第二部〜優しいネズミたちの世界〜

1.ネズミの国へGo!


◯キャラクター(推奨4人、最大5人)

※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。



ナレーション(N)……ゴマの声。多


ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多


ルナ……♂、高い声の男の子。多


謎の猫(プレアデス)……♂、爽やかに。多


プルート……♂、引き続き気持ち悪く。少



◯ポイント

特にポイントは無いです\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/自由に楽しんでください!



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



N「ある雪の夜の事だった。いつものようにボクは、ガレージにある段ボールの中で、毛布にくるまって寝ていたんだが、他所のネコの鳴き声で、目が覚めたんだ」



謎の猫「にぃあおおおう……ふにゃああああおおおう……」



N「ボクは無視し続けた。聞き覚えのあるようなないような、だがウチの家族の声じゃねえ。どっかの野良だろうと思い、ボクは毛布に顔を埋め続けていた」



謎の猫「うぎゃああおおおあうう……!」



N「そいつの鳴き声はどんどん近くなり、ボリュームを増していく。寝られやしねえ。ボクは毛布を払いのけ、思わず怒鳴った」



ゴマ「うるせえな‼︎ 誰だ、こんな夜中に!」


謎の猫「にゃあおう♪」



N「見ると、やっぱり他所のキジトラだった。が、どこか見覚えがある。キジトラは鳴くのを止め、何と突然言葉を喋り出した」



謎の猫「ふう、やっと見つけた。ここがゴマくんたちの家かい?」


ゴマ「……やっぱりテメエか。てっきり死んだと思ったぜ」



N「プレアデス。服着て二足歩行で歩くネコだけが暮らす地底都市〝ニャンバラ〟で出会った、ネコの青年だ。だがそいつは今は何故か、服も着ず四足歩行で、ただのキジトラのネコそのものの姿になってやがる」



ゴマ「お前、なんでその格好なんだ」


プレアデス「だって、二足歩行だと地上では他のネコに怪しまれるからね。それより、早くルナくんも起こして、連れて来て欲しい。君たちに頼んでた仕事、済ませて欲しいんだ」


ゴマ「あ? もうテメエらに付き合わされるのは懲り懲りなんだよ」


プレアデス「お願い。僕らの世界を救えるかどうかは、君たちにかかってるんだ」



N「資源が無くなって戦争状態になっちまったニャンバラのネコどもが、ネズミだけが住む理想郷に移住するとか言う話だったな。テメエらの世界を救えるかどうかだと? 大袈裟に言いやがって。だが、このまま無視しても、どうせまた毎晩来やがるんだろう。それに、数日とはいえ、世話になったんだ。全く、仕方ねえな。いっちょ、やってやるか」



ゴマ「おいルナ、起きろ」


ルナ「んーー……? 何、こんな時間に」


ゴマ「背中はもう大丈夫か?」


ルナ「もう痛みはないけど……」


ゴマ「なら……、今から行くぞ。プレアデスの奴に頼まれてた仕事、終わらせにな」


ルナ「え? ああ、プレアデス兄ちゃんいたの?」



N「プレアデスの奴は、地面に頭をくっつけている」



プレアデス「お願い! 君たちの力が必要なんだ。無理はしなくていい。でも、今は時間がないんだ。……お願い!」



N「アイミ姉ちゃんから教えてもらったよ。それ〝ごめん寝〟のポーズだ。ま、こんだけ頭下げやがったんだ」



ゴマ「……ルナ、どうだ」


ルナ「わかった。兄ちゃん、行こ」


プレアデス「ゴマくん、ルナくん! ありがとう! じゃあ、ついてきて」



N「しんしんと雪が降る夜。ボクら抜き足差し足で、出発する」



ゴマ「メルさん悪りい。謹慎中だが、ボクはまた出かける。全てが終わったら、プレアデスの奴をボコボコにしてやっていいからよ」



N「丸くなって寝ているメルさんに向かってボクは小声でそう言い、ボクらは住処のガレージを後にした。雪道に足跡をつけながら、ボクらはプレアデスの後について行く。真冬の夜の空気が、体に突き刺さる」



プレアデス「それにしても慣れないなあ、この格好」


ゴマ「そりゃそうだろうよ。プレアデス、お前は地上来るの初めてなんだよな?」


プレアデス「うん。思ってた世界と全然違った。地上にも雪が降るんだね」


ゴマ「そりゃ降るさ。地底にも雪が降るってのか?」


プレアデス「もちろん」


ゴマ「ボクらにとっちゃ、その方が驚きだぜ」



N「ボクらは、いつも集会をしてる神社のそばを通りがかった。祠の裏側に目をやると、地面には相変わらずポッカリ口を開けた大穴があった——ネコだけが住む地底世界へと続く穴が」



ゴマ「プレアデスよ、見てみろ。あの祠の後ろに、でっけえ穴があるだろ? あそこからボクらは、地底世界ニャンバラとやらに転がり落ちたんだよ」


プレアデス「……こんな所に、入り口があったんだね」


ゴマ「ルナ、今度は絶対押すなよ」


ルナ「わかってるよ! もう」


プレアデス「……どうして、こんな所に入り口が……? 中はどうなってたんだい?」



N「プレアデスに尋ねられると、ボクは寝ぼけた頭で、その時の事を思い出しながら話した」



ゴマ「必死だったからあまり覚えてねえが、多分氷で出来た長え坂道を滑って行ったんだよな。で、気付いたらニャンバラの空き地にいた。そして何でか分からねえが、二足歩行が出来るようになってたんだよ」


プレアデス「なるほど……。地上と地底を繋ぐ入り口は、誰にも分からないように隠されているはずなんだけどね。後でプルートに報告しよう。さあ、早くネズミの理想郷のあるところへ行こう。こっちの森の中だよ」



N「確かプレアデスは、ニャンバラ側の入り口も極秘事項だ——とか言ってたのを思い出した。でも何で、そんなに隠す必要があるんだろうか。寒さに耐えながら森の中を進んで行くと、森の奥の木々の隙間から、白みを帯びた光が漏れているのが見えてきた」



ルナ「……兄ちゃん、あれがもしかして?」



N「開けた場所に出るとそこには何と、ボクらの何倍ものデカさの、虹色に輝く光のドームがあった」

 


プレアデス「あの光の中に、ネズミの国があるんだ。プルート、お待たせ」



N「光のドームの前に、プルートのジジイがあぐらをかいて待ってやがった。二度と会いたくなかったんだが……生きてやがったんだな」



プルート「ヒーヒヒヒィ……。遅いですよぉ?」



N「ジジイの横に、変な形のトンネルがある。片側はボクらが余裕で入れる大きさだが、反対側に向かうほどにトンネルは小さくなっていき、もう片側はネズミ1匹がギリギリ通れるくらい大きさの穴になっている」



プレアデス「さあ、ゴマくんルナくん。この光に近づいてみて」


ゴマ「近づいても平気なのか」


プレアデス「大丈夫だよ」



N「ボクは恐る恐る、光り輝くドームに近づいてみた。目を凝らして見ると、そこには何と。ボクらより小さな建物、道路、住宅地、色々な施設、森林、煌々と灯る街明かり。どこまでも広がる、ミニチュアの街が見える」



ゴマ「す、すげえな! 本当にあったんだな、テメエらの言う理想郷とやらがよ。ここにネズミどもが沢山住んでやがるんだな! ……って、ん? 見えねえ壁があってこれ以上近づけねえ」


プレアデス「結界が張られてるんだよ。そこで、このトンネルの出番さ」



N「プレアデスは、さっきの変な形のトンネルを指差した。片方は大きな入り口、もう片方は小さな出口。……いや、くぐってる途中でつっかえるだろ」



プルート「これぇがぁ? 私の開発したぁ、〝ワームホール〟ですぅ。このトンネルは結界を通過出来るんですぅ。ほらしょっと!」



N「ジジイは〝ワームホール〟という名のトンネルの小さな出口側を、虹色に輝くドームの端にそっと突き刺した。キラキラと光が舞い、トンネルの出口側がドームの中に入り込んだ」



プルート「準備完了〜。そして、トンネルの大きい方の入り口をくぐれば、あぁら不思議ぃ。何者も入ることが出来るはずのない結界をする~りと通り抜けて、ネズミの街に入れるんですぅ」


プレアデス「そして、ネズミたちと同じサイズになるんだ。さらにニャンバラの時と同じように、二足歩行も出来るようになれる。凄いでしょ」


ゴマ「ちゃんと、元に戻れるんだろうな?」


プレアデス「大丈夫。反対側から、またこのトンネルをくぐれば、元の大きさになって、四足歩行に戻れるよ」


ゴマ「プレアデス、てめえがまずくぐってみせろ」


プレアデス「OK! よいしょっと」



N「七色に輝く結界を覗くと、トンネルの出口から、チビになったプレアデスが出てきやがった。さあ、君たちも早く、とでも言ってるのだろうか。声が全く聞こえねえ」



ゴマ「はは、面白えなこいつは。チビのプレアデス、踏み潰してやりてえ」


ルナ「ダメ兄ちゃん!」


ゴマ「じゃあ行くか。プルートのジジイ、てめえはどうすんだ」


プルート「私はぁ~、〝パルサー〟の修理をしなくてはならないぃのでえ? この近くにいますぅ。あなた達が帰還してぇ、無事ぃ録画されたデータをぅ受け取ったらぁ、そこでお別れですぅ。そしてぇ私たちはぁ、地底へ帰りますうう。フヒヒ……」


ゴマ「ふん、さっさと終わらせるぞ。……ここに住んでるネズミども、どんな奴らなんだろうな」


ルナ「早く、兄ちゃん行くよ!」



N「ボクらは、トンネルに足を踏み入れた。中は赤、緑、水色、何色もの光に満たされていて、進めば進むほど、どっちが天か地かわからなかった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る