹が、ニャンバラの奴らと同じように二足歩行で、服着て、言葉を話してやがった。
ゴマ「おい、いたぞ、ネズミたち。うまそうだな」
N「ボクは思わずヨダレを垂らしてしまった。ちょうど腹が減ってたんだ。……と、ダメだダメだ。捕って食っちゃダメだって言われてたんだ。それよりも、おい。やっぱり被り物のネズミの顔と実物じゃ、全然違うじゃねえか。あんにゃろめ」
ルナ「ダメだよ、食べちゃ」
ゴマ「わかってるってばよ。これでも責任感は強い方なんだ……うわっ!」
ルナ「あーもう物音立てちゃダメだって……」
ゴマ「気づかれてないよな……? このまま後をつけよう。ニャイフォン貸せ」
ルナ「はあー、ほんとに心配……」
N「ネズミが2匹と、
ゴマ「おい、何でニンゲンがいるんだ!」
ルナ「僕に聞かれても知らないよ。ほら、撮影しなきゃ」
ゴマ「あ、ああ、そうだな。やり方はこれでいいのか」
ルナ「たぶん」
N「ボクは、プレアデスに言われた事を思い出しながらニャイフォンを構え、緑のボタンに触れた。パシャリと音がして、〝カメラロールに保存しました〟という表示が出る。ちゃんと、撮れたみたいだ。ところが」
青年「ねえ、トム、ちょっと」
ねずみの男の子トム「どうしたんだい?」
青年「ぼくら、後をつけられてるかも……」
N「ニンゲンとネズミの声が、はっきりと聞こえた。今のシャッター音に気付いたらしく、前を歩いていたニンゲンがこっちを振り向く。気付かれたか! まずいっ! ボクはルナを引っ張り、すぐに近くに置かれていた木箱をこじ開け、中に隠れた」
ねずみの男の子トム「え? 誰に? 後ろ、誰も居ないよ?」
青年「……だって、さっき確かに声が……あれ?」
N「だんだんニンゲンとネズミどもの話し声が近付いてくる。やばいぞ。ボクはルナをしっかりホールドし、息を殺した。被り物が少し破れてきている。このまま見つかったら、お終いだ」
ねずみの男の子トム「気にしすぎだって、マサシ兄ちゃん! さ、早くお仕事終わらせちゃお! ナッちゃんも、行くよ!」
ねずみの女の子ナナ「変なのー、マサシ兄ちゃん」
青年「あ、うん……」
N「再び声が聞こえたが、その後ネズミとニンゲンは去っていったようだ。ふう、危なかったぜ。ニンゲンの名前は、マサシっていうのか」
ルナ「……もう大丈夫な……の? 苦しいよ……」
ゴマ「ああルナ、すまねえ。もう大丈夫だ。外に出るぞ」
N「再び建物の陰に隠れつつ、ボクらはマサシとやらとネズミ2匹を追う。奴らは、この先の坂道を登り切った場所にある、オレンジ色の三角屋根のこぢんまりとした建物に入ろうとしているようだ。どうやら片方のネズミの名前は〝トム〟。そしてもう片方のチビのネズミは〝ナッちゃん〟と呼ばれているらしい。そうこうしているうちに、奴らは建物の中へと入って行ってしまった」
ルナ「兄ちゃん、おなかすいた……」
ゴマ「ルナ、それはボクもだ。あの建物行って何か食わしてもらうか?」
ルナ「ダメダメ! 見つかっちゃダメなんでしょ?」
ゴマ「じゃあどうしろってんだ」
ルナ「うーん……」
N「ボクは、そっとオレンジの三角屋根の建物の、裏庭へと向かった。裏庭には工場のような建物があり、裏口が開きっぱなしで、中の様子が見える。覗いてみると、機械だけが自動的に、何かの食いモンをコンベアで運んでるのが見えた。建物の中には、誰もいなさそうだ」
ゴマ「ルナ、あの中に忍び込むぞ。あそこからいくつか食いモンをいただこう」
ルナ「ダメだって! ネズミさんに見つかったらどうするの!」
ゴマ「……お前、ここで飢え死にてえのか?」
ルナ「うう……」
ゴマ「冒険には、スリルがつきものなんだよ! 行くぞ‼︎」
N「ボクとルナはネズミの被り物を装備し直し、建物の裏口に向かってダッシュし、忍び込んだ。幸い、中には隠れられる場所が多い。そもそも、誰もいない。楽勝だ。そのままコンベアから美味そうなモンを頂いちまおう」
ゴマ「機械の音でちょっとくらい足音立ててもバレねえ。楽勝だな」
ルナ「僕やだよ、そういうの」
N「ボクは、コンベアから流れてくるパンみたいな食いモンを2つ取り、そのまま一口食ってみた」
ゴマ「これは……⁉︎ なんて美味えんだ! ほらルナ、お前も食え!」
ルナ「うわわっ、……むぐ。……あ、美味しい!」
ゴマ「こりゃ、止まらねえなあ!」
ルナ「あああ、ダメだよそんなに取っちゃ」
N「ボクとルナは夢中でがっつき、あっという間に15個くらい、平らげちまった。腹一杯になったところで、ボクらはまた裏口から抜け出し、任務に戻った」
ゴマ「さっきの奴ら、まだいるかな」
ルナ「あ、いるよ! 入り口のとこ!」
N「茂みの陰に隠れながら建物の入口の方を見ると、さっきのニンゲンの男とネズミ2匹、マサシ、トム、ナッちゃんとやらがいた。もう1匹、女のネズミも一緒に何か話している。女のネズミは、この建物の主か何かだろう」
ねずみの女性「いつもありがとね。おとうさんたちによろしくね」
青年マサシ「お茶おいしかったです。ごちそうさまでした」
ねずみの男の子トム「また来ますねー!」
N「奴ら、ちょうど出発するところらしい。ボクは隠れながら、再び撮影を始めた。パシャパシャと、ニャイフォンからシャッター音がする。消せねえのかよ、コレ」
ねずみの男の子トム「あの川沿いのカフェでケーキ食べて行こうよ」
青年マサシ「え、また食べるの?」
N「背の高い方のネズミのトムって奴、間違いなく食いしん坊だな。そして、あのマサシとやらは本当に何者なんだ。他にこの辺りに居やがるのはネズミ族ばかりで、ニンゲンの姿してるのは、アイツだけだ」
ゴマ「おい、あのマサシって奴、追いかけるぞ」
ルナ「うん、僕も気になってた」
N「後を追いつつボクは、ニャイフォンでプレアデスの野郎に連絡してみた。〝ニャイン〟とかいうメッセージアプリを開く」
ゴマ「にんげんみたいなやつがいるぞ、っと」
N「送信。すぐにプレアデスから、返事が届いた」
プレアデス『分かった。とりあえず撮影しておいてくれるかい? あ、この仕事の報酬は、マグロの缶詰最高級品だから。頑張ってね』
N「ニャイフォン、ようやく使い慣れてきた。だが目が疲れるし、字の打ち間違いをするたんびにイライラしちまう」
ゴマ「おい、ルナ。この仕事の報酬はマグロだぜ」
ルナ「マグロ‼︎」
ゴマ「ん? 待て、マグロ? 地底世界でもマグロが獲れるのか? まあいい。とりあえず、マサシとやらを見失わないよう追いかけるぞ」
ルナ「あ、兄ちゃん! あのニンゲンさんたち、川辺の建物に入って行ったよ!」
ゴマ「何っ⁉︎ 急ぐぞ!」
N「大通りに出ると、ネズミどもがうじゃうじゃと居やがった。気を抜くと見つかっちまうし、奴らも見失う……」
ゴマ「物音立てずに移動するのは得意だが、さすがにこいつは少々きついな」
ルナ「うう、見つかりませんように」
N「大通り沿いに建ち並ぶ建物の隙間に隠れながら進んでいき、ボクらは何とか川辺にある空色の屋根の建物へと辿り着いた」
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