散らかった部屋

 物置のようになった学習机。子供向けの頑丈でシンプルなベッド。20年以上前からそこに敷かれているんだろうなという感じのカーペット。カラーボックスに並んだ参考書。


「勉強するために図書館行ってくる」

 彼女はそう言った。

 机の上を片付けて自分の部屋で勉強すればいいのに。なんて思いながらわたしも図書館についていくことにした。さっさと出ていく彼女を急いで追いかける。玄関をでたところで彼女は待っていた。小さめの黒いリュックを胸に抱えてなにか取り出そうとしている。家の鍵が見当たらないらしい。

「机の上にあるかもしれないから見てきて」

 そう言うのでわたしは部屋に戻る。


 学習机の上にはたくさんの物が乱雑に積みあがっていた。どこかの店のメンバーズカード、クレジットカード的なもの、ルーズリーフ、ノート、いつかのテスト用紙、消しゴム、小さな箱。

 家の鍵は見つからない。

 わたしはわたしが悪いわけでもないのになぜか罪悪感を覚える。焦る。彼女の期待に応えれないことがとても怖くなる。

 彼女が心配そうに様子を見に来る。

「かぎ、ないよ?」

 彼女の表情が固まって少しだけ時間が止まる。思い出したように引き出しに手を伸ばす。そこからちゃんと鍵が出てきた。

 安心するべきだと思うのに、わたしはそこでなぜか落胆する。失望といってもいいかもしれない。すこし悲しくなった。

 その理由はいまだわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る