4.大戦最中の大地底国


◯キャラクター(推奨3人、最大4人)

※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。



ナレーション(N)……ゴマの声。多


ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多


ルナ……♂、高い声の男の子。多


プレアデス……♂、声高めのお兄ちゃん。爽やかにいい人っぽく。多


警報アナウンス……1回のみ。AI音声。



◯ポイント

前半はのんびりとプレアデスくんがゴマくんたちに、地底世界のことを説明。後半は打って変わって、ゴマくんたちのいる建物が爆撃を受けるので、緊迫した雰囲気で。



——————————————————



プレアデス「おーい。おはよう。おーい!」



N「誰かに体を揺すられ、ボクは目を覚ました。知らぬ間に、ぐっすりと眠っちまったらしい。体を揺すっていたのは、プレアデスだった」



ゴマ「あ、おうお前か、プレアデス……もう朝か?」


プレアデス「おはよう、ゴマくん。魚の缶詰買ってきたよ。みんなで食べよう」


ゴマ「おっ、また美味そうなものを。おい、ルナ起きろー!」


ルナ「んんー……ふぁーあ……、あ、おいしそうなにおい!」



N「プレアデスは魚の缶詰をプシュッと開けると、匂いが一瞬で部屋中に立ち込め、ボクの意思とは関係なくヨダレが口の中に溢れ出てきた。たまらずボクは飛び起き、そのまま缶詰にがっついた」



プレアデス「ちょっとー、どんな食べ方だよ。これ使ってよ」


ゴマ「あん? 何だその棒は」


プレアデス「お箸だよ。食べる時は行儀良く、ね」



N「箸だと……? まさかニンゲンと同じように、箸で食えというのか。だがボクとルナは当然ながら箸なんか上手く扱える筈もなく、その辺を魚汁だらけにしながらむさぼり食った」



プレアデス「もう一度聞くけど、ゴマくん、ルナくん……、君たちはほんとに地上世界から来たのかい?」


ゴマ「ああ、何度も言ってるだろ。逆にボクらにとっちゃ、地の底にこんな世界がある方が驚きだよ。なあルナ」


ルナ「うん……」


プレアデス「……そっか、わかった。じゃあ、君たちにこの世界のことを簡単に説明するね。あ、お皿は洗っとくから置いといて」



N「プレアデスは、持っているカバンから紙を取り出し、バサっと机の上に広げた。その紙に、青のマーカーペンのような物で、円を描いた」



プレアデス「これが僕たちの住む星、ガイアさ」


ゴマ「ガイア? なんだそりゃ」


プレアデス「僕たちが住む星の事さ。ちょっと描き足すから、よく見てて」



N「ガイアとは要するに、ボクらの住むチキューの事だ。ボクらがチキューという星に住んでるって事は、少し前にムーンさんから教えてもらった事がある」



ゴマ「一体お前は何を描いてるんだ」


プレアデス「ふう、描けた。これは、ガイアの断面図だよ」



N「円の内側にくっついて立つように、3匹のネコの絵が描かれている」



プレアデス「このように、ガイアの重力の中心は、地殻にあるんだ。つまり僕たちは今、地上の裏側に重力でくっついてるってこと」


ゴマ「……どういう事だ?」



N「プレアデスは頷きながら、今度は青の円の中心に、黄色のマーカーで小さく円を描いた」



プレアデス「この黄色い丸が、地底世界を照らす〝セントラル・サン〟。ガイアの中は空洞になっていて、その中心に、〝セントラル・サン〟が浮かんでいるんだ。つまり、この地底世界では空の上がガイアの中心で、この地面が、ガイアの表皮の裏側で……」


ゴマ「おい、待て待て。訳が分からねえよ」



N「ボクは、頭が追いつかなかった。チキューの中に、もう一つのお日様があるって事か?」



プレアデス「要するに、ここの世界の地面を真っ直ぐ掘って行くと、地上に出るってこと。わかる?」


ゴマ「わからねえ。あはは。ルナ、コイツ頭おかしいぜ」


ルナ「……つまりここは地球の内側の端っこで、地球の内側のど真ん中に、2つ目のお日様が浮かんでるんでしょ?」


プレアデス「その通りだよ、ルナくん!」


ルナ「つまり僕らは今、地上世界の真裏にいるんだよ。だからこの世界ではお空の上が、地球の真ん中。そこに2つ目のお日様があるって事じゃない?」


プレアデス「そうそう、そういう事!」


ゴマ「……ルナお前、頭いいな」



N「ルナの説明で、ようやく飲み込む事が出来た。ボクらが住むチキューの中は、実は空洞になってたんだ。そして地面の真裏に、ネコだけが住む世界が広がっていた……という訳だ。続いてプレアデスは、地底のネコの国の今の状況について説明を始めた」



プレアデス「ここニャンバラは、地底国ニャガルタの首都。ネコ族の国さ。とても繁栄した国だったんだけど、植物がどんどん伐採されたり食糧になる生き物が乱獲されたりして、環境が破壊されてしまった。僕らが生きていくための資源も無くなりつつあって、今では国同士で資源の奪い合いのための戦争が起きてる。僕らはいつ、地底に暮らせなくなるか分からないんだ……」


ゴマ「センソウだと……? なるほど、どうりでどこもかしこも重苦しい雰囲気なわけだ。あちこち煙が上がってたり壊れた建物があったりするのは、他の国の奴らがやりやがったって訳か」


プレアデス「そういう事なんだ。だけどね、ここだけの話……」


ゴマ「ん?」


プレアデス「地上のどこかに、〝ネズミが住む〟があるという噂があるんだ。実際に地上に行って、そのネズミの理想郷を見たという研究者がいて、それで噂になってるんだけど……。まだそれが本当かどうかはわからない。そこで、君たちに聞くけど……」



N「プレアデスの奴も、あのチビ警官のシリウスと同じような事を言い出しやがった。ネズミだけが住むデンセツの理想郷? そんなもん、あるわけねえ。だがまあ、とりあえず最後まで話くらいは聞いてやろうって事で、ボクは黙ってそのままヤツの話に耳を傾けた」



プレアデス「君たちは、そのネズミだけが住む世界を見た事はないかい? もしその世界があるというのが本当なら、僕たちニャンバリアンは、そこに移住できないだろうか、と思ってね」



N「ボクは色々と、ツッコミたかった。まず、そのネズミの国とやらがあったとして、ボクらは本能でネズミを食っちまうだろ。それにそもそも、ネコとネズミはサイズが違う。ネズミサイズの街が仮にあったとしても、ネコがそこで一緒に暮らすなんて、無理があるだろう。そのくらい、バカのボクでも分かるぜ。何だよ、最後まで話を聞いてやろうと思ったのに。ふざけた冗談言いやがって」



ゴマ「……おい、いい加減にしろよ。そんな嘘くせえ話あるわけねえよ。それよりボクらを早く地上に帰せ」


ルナ「兄ちゃん、早く帰りたい」



N「ったく、真剣に聞いてて損したぜ。それよりもさっきから外で時々、爆発のような音と地響きが聞こえてくるのが気になった。そのたびに、カタカタと部屋の食器が音を立てる。一体何が起きているのだろうか。」



プレアデス「……また戦いが起きてるみたいだ。この街も危ないかも知れない。いざという時は、僕について来て。絶対、はぐれないでね」


ゴマ「チッ……。一体何なんだよこの世界はよ……。おいプレアデス。ボクたちはいつ地上へ帰れるんだよ」


ルナ「怖いよ、兄ちゃん……」


プレアデス「ああ、今からその話をする。君たちを地上に帰す代わりに……」



N「その時だった。全員のニャイフォンから、ビー! ビー! という音が鳴り響く」



アナウンス『空爆特別警報です! 速やかに避難を!』


プレアデス「いけない! 伏せて‼︎」


ゴマ「なに⁉︎」



N「突然、爆発音と共に、地面が揺れる。その一瞬、何が起こったのかボクは全く分からなかった。」



ルナ「うわあ‼︎ 兄ちゃん‼︎」


ゴマ「クソッ! 大丈夫か⁉︎ ルナ!」


プレアデス「まずいな……、ニャルザルの軍隊がこの街にも来たみたいだ! 早く部屋を出よう! 地下室に行くんだ!」



N「待て待て、何が起きてるんだ! ボクらは訳が分からねえまま、プレアデスに手を引っ張られ、部屋を飛び出した。部屋の外は、既に火の海だった。焼け落ちる柱が行く手を塞いでくる。ボクらは炎をよけながら足早に、地下へと続く階段を降りて行った」



ゴマ「何だってんだよ! おいルナ、手え離すなよ!」


ルナ「うわーん! 兄ちゃーん‼︎」


プレアデス「くそっ、建物に爆弾が直撃したみたいだ」


ゴマ「何だって⁉︎」



N「アパートの入り口から一瞬、外の景色が見えた。爆撃のせいで、この一帯は炎と黒煙に包まれていたんだ」


N「ボクらは何とか、地下室に逃げ込む事が出来た。

 しばらくすると、天井の方でゴゴゴゴという音がすると同時に部屋全体が揺れ、天井のタイルがひび割れ、小さな石や砂が落ちてきた。恐らく、さっきまでボクらがいたボロアパートが、崩れ落ちたんだろう。地下室に逃げてなかったら、ボクらは間違いなく死んでた。それからはボクらは外に出る事も出来ず、ジメジメした地下室で過ごす事になっちまったんだ」

 

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