7.ゴマ、ルナ、絶体絶命


◯キャラクター(推奨4人、最大5人)

※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。



ナレーション(N)……ゴマの声。多


ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。後半の緊迫シーンは早口で。多


ルナ……♂、高い声の男の子。泣き叫ぶシーンあり。多


プレアデス……♂、声高めのお兄ちゃん。爽やかにいい人っぽく。後半の緊迫シーンはは早口だが冷静。多


プルート……♂、爺さん。とにかくキモく、イカレて、狂って。アドリブ呪文、狂って訳の分からない言葉を発する場面あり。多


警報アナウンス……1回のみ。



◯ポイント

後半、全員が命の危険に晒されるので、早口で緊張感、カオス感を出せれば良いです。プルートはとにかくぶっ壊れて下さい\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/



——————————————————



N「疲れ切ったボクは、プルートのジジイの研究所の広い部屋のソファで、グッスリと眠りこけちまったんだ」



プレアデス「……マくん! ゴマくん! 」


ゴマ「……んああ、誰だ起こしやがるのは」


プレアデス「ゴマくん! ああ、やっと起きた……。もう出発準備出来てるから。早く支度して」


ルナ「まったく兄ちゃんったら、ここに来てまで寝坊して」


「うるせえな……。いつもはテメエの方が起きるの遅えくせに」



N「そうだ、これから地上に帰るんだった。この部屋のクッションがあまりにもフカフカで、地上に帰る事なんか忘れるくらい、爆睡しちまっていた。ふと窓の外を見たんだが、何と、外はまだ真っ暗だったんだ」



ゴマ「おいプレアデス! まだ夜は明けてじゃねえじゃねえか! どんだけ長えんだ、この世界の夜はよ!」


プレアデス「おかしいな……。時間的にはとっくに夜明けは過ぎてるのに、まだセントラル・サンが輝き始めない」


ゴマ「……今までにも、そんな事はあったのか?」


プレアデス「いや、こんな事生まれて初めてなんだ。何だか嫌な予感がする……」


ゴマ「ふん、大袈裟おおげさに言いやがって」


プレアデス「とにかく、支度済んだら知らせてね。僕ら、プルートのマシンのところにいるから」



N「もうこんな訳のわからねえ世界は、こりごりだ。ボクはさっさと魚の缶詰食って、毛づくろいを済ませ、建物の外に出た。目の前には、銀一色に塗装された楕円形の乗り物があった」



プルート「みなさん~? お揃いですかぁ~?」


プレアデス「うん。プルート、マシンの調子は大丈夫?」


プルート「はぁい、バッチグ~ですよぉ?」



N「このマシンに乗って、地上に行くようだ。しかし、一体どんなふうに地上へ行くのかが、全く想像出来ない」

 


プルート「昨日説明した通りぃ、私が一度地上へ行った時に使ったマシン、〝パルサー〟で、皆さんを地上へ送り届けますぅ。私とプレアデスしか知らなぁい隠された地上への道……イーッヒッヒッヒぃ……」


ゴマ「……操縦もこのジジイがするのか?」


プレアデス「うん、そうだよ」


ゴマ「……大丈夫なのか?」


プレアデス「大丈夫。ああ見えて、事故を起こした事は一度もないんだよ」



N「不安が拭えねえまま、ボクらは、〝パルサー〟に乗り込んだ。中は、中は、シートに座れば身動きが一切出来ねえほどの狭さだった」



ゴマ「ジジイが乗り物を運転してる間、ずっとベルトでぐるぐる巻きにされるのか……。なるべく早く終わってくれよ」


ルナ「息が苦しい……」


プレアデス「ルナくん、巻き過ぎ巻き過ぎ。……これくらいでいいから」



N「全員が安全ベルトとやらを装着すると、ウィーンと音を立てて、扉が閉まっていく」



プルート「さぁ~て皆さぁん? いまから〝パルサー〟はぁ、この茂みの奥にある秘密の入り口からぁ? 地上へ向かいますぅ。入り口からはぁ、まぁーっすぐ下方向へ穴が続いてるのでぇー、ひたすら〝パルサー〟は空中を飛び続けますぅ。気分がぁ? 悪くなったらぁ、知らぁせてくださいねぇ」



N「ボクは、テメエの存在のせいで気分が悪りいと言いかけたが、やめておいた」



プルート「重力の中心は地殻のど真ん中にありますう。なので、中間地点で、天と地が反転いたしますぅ。脳天をかき回される感覚になるので、気をつけてくださいねぇ~?」


ゴマ「おいルナ、大丈夫か?」


ルナ「……頑張る」



N「プルートのジジイはマシンのエンジンをスタートさせ、右腕を上げた。腕がプルプルと震えている」



プルート「それではぁ~、あ、出発~?」


 

N「ボクらが搭乗した〝パルサー〟は、音もなく宙に浮かび始めた。〝パルサー〟のヘッドライトで照らされた窓の外を眺めていると、プルートのジジイが突然、呪文のような言葉を唱え始めた」



プルート「アンダミン、チョビンチョビン、スルピーポダポ、ピーンララゲボ、ボハーヤー……(アドリブ可)」



N「すると、蔓で覆われた茂みが蛇のように勝手にモゾモゾと動いて、何とそこに大洞穴が現れたんだ。〝パルサー〟は、大洞穴の上へと飛んで行く。そして少しずつ高度を下げ、穴の中へと入って行った」



ゴマ「うおお、何だかすげえな。どうなってるんだ」


ルナ「動いちゃダメだよ、兄ちゃん」



N「〝パルサー〟は完全に穴の中に入り、窓を見るとまた茂みが動いて、穴を塞いでいく様子が見えた。すぐに窓の外は、真っ暗闇になってしまった」



プルート「ワタシが地上に行った日の事ですぅ〜。森の中にぃ? 煌々こうこうと輝く草叢があるのを見ぃつけたあのでぇす。覗いてみるとぉ、なぁ~んと。知性を持っているであろうネズミたちがぁ、大きな街を作って楽しそうに暮らしてるではあぁ~りませんかぁ?」



N「プルートのジジイが語り始めた。……操縦に集中しろよ、命懸けの旅なんだからよ」



プルート「そこで〜ワタシは考えたのですぅ〜。ニャンバリアンをそこに移住させられればぁー? 全ての問題は解決するのだぁぁあと! イーヒッヒィ〜!」


ゴマ「ジジイうるせえぞ」


プレアデス「シッ。話を遮ると機嫌損ねるから、そっとしといてあげて」


ゴマ「チッ。全く、面倒臭え奴ジジイだ……」


プルート「あのネズミの街なら、平和だし資源もたくさぁん? あるしぃ〜。移住するには最適だと思ったのでぇえす。場所もぅ特定しましたぁ。しっかぁし、大きさぁが我々ネコと違う事とぉ、何重にも張られたぁ結界がある事が問題なのですぅ。そこでぇ、なななぁんと? 結界を通過できるトンネルを開発しましたぁ! 地上に着いたらぁ、試してみましょうねぇ~。グッフフフフフフぅ~」



N「ジジイがそう言って笑った瞬間。ズドン‼︎ という衝撃音と揺れが〝パルサー〟を襲った」



ゴマ「ぐあっ⁉︎ おい! 大丈夫なのかよ⁉︎」


ルナ「うわあ! 兄ちゃんー!」


プレアデス「大丈夫かい? ゴマくん、ルナくん、しっかりつかまってて!」



N「しばらく揺れが続き、だんだんと収まってきた。頭ん中かき回されてるみたいで、吐き気がする」



ゴマ「ったく、おい! ジジイ、どうなってんだよ」


プルート「あれ~? おかしいですねぇ。穴がずっと続いてるはずなのにぃ? 途中で地面にぶつかってしまったみたいですぅう」


ゴマ「あ? じゃあどうすんだよ。ちゃんと地上に帰れんのか、ほんとに」


プルート「仕方ないですぅ、ここからは、地面を掘りながら地上へ向かいましょう~。揺れますから、我慢してくださいぬぇ?」



N「絶え間なく揺れが続く。多分、ドリルか何かで地面を掘ってるのだろう。うおえ、吐きそうだ。耐えられるだろうか」



プルート「窓を完全に閉めますぅ~。おそらく、ここから先はマグマ地帯の近くを通ることになりますぅ。〝パルサー〟はぁ高温にも耐えられますのでぇ、安心してくださいねぇ」


プレアデス「しばらく揺れるから、しっかりベルト締めて、手すりにつかまっててね」



N「吐き気と不安と息苦しさで、どうにかしちまいそうだった。ルナも辛そうな顔で、手すりにしがみついている」



ルナ「うう……。プレアデス兄ちゃん、いまはどのへんなの?」


プレアデス「ルナくん、大丈夫かい? 今はちょうど重力の真ん中を抜けた所だよ。だから、あと半分くらいだね」


ゴマ「おい、まだ半分かよ! クソ、酔ってきたぜ……。1度めて休まねえか?」


プレアデス「まだマグマ地帯のそばだから、もう少し低温のエリアに行くまで辛抱して」



N「ボクは歯を食いしばって、揺れに耐えていた。と、その時! ガコン‼︎ という何かが破裂したような音がした。今までに無いほどの揺れが、ボクらを襲う」



ゴマ「ぐわぁあああ‼︎ おい、何だ今のは」


プルート「急停止ぃ⁉︎ そんなぁバカなぁ?」


プレアデス「ゴマくん、ルナくん! 落ち着いてね! 大丈夫だから!」



N「どう考えても、大丈夫じゃねえ。機内に虫の鳴くような音が聞こえる。操縦席のランプが、不規則にいたり消えたりを繰り返している。プレアデスもプルートのジジイも、顔を真っ青にしていた」



プルート「マグマ地帯にぃ? 進入してしまったようですねぇ? んんん? 動力が一時的に停止……そんなバカなぁ?」


ゴマ「おい⁉︎」



N「また、爆発音。同時に衝撃と振動が〝パルサー〟を襲う」



ゴマ「ぐわあああ‼︎」


プレアデス「しっかり! 手すりにつかまれ‼︎」



N「ビー! ビー! と耳を裂くようなサイレンが、機内に鳴り響く」



アナウンス「緊急事態発生。緊急事態発生。直ちに避難準備を」



N「赤色のランプが点灯し、機内が真っ赤に染まる。おいコラ、テメエら! なんとかしろ‼︎ こんなとこで死ぬのは嫌だぞ‼︎」



ゴマ「ぐああああーー‼︎」


ルナ「うわあああ! 兄ちゃん‼︎」



N「もう上も下も分からねえ。機内の温度がどんどん上がっていく。目が霞んで何も見えねえ。地響きの音しか聞こえねえ!」



ゴマ「クソ、熱ちい‼︎」


ルナ「うわあああああん、やだようー! 助けて、兄ちゃん‼︎」


プルート「温度制御装置がぁ故障。動力はぁ? 依然停止中……。こ、このままだと‼︎ マグマの熱で〝パルサー〟はぁ? 私のぉ? 〝パルサー〟があぁあ⁉︎ 私のぉ? 大切な〝パルサー〟がぁ‼︎ ウ……! ウヒヒョヒョヒョヒョヒョロヒョロホロロォオオ(アドリブ可)‼︎」


プレアデス「プルート! 落ち着くんだ! 操縦、僕が代わる!」



N「イカれたクソジジイの泣き声と、警報音が入り混じる、地獄のような空間。ボクらは果たして、生きて帰れるのだろうか」

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