第17話 生徒会対応(1)
小会議室に着くまでに迷った。
職員室を出てどちらが高校北棟かわからなかったからだ。
下足場に近い階段を上る。いちばん近い校舎に入ってみると、さっき案内してもらったときと感じが違う。
さてはこちらは南棟だったかと反対側に戻ると、そちらが正解だった。
少しだけ足を踏み入れた南棟と「正解」の北棟とでは雰囲気が違う。
南棟は生徒の数が少なくてしんとしていた。
北棟は、廊下を歩いていたり、廊下で活発に話をしたりしている生徒が多くて、全体にざわざわしている。
午後になって登校している生徒数が増えたのだろう。午前中に
大きい学校らしく、高校北棟の廊下は遠くまで続いている。
そのなかで、本館に近いところに第二小会議室はあった。
「失礼します」
と言ってひっそりと入る。
小会議室は細長い部屋だった。手前寄りに大きい会議室机があり、奥に小さめの応接セットが置いてある。
会議室机の左側に黒板があって、その前に河原崎先生が座っていた。
向かい側に座っているのはさっきの生徒二人だ。
「じゃ、金沢さん、ここに」
言われて、河原崎先生の左側の隣に景子は着席した。
会議室机が大きすぎるのだろう。スペースが狭い。椅子に座るとほとんど余裕がなくてきゅうくつだ。
「この四月から生徒会対応の事務をやってくださる
と
景子は黙って生徒たちに頭を下げる。
頭を下げながら思っていたのは
「生徒会対応? きいてないよ、そんなの!」
ということだった。
でも、生徒指導の指揮で動くのだから、そういう仕事もあるだろうと思い直す。
それはいいのだが。
前に座っている子たちは、景子がプリントアウトしてきた資料の子たちとは違う。
生徒たちのうち、向かって左の子が景子に向かって顔を上げた。
「生徒会長の
とあいさつする。目が離れていて、口が大きくて、目と眉のあいだが開いていて、東京で近所にいた世話焼きおばさんによく似た感じだ。
続いて、右の子が
「副会長の
と言う。この子は眼鏡をかけていて、ストレートのロングヘアで、内気な感じがする。
「よろしくお願いします」
とまた二人揃って座ったまま礼をする。また動きがきちんと揃っている。
礼儀正しくしたのだろうけど、それよりも。
かわいい。
動きが揃っているのがまたかわいい。
三年生はこの年のうちに十八歳になる。そのとき二歳しか違わないとしても、歳下は歳下だ。
でも感心しているばあいではない。いまの仕事をきちんとやらなければ。
「それでは、先生」
と、景子が「できる事務員」ぶりを発揮して、プリントしてきた文書を河原崎先生の前に置く。
フォルダーに入れたままか、フォルダーから出してそのまま置くか、四枚横に並べるかで迷ったけど、先生の体の前まで手を伸ばして横並びにすることもないだろうと思って、フォルダーから出したまま重ねて置く。
「うん」
と河原崎先生は軽くうなずいた。
「それで」
と、両手を組んで机の上に置き、少女たちに向かって話し始める。
「生徒会幹部が三人抜けるっていうわけね?」
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