8.地獄からの帰還


◯キャラクター(推奨4〜5人、最大10人)

※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。

※今回はキャラが多くかつ各セリフが少ないので、1人2〜3役でやることをおすすめします。



ナレーション(N)……ゴマの声。多


ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多


ルナ……♂、高い声の男の子。大泣きシーンあり。多


プレアデス……♂、緊迫シーンのため、冷静かつ早口に。少


プルート……♂、引き続き気持ち悪く狂って下さい。1回のみ


メル……♀、気の強いお姉さん。ゴマに怒るシーンあり。多


じゅじゅ……♀、ゆっくり話し、声はやや低め。1回のみ。


ユキ……♀、元気いっぱいな女の子。はきはき喋る。少


ポコ……♂、声高め。気の弱い男の子。ユキにデレデレ。少


アイミ姉ちゃん……高校三年生の猫好きな女の子。2回。



◯ポイント

各キャラの演じ分けを楽しめる回です。

ルナとメルが再会して泣き合うシーン、メルがゴマに猫パンチをかますシーンが盛り上げどころです。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



N「警報音が鳴り響く、〝パルサー〟の機内。マグマの熱で、ぐんぐんと機内の温度が上がっていく」

 

ゴマ「ふざけるな‼︎ プレアデス……! このままボクら焼け死ぬってのか!」


プレアデス「大丈夫! 僕を信じて‼︎」


プルート「ヒョロほぉおおおお⁉︎ オホホホォーー‼︎」



N「機内の温度がどんどん上がってきやがる。もはや、息も出来ねえ」



ゴマ「クッ……、ルナ、ルナ⁉︎ おいルナ‼︎」



N「ルナの反応が無い。おいルナ、死ぬなよ……?」



プレアデス「よし! 動力装置復旧。でも長くは持たない。最高速度で地上まで抜ける! その場から絶対、動かないでね‼︎」


ゴマ「プレア……、頼むぞ……」



N「ダメだ。ボクもだんだん、手足の感覚が無くなってきちまった。意識が遠のいていく」



ゴマ「ルナ……、お前だけは、絶対死なせね……え……」


プレアデス「地表まで後170km」



N「動力装置、地上まで持ってくれ……! 頼む……!」



プレアデス「後80km……50km……」



N「(しばらく間を置いて)ひんやりとした感覚に気付き、ボクは目を覚ました。すぐそばに、倒れているルナの姿があった」



ゴマ「おい、ルナ! ルナ‼︎」


ルナ「んーー……。あ、兄ちゃん……」



N「ルナは、無事だったようだ。ボクも体は何ともない。本当に、本当に良かった」



ゴマ「ルナ、背中に火傷してるじゃねえか。大丈夫か?」


ルナ「痛い……」


ゴマ「……軽い火傷だ。すぐ治るだろ。見ろよルナ。ボクら、帰ってこれたぞ」


ルナ「……ほんとだね」



N「そこには、見慣れた景色が広がっていた。緑いっぱいの森。雲が流れる青空。車の音。そして、行き交うニンゲンの姿。ボクらは、いつも集会をしているあの神社の、裏の林のそばにいたんだ」



ゴマ「ルナ、帰るぞ」



N「ボクらは、四足歩行に戻っていた。着ていた服も、ニャイフォンも、消えて無くなっている。あのブチ壊れちまった変な乗り物〝パルサー〟とやらも、周りを見たがどこにも見当たらない」



ルナ「兄ちゃん……プレアデス兄ちゃんたちは?」


ゴマ「……そのへんでくたばってるんじゃねえの? 見つかる前に、さっさと帰るぞ」


ルナ「うん、もうあんな怖いのやだよ」



N「だがプレアデスの野郎もプルートのジジイも、その姿はどこにも無かった」



ゴマ「そうだ。あの穴は……!」



N「ボクは神社の祠の後ろへ行ってみた。ボクらを地底世界へといざなった大穴は、変わらず地面にポッカリと口を開けている」



ゴマ「ルナ、もうこの穴に近づいちゃダメだ。他の奴らにも気をつけるように言っておこうぜ」


ルナ「うん……そうだね。もうこりごりだよ」



N「ボクとルナは歩き慣れた道を通り、ボクらの住処のガレージに、ようやく帰ってくる事が出来たんだ」



メル「……ゴマ⁉︎ ルナ‼︎」


ゴマ「……メルさん‼︎」


ルナ「メル姉ちゃんっ‼︎」



N「メルさん。じゅじゅさん。ユキ。ポコ。懐かしさすら感じる〝家族〟の姿に、ボクは安堵のため息をついた。ムーンさんは、相変わらず留守のようだ」



メル「無事で良かったよ……うわあああ……!」


ルナ「メル姉ちゃんー‼︎ こわかったよおお……わああああああん……!」



N「ルナは、メルさんのもとに飛び込んで行き、2匹してわんわんと泣き声を上げた。ユキとポコも、帰ってきたボクらを見て、ホッとした顔をしていた」



ゴマ「大丈夫だぜメルさん。色々あったが、ルナはこのボクがちゃんと守ったんだ……ん?」


メル「……このバカッッ‼︎」



N「バシィッ‼︎ という炸裂音。ボクは、メルさんのネコパンチ、過去最強クラスの一撃を食らってしまった」



ゴマ「ぐあああっ‼︎ 痛え‼︎」


メル「勝手に変な所行くなって、あれだけ言ったでしょ⁉︎ 何日も帰らないから、アイミ姉ちゃんも、じゅじゅもユキもポコも、みんなすっごく心配してたのよ‼︎」


ゴマ「わ、悪かったよ、さすがに今回はもう懲りた。あんな地獄みてえなところ、もう二度とは行きたくねえ」


メル「ホントに一体どこ行ってたのよ! ったく、ゴマは今日から30日間、外出禁止ね!」


ゴマ「おい待ってくれよ、何でボクだけ! ……あ、そうだメルさん! 神社の祠の後ろにある大穴には、絶対近づいちゃダメだ。間違えて落っこちたその先は……地獄だ。みんなに伝えてくれ」


メル「……その穴に落っこちたって事ね。ホントによく帰って来れたよ……。とにかく今は、大人しくしてなさいね」


ゴマ「チッ。仕方ねえな」



N「そんなわけでボクだけ、30日間謹慎処分になっちまった。世界にはとんでもなく危険な場所があり、とんでもなくヘンテコな奴が居るって事を、ボクは知ったんだ。今回は何とかなったが、次は無事で済まねえかも知れねえ。しょげながら昼飯を食ってると、ボクは異様な光景を目にした」



ユキ「ゴマ! 本当に無事で良かったわよ」


ポコ「ルナー! 背中のやけど、大丈夫かい?」



N「ユキとポコが、心配そうに話しかけてきたのだが……。何と互いに、尻尾を繋いでいるじゃねえか。何だ、どういう事だ」

 


メル「この子たちねー、付き合ってるのよ」


ゴマ「なんだって⁉︎ いつの間に……!」


 

N「ユキは照れているのか、急に右手でクシクシと顔を洗い始めた。そんなユキをポコはじーっと見つめている。尻尾はお互い、しっかりと繋いだまま。ポコの奴、ボクらが目の前にいるというのに、ユキに体を擦り付けてやがる。ポコはデレ全開のようだ」



ポコ「ユキ、大好きっ♡」


ユキ「あ、ちょっと! 場所考えてポコ!」



N「あー、ダメだ、チューしやがった。お邪魔なボクは、さっさとこの場から消える事にしよう……」



アイミ姉ちゃん「……あ、ゴマ、ルナ。今までどこ行ってたのー。おいでー」



N「久しぶりにアイミ姉ちゃんと会えて、ボクは思わず飛びついてしまった」



ゴマ「ニャオーンー。ミャウ」


アイミ姉ちゃん「ふふ、よしよしー。なんか一回り大きくなったね、ゴマ」


ゴマ「ミャオウン」



N「ふん。そりゃそうだ。ボクはルナを守れるくらい、デッカくなって帰ってきたんだぜ。体格の事じゃなく、一丁前のネコとしてな」



じゅじゅ「ふわあ~あーーあーーーーあ。ふあ。あああ」



N「じゅじゅさんは、フカフカの毛布の上で大あくびをする。全く、相変わらずだ。心なしか、また太った気がするんだが」



ユキ「ねえゴマ。公園行かないの?」


ゴマ「ユキ、すまねえな。ボクはメルさんから謹慎処分食らってんだよ。ポコと一緒に仲良く行ってこい。寒みいから風邪ひくんじゃねえぞ」


ユキ「えへへ。じゃあ今日もデートしてくるね」


ポコ「してくるねえー!」



N「仲良く風邪ひいちまえ、チキショー」



ゴマ「ルナ、てめえはどうすんだ」


ルナ「まだ背中痛いからやめとく。……ねえ、兄ちゃん」


ゴマ「何だよ」


ルナ「今日からまた、いつもの通りの毎日に戻るんだね」


ゴマ「……ああ。そうだな」



N「いつも通りの毎日。結局、ボクにはそんな普通の毎日ってのが、1番充実してるのかもしれねえ。ボクは冒険が大好きだ。見知らぬ場所に行き、見知らぬ奴らと出会う時ってのは、充実したひと時だ。だが、あのニャンバラとかいう地獄には、もう二度と行きたくはねえ。命の危険を冒してまで冒険するなんて、さすがにゴメンだ。そう思えば、この何の変わりもない平和な毎日も、悪かねえ。みんな元気だし、うまい飯食えるし。今日も、天気いいし。謹慎処分が終わったら、またルナと一緒に、いつもの公園に出かけよう。ボクの冒険は、まだまだ続くんだ」



(第一部・完)

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