2.大地底都市〝ニャンバラ〟


◯キャラクター(推奨4人、最大5人)

※多、少はセリフの量です。2役以上で割り振る場合、目安にしてください。



ナレーション(N)……ゴマの声。多


ゴマ……♂、ちょっとガラガラ声。多


ルナ……♂、高い声の男の子。多


警官猫……♂、声は低め。苛々している感じ。多


道行く♀猫……1回のみ。悲鳴。



◯ポイント

穴に落下したゴマくんルナくん。緊迫した雰囲気です。

その後は、警官との問答で、互いに話が通じ合わない雰囲気のシーンです(・ω・`)



——————————————————



N「神社の祠の後ろの地面に、ぽっかりと空いた大穴。ボクはちょっと覗いてみたくなり、体を乗り出して穴に顔を突っ込んでみた。ところが」



メル「こーらー‼︎」


ゴマ「あ! やべ‼︎ メルさん‼︎」


メル「ちょっと目を離したらこんなとこに! アイミ姉ちゃんが心配するだろうが! まっすぐ帰りなさい!」



N「その時メルさんは、本気で怒ってたんだ。ボクとルナは猛ダッシュで、ボクらの住処へと逃げ帰った」



メル「……はぁ、はぁ、全く。ゴマ! 勝手な行動はするなと言っただろうが!」


ゴマ「何でボクだけ怒られてんだよ」



N「住処のガレージに着くなり、メルさんのお説教だ。まあ、いつものことだから慣れっこだった。ルナの奴はいい子ぶって、寝る支度してやがった」



メル「今夜も母さんは帰らないみたいだから、私が夜の番をしてるからね。みんなはちゃんと寝るのよ」


全「はぁーい」



N「キョーダイみんなはメルさんの言う事に従って、すぐに寝入ってしまった。だがボクはムーンさんが言ってた事、そして謎の大穴の事が気になってしまい、結局一睡も出来なかったんだ。そして、翌朝」



ゴマ「おいルナ、メルさんが二度寝してるうちに昨日の穴のとこ、行くぞ」


ルナ「1匹で行けよー」


ゴマ「いいから来いって」


ルナ「全く、仕方ないなあ、もう……」



N「半ば無理矢理ルナを連れて、昨日集会をした場所に来てみた。やっぱり神社の奥にある祠の後ろの地面には、穴が空いていた。お日様が出てるから目立って見えるが、中はやはり真っ暗だった」



ゴマ「ほら見ろよ。前こんな穴無かったろ。ルナ、今度こそ覗くぞ」



N「ボクはルナと一緒に、大穴の中を覗き込んでみた。ところが」



ルナ「ほんとだ。中はどうなってるんだろうね、よいしょ……っと」


ゴマ「おい、ルナ! そんなに身を乗り出すと危ねえぞ!」


ルナ「え? え、うわああー‼︎」



N「何とルナは、バランスを崩し、そのまま穴の中にゴロンと転がり落ちてしまったんだ」



ルナ「うわー! たすけてー‼︎」


ゴマ「ルナ、ボクにつかまれ!」


ルナ「兄ちゃん……ああ、ダメだ!」


ゴマ「クソッタレ! うわああーー‼︎」



N「ボクはとっさにルナの手を掴んだが、ボクも一緒になって真っ逆さまに、真っ暗な穴の中に落ちてしまった」



ルナ「うわあああーーーー! 兄ちゃーーん‼︎」


ゴマ「ルナー! 手ェ離すんじゃねえぞ‼︎」



N「穴の中は、真っ暗闇でよく見えなかったが、ひたすら下り坂になっていたんだ。尻がヒンヤリとした感覚になる。地の底へと続く下り坂は、氷で出来ているようだった」



ルナ「怖いよ、兄ちゃん!」


ゴマ「ルナがんばれ! ……おいルナ! 出口みたいだぞ!」


ルナ「ふあー‼︎ どこに出るんだよー⁉︎」



N「考える暇もなく、そのままボクらは光の中へと突っ込んでいった」


 

ゴマ「……おい! ルナ! 大丈夫かルナ‼︎」


ルナ「……んん……、兄ちゃん、ここは……?」



N「ゴツゴツした土の感覚があった。一体どこなんだ、ここは。ボクは周りを見渡してみた。見た事のない形の建物がたくさん建っている。ヘビのような模様の植物が生い茂っている。空の色全体が少しオレンジがかっていて、気のせいか、お日様が少しデカく見えた」



ゴマ「おい、ルナ! ここどこだ?」


ルナ「んあ……知らないよ、僕に聞かれても」


ゴマ「とりあえず、そのへんブラブラしてみっか?」


ルナ「そうしよっか……あれ?」


ゴマ「ん……? な、なんだこれ⁉︎」



N「ボクは起き上がった瞬間、自分の感覚を疑った。ニンゲンと同じように、二本足で立てる。真っ直ぐ立てる。そして、そのまま歩ける。ボクもルナも、完全な二足歩行が出来るようになっていたんだ」



ルナ「うわ! どうなってるのこれ⁉︎」


ゴマ「はっは! すげえ! このまま散歩するぞ!」


ルナ「なんだか変な感じー!」



N「ボクらはそのまま二足歩行で、近くの歩道を歩いてみた。道を歩いてるのは、みんなネコばかりだった。そしてみんな、二足歩行だ。服まで着ている。いや、ニンゲンかよお前ら。ネコはネコらしくしてろよ。ボクは心の中で、そうツッコんだ。——と、その時」



♀猫「いやー! 変態‼︎ 通報してー!」



N「道を歩いていたネコの女が、ボクらを指差して叫んだ。近くにいたネコたちが、目を隠して一目散に逃げて行く」



警官猫「こら君たち。今すぐこっちに来なさい」



N「今度は突然、背後から黒一色の服を着たネコが現れ、ボクらの腕を掴んでそう言った」

 


ゴマ「おいこら、やめろ! 何すんだ」


警官猫「抵抗するんじゃない。早くこっちに来て車に乗りなさい」



N「何がどうなってんのか全く分かんないまま、ボクらは無理矢理に黒服のネコに連行され、カマボコのような形の4つ車輪のある乗り物に乗せられてしまった」



警官猫「早くこれを着なさい。全く、何のつもりだ、2匹とも素っ裸で外を出歩いて」


ゴマ「……は?」



N「乗り物の中で、ボクらは黒服のネコにシャツとパンツ、ズボンを渡された」



警官猫「何をやっている。早く着なさい」


ゴマ「おいやめろ! 触るな‼︎」



N「黒服のネコに体を押さえつけられ、ボクらは洋服を無理矢理着せられてしまった」



ゴマ「クソ、変な感じだ。お、ルナ、似合うぞ。ははは」


ルナ「そ、そう……? 慣れないなあ……」


警官猫「君たち、住所と名前は?」


ゴマ「なんだジュウショって。名前はゴマだ」


ルナ「ルナです」


警官猫「……年齢は?」


ゴマ「知らねえ。数えたことなんかねえもん」


ルナ「ぼくも」


警官猫「……君たちはまだ子供だな。お父さんお母さんは」


ゴマ「子供じゃねぇーよ。母ちゃんは知らねえ。たぶん、ムーンさんじゃね? チビの時の事なんかよく覚えてねえ」


ルナ「僕もそのへんはよく知らないんです。だからムーンさんが母親代わりなんですよ」


警官猫「ムーン……? この街のネコではなさそうだ。君たち、どこから来た?」



N「そんな事ボクらに聞いてどうすんだよ、気持ち悪りいな。……そう思いながらも、ボクは答え続けた」



ゴマ「どこって、ニンゲンのアイミ姉ちゃん家のガレージだ。近くの神社にあるデッケエ穴覗いたら、転がり落ちて、これまたデッケエ氷の滑り台滑って、気付いたらあそこにいたんだよな? ルナ、お前のせいでな」


ルナ「僕、思い出したくもない」


警官猫「〝ニンゲン〟だと? ……まさかな。とりあえず署まで同行してもらう。まったく近頃おかしな事が多いな」



N「黒服の意図が何なのか全くつかめねえまま、ボクらはそのままどこかへ連れて行かれてしまったんだ。外を見ると、あちらこちらに服を着て歩いているネコがいた。いや、ネコいなかった。そして建物や乗り物、全てがネコサイズだ。街を見ていると、所々、完全にブッ壊され瓦礫と化した建物があり、あちこちで煙が上がっている。そうこうしてるうちにボクらは、銀色に光る塔のような建物のある場所に着いた」



ゴマ「おい、オッさん。ここはどういう所なんだ」


警官猫「ここは警察署だ」


ゴマ「じゃなくて、どういう世界なんだって聞いてんだよ。ネコが二本足で歩いてる世界なんて、ボク見たこともねえよ」


警官猫「何を言っている。君たちも〝ニャンバラ〟の民ではないのか?」



N「〝ニャンバラ〟。聞いた事もない言葉だった」



ゴマ「〝ニャンバラ〟? 何だそれは?」


警官猫「……もしかして君たち、〝地上世界〟から来たんじゃないよな? まさか。そんなはずはないか」


ゴマ「何言ってんださっきから。ボクらは、地上に住んでるに決まってんだろ」


ルナ「だよね」



N「ボクは、ハッとした。ボクらは地面に空いていた謎の穴から、地中深くに転がり落ちて来たんだ。だとしたらここは、地下の奥深くの世界なのか? 地下の奥深くに、ネコだけが住む世界があったというのか。いや、そんなわけねえ。外だって昼のような明るさだし、太陽もちゃんと空にあるし」

 


警官猫「君たち、ふざけるのもいい加減にしろ!」


ゴマ「うるせえな。いつまでここに居させる気だ。さっさと帰らせろ」


警官猫「……住所と電話番号と親の名前を正直に言いなさい」


ゴマ「だから、知らねっつってんだろ!」


ルナ「……ねえ、一体ここどこなの?」



N「ルナが尋ねると、黒服はため息をつきながら答えた」



警官猫「ニャンバラだ」


ゴマ「何だと⁉︎ 聞いたか? おいルナ、地底都市だってよ」


ルナ「地面の下にこんな世界があったなんて……。兄ちゃん、僕らこれからどうなるの……?」



N「こうしてボクらは、ネコばかりが住む世界〝地底都市ニャンバラ〟に迷い込んでしまったんだ。ボクらはもう一度アイミ姉ちゃんのところへ、無事に帰る事は出来るんだろうか」

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