4.ネズミたちの音楽会
◯キャラクター(推奨3〜4人)
※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。
ナレーション(N)……ゴマの声。多
ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多
ルナ……♂、高い声の男の子。多
マサシ……人間の男。21歳のちょっとおっとりした大学生。セリフ1回のみ
トム……食いしん坊なねずみの男の子。小学5〜6年生くらい。セリフ1回のみ
ナナ……甘えん坊で、人間でいうと7歳くらいのねずみの女の子。セリフ1回のみ
ねずみの音楽家……楽団のリーダー。セリフ1回のみ
◯ポイント
ゴマくん、ルナくん以外のキャラのセリフは各1回ずつです(*´ω`*)なので掛け持ち推奨です。
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N「空色の屋根の建物に着き、マサシとネズミのガキどもに追いついたボクらは、早速、撮影を再開する。奴らはテラスで、ジュースのような飲み物を飲んでやがる。ネズミどもはみんな、悩みとかなさそうで幸せそうな顔してる奴らばかりだ」
ゴマ「なんか、いいよな、ここ」
ルナ「うん。分かる。なんか言葉にできないけど、いい所だよね」
N「今度は川の向こうから、笛やラッパ、太鼓のような音と、ネズミどもの歓声が聞こえてきた」
マサシ「ねえ、あそこまで行って、近くで聴かない?」
トム「ふふ、じゃあ行こうか」
ナナ「ああ、待ってえー!」
N「トレーを片付け、マサシたちは足早に建物を出て行った」
ゴマ「ルナ、ボクらも行くぞ」
ルナ「ま、待ってよう」
N「あのマサシって奴は、ニンゲンなのか? 妖精か何かじゃねえのだろうか。それにここは、ボクらが集会してる神社の奥にある森の中だったはずだ。それなのに、ここから遠くを眺めてみても、青々とした空が広がるばかりだ。この世界は、不思議な事ばっかりだ」
ルナ「兄ちゃん、ネズミさんたちみんな楽器を吹いたり叩いたり楽しそう!」
ゴマ「ああ、楽しそうだな……。あ、マサシとやらも一緒にラッパみたいなの吹いてやがる」
ルナ「ね! 僕らも一緒にやりたいね!」
ゴマ「バカか、遊びに来たわけじゃねえんだ」
ルナ「ぶーー」
N「音楽って、種族関係なくみんな好きなんだな。気づけば、ボクらも音楽に合わせて体を揺らしていた」
ゴマ「……見てたらボクらもやってみたくなるよな、楽器とやら」
ルナ「でしょでしょー! 楽しそうだよね」
N「ボクらは公園の物置小屋に隠れながら、ネズミたちの演奏を夢中で聴いていた。演奏が終わると、ワァーという歓声と共に、観客のネズミたちが盛大に拍手をする。ボクも、ついパチパチと手を打っていた」
ねずみの音楽家「今日のステージはこれでおしまい! 皆様、今日も一日お疲れさまでした! 気をつけてお帰りくださいねー!」
ゴマ「いやあー、楽しかったな、ルナ! ハハハ」
ルナ「兄ちゃん、何うっとりしてるの! ニンゲンさんたち、どっか行っちゃうよ?」
ゴマ「な、何っ⁉︎」
N「マサシたちは既にそこにはいなかった。道路の方に目をやると、奴らはオレンジ色をした丸みのある乗り物に乗り込む所だった。まずい、見失っちまう……!」
ルナ「兄ちゃん! どうするの⁉︎」
ゴマ「ルナ! すぐ後ろのダンプトラックみたいなのに飛び移るぞ‼︎」
ルナ「ええ⁉︎ 危ないよ!」
N「考えている暇など無い。マサシたちが乗り込んだオレンジ色の乗り物のすぐ後ろを走るダンプトラックの荷台に、ボクは狙いを定めた」
ゴマ「行くぞ‼︎ 合わせろよ! いち、にの、さん‼︎」
ルナ「うわあああーー‼︎ 兄ちゃんーー‼︎」
N「ボクとルナは助走をつけ、思い切って道路に向かってジャンプした。ダンプトラックが迫る!」
ゴマ「ぐあッ! ルナ、大丈夫か!」
ルナ「うう……何とか……」
N「よし、何とか飛び乗る事が出来た」
ゴマ「まずい、被り物が……! 早く荷台に隠れろ!」
ルナ「うん!」
N「飛び乗った衝撃で、ボクの被り物はどこかに吹き飛んで行ってしまった。ルナのも、破れてしまっている。それでもボクは、見つからないように荷台から顔を出し、前を走るマサシどもの乗ったオレンジ色の車の様子を見ようとした。だが吹きつける風のせいで前がよく見えねえ」
ゴマ「クソッ……。これからどうするか……」
ルナ「死ぬかと思ったよ! ここはもう諦めようよ?」
ゴマ「バカか! 報酬はマグロだぞ! こんなとこで見失ってたまるか!」
N「ボクは再び風と戦いながら、前を覗いた。道路が分岐する。マサシたちの車は左に曲がりやがった。このトラックは……右に行きやがる!」
ゴマ「クソッタレ! ルナ、また飛び移るぞ!」
ルナ「やめろ‼︎ 無茶だよ兄ちゃん! 死にたいのか‼︎」
N「ルナが、本気で怒った」
ゴマ「クソが……」
ルナ「行き当たりばったりもいい加減にしなよ‼︎」
N「二又に分かれた道路は、それぞれ全く別の方向へと続いて行き、マサシたちの乗った車は、完全に見失ってしまった」
ゴマ「ちくしょう、見失った。どーすんだこれ」
ルナ「とりあえずトラックが止まるまでじっとしてよう」
ゴマ「そうするしかねえな」
N「ボクはとりあえず、ニャイフォンでプレアデスに連絡を入れておく事にした。ところが」
ゴマ「ん? あれ? バカな!」
N「何とニャイフォンの連絡先から、プレアデスの名前が消えていたんだ」
ゴマ「おい! 何でだ!」
ルナ「どうしたの?」
ゴマ「プレアデスと連絡が取れねえ」
ルナ「え、それ大変だよ! 合流できないと、アイミ姉ちゃんとこにも帰れない!」
N「ボクは思わず、ニャイフォンの画面をネコパンチで思い切り殴った。ピシリ……。ニャイフォンの画面に、ヒビが入る」
ゴマ「プレアデスの野郎、また騙しやがったな……。会った時はタダじゃ済まさねえ」
ルナ「あ、トラック止まったみたいだよ」
N「ここの乗り物は、ボクらの世界のニンゲンの乗り物と違って、エンジンの音がしねえんだ。ダンプトラックに乗ってたネズミが降りて行ったのを確かめたら、ボクらもそっと荷台から降りた」
ゴマ「ルナ、大丈夫か」
ルナ「うん! ……被り物、どおしよ。もうビリビリだよ」
ゴマ「その辺に捨てとけ。……それにしても、でっけえ工場だな」
N「森のような
ゴマ「この草叢を抜けるか」
ルナ「ええ、もう暗くなるよ?」
ゴマ「大丈夫だ。ボクらは暗闇でもよく見えるだろ? 見つからずに移動するなら、この草叢を抜けていくしかねえ」
ルナ「うう……お化けとか、いないよね?」
ゴマ「いる訳ねえだろ。いるとすれば、ドデカいバッタやコオロギとかぐらいだ。そんときゃ返り討ちにして食っちまえばいい。夜の森の大冒険が始まると思ったらワクワクするだろ?」
ルナ「それは兄ちゃんだけだよ……」
N「ルナを半ば無理矢理説得し、ボクらは夕闇に広がる森のような草叢に、足を踏み入れた」
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