三度目の出会い
「さて、まずは図書室前の確認だな」
「うぃーっす」
朝食を食べ終えた紅葉は、金属バットで武装した海未と最初にすべき事を確かめ合う。
紅葉の手には、除草剤が握られている。コンビニに置かれていたスプレータイプの代物で、ラベルには『草コロリ』なる大変分かりやすい商品名が書かれていた。
これまでの実験により、兎に角掛けてしまえば(時間は掛かるが)ゾンビに効果があると分かっている。スプレーで吹きかけても効果はある筈だ。
海未の金属バットと共に使えば、安全にゾンビに退治出来るだろう。
「……よし、いくぞ」
一呼吸入れた後、紅葉は図書室の扉を開けて廊下へと出た。
尤も、廊下にゾンビの姿はなかったが。脳味噌も腐り果てた奴等は階段を上るのが苦手だ。三階にある図書室まで来るのは難しい。
とはいえもしかすると近くまで来ている奴がいるかも知れない。まずは気配を注意深く窺う……本当に近くには気配もないと分かって、紅葉は大きな息を吐く。海未も構えていたバットを下ろし、ため息を吐いていた。
息を整えたら、次に向かうのはトイレだ。
もうずっと掃除されていない、アンモニア臭漂う部屋の部屋を覗き込んでみる。
「……いたか」
するとそこに、ゾンビの姿を二体確認出来た。
ゾンビは老婆と青年の姿をしたもの。どちらも覗き込んだ紅葉の臭いを察知したようで、近付いてきた……が、どちらも這いずっている状態のため非常に遅い。恐らく何かの拍子(紅葉達が使った後の残り香に惹かれたとか)にやってきたものの、そこで臭いが負えなくなったため静止。そのまま一夜を明かしたが、日当たりの悪いトイレでは朝になっても十分な光合成が出来ず、体力が回復出来なかったのだろう。
数が二体なのは危険だが、這いずる動きなら逃げるのは容易だ。スプレーの狙いも付けやすい。
「良し。ここの連中を退治しよう……そうだな。学校内のゾンビを減らせたら、トイレを使っても良いかも知れない」
「おっ! ようやくトイレ解禁!? 長かったー」
紅葉の独り言に、海未が大いに喜ぶ。
図書室で寝泊まりしていた今日まで、紅葉達はトイレを使っていない。トイレは出入り口が一つしかない上に、極めて狭いため迂回も出来ない。もしもゾンビが中に入ってきたら逃げ場がなく、脱出不可能に陥ってしまう。
そのため今まではトイレを使わずに『用』を済ませていた。といっても窓から放尿などの変態的方法ではなく、備蓄倉庫にあった携帯トイレを使用している。本来便器に嵌めて使うタイプだが、ちょっと頑張れば便器なしでもなんとかやれるものだ。尤もこの方法を紅葉が指示したところ、海未はこの世の終わりに直面したような顔をしていたが。
避難生活中に何度もやっているので、紅葉としては慣れたつもりだが……それでもやはり普通のトイレを使いたいもの。水は流れないだろうから携帯トイレは使う事になるだろうが、便器に座ってするという『普通』の事が精神に与える影響は計り知れない。
「(それに、生活圏の近くにゾンビがいるのも好ましくない。退治しておくに越した事はないな)」
除草剤のスプレーを構えながら、少しずつ、紅葉はゾンビとの距離を詰めていく。
這いずるほど弱った状態なら回避は容易い……と思いたいが、紅葉は自他共に認める運動音痴だ。除草剤を吹きかけて退いた瞬間、尻餅を撞く可能性は否定出来ない。即効性がない以上ゾンビは難なく紅葉の傍までやってきた、がぶりとしてくるだろう。いくら這いずり移動のゾンビでも、油断すれば噛み付かれる恐れがある。
慎重に、けれども腰が引かないようしっかりと構え……紅葉は除草剤スプレーを噴射。二体のゾンビに掛ける事に成功した。そのまま数回スプレーを噴射し、必要量(と思しき量)を浴びせ掛ける。
「……ふぅ。退却しよう」
「いやー、ただ吹きかけるだけなのに滅茶苦茶緊張したねー」
「ははっ。確かにな」
普通のゾンビ小説の主人公なら、恐らく「俺はトイレにいた二匹の頭を素早く叩き潰した」で終わる行程だ。それをビクビクしながらやるというのも、中々情けない。
しかしいくら情けなくとも、一度噛まれれば終わりのゾンビ相手に警戒のし過ぎはない。最後まで死なない物語の主人公ならば兎も角、そんな保証のない紅葉達に無茶は出来ないのだ。
「(とはいえこの二体だけで帰るというのも、流石に慎重過ぎるか)」
これではトイレを解放しただけ。いくら慎重に越した事はないとはいえ、もう少し頑張っても良いだろう。
紅葉はトイレを後にすると、次は階段に向かう。二階に続く階段を慎重に、ぐるんと百八十度曲がる踊り場に行く時は手すりから身を乗り出して下を確認。ゾンビがいない事を確かめてから、慎重に下りていく。
普通に下れば三十秒も掛からない階段を、たっぷり二分ぐらい費やして、紅葉達は二階廊下に辿り着いた。
「……おかしいな。確か、此処は一昨日までゾンビがいたと思ったんだが」
その廊下にもゾンビが見当たらず、紅葉は首を傾げる。
独りごちた通り、一昨日食料調達のため夜に行動していた時、紅葉達はこの廊下を通った。スマホのライトで慎重に辺りを確認しており、その際倒れているゾンビを確認している。
基本、ゾンビ達は獲物がいない限りその場から動かない。それは除草剤の実験を行った時、一緒に判明した事実の一つだ。故に此処には朝日を浴びて元気になったゾンビがいると思ったのだが、予想は外れた。
或いは単に自分の記憶違いかも知れない。それを確かめる一番簡単な方法は、その時一緒にいた者に尋ねる事だ。
「だねー。何処行ったんだろう?」
紅葉の独り言に答えるように、海未は自身の記憶を明かしてくれる。二人揃って記憶違いをしている可能性もあるが、それよりも『ゾンビが動いた』可能性の方がずっと高い。
理由なしには動かないゾンビ。それがいないという事は――――
「(生存者が通ったのか?)」
あり得ない話ではない。
紅葉達以外の生存者達だって、食べ物や水は必要だ。何処に避難しているか分からないが、一ヶ所に留まり続けるのが困難な場所であれば、食料調達などで出歩く事は十分考えられる。
すれ違わないのは、活動時間が違うからかも知れない。というより常識的に考えて、ゾンビがいるにも拘らず真夜中に動くのは酔狂だろう。夜間を主な活動時間にしている紅葉達が変なのであり、普通は朝や昼間に動いている筈だ。
ゾンビを排除していけば、昼間に活動するのも容易になる。いずれはその生存者と出会えるかも知れない。無論その作業が終わるまで、相手と自分達が生き延びていればの話だが。
「……此処にもゾンビはいないな。なら一階に行くとするか」
「うん、一応後ろは見ておく」
「頼もしいな」
『悪癖』があれば背後だろうと物陰だろうとゾンビは察知出来るが、それでも直に背中を守ってくれる人がいるのは有り難い。紅葉は素直に礼を言いつつ、再び階段を下りる。
その足がぴたりと止まったのは、踊り場に足を踏み入れてから。
急に止まった紅葉の背中に、急には止まれなかった海未がぶつかる。紅葉は僅かにつんのめったが、転びはせず。しばしそのまま立ち尽くす。
「どしたの? 急に止まって」
不審そうに海未が尋ねてきたが、紅葉はすぐには答えない。
まず自分が現状を理解する。次いでどう表現すべきか考える。それからゆっくりと、口を開く。
「……一階でゾンビが群れているらしい。すごく、大きな気配を感じる。大群だな」
慎重に語れば、海未は顔を引き攣らせながら後退り。激しい嫌悪を見せた。
「え。嘘、大群って……に、逃げないと……!」
「落ち着け。まだ遠い。それに一ヶ所で群れているだけで、こっちに来る様子はない。下手に近付かなければ問題はないだろう」
あくまでも事実のみを、それでいて安心出来る情報を紅葉は伝える。最初は戸惑いを見せていた海未だったが、やがて落ち着きを取り戻す。
尤もその落ち着きは、一階に向かおうとする紅葉を見てすぐに失われたが。素早く伸ばされた海未の手が紅葉の肩を掴み、力強く引き寄せる。
「ちょ、何してんの!? 一階にゾンビがいるんでしょ!? 逃げないと!」
「妙だ。何故ゾンビが群れている? 奴等は効率的な光合成をするためか、自発的に群れるところなど見た事がない」
「偶には群れたくなる時だってあるでしょ! 植物だかなんだか知らないけど!」
紅葉を止めるため、海未はなんとも適当な反論をしてくる。
しかし紅葉は成程と思った。偶には群れたくなる時もある。ゾンビの身体が何かしらの『生き物』によりコントロールされているなら、確かにそういう事もあるかも知れない。つまり問題の本質は、何がゾンビを集めているのかという事だ。
紅葉が知る限り、それは一つだけ。
「生存者か」
ぽつりと、無意識に漏れ出た言葉。
それを聞いた海未は、両手から力が弛む。振り解くまでもなく、紅葉が前に進めばするんとその手から抜け出せた。そして海未がまた肩を掴んでくる事はない。
紅葉はほんの少し急ぎ足で階段を下りて一階へ。海未も後を付いてくる。
辺りにゾンビの姿はない。だが一階に辿り着くと、手掛かりは一つ増えた。
音だ。
微かにだがゾンビの唸り声……それと何かを叩くような音が聞こえる。雑音があれば簡単に紛れて聞き逃すであろうほど小さな音だが、今や生徒など一人もいない静かな廊下であれば確信出来る程度には聞き取れた。悪癖で感じ取った気配と合わせれば大凡の方角も分かる。
気配と音がする方に、紅葉は駆け足で向かう。走れば周囲の確認は疎かになるが、走っているのは長く伸びた一本の廊下。横から不意打ちを受ける心配はない。それよりも急ぐべきだと紅葉は判断していた。
「っ! 待て!」
そして廊下の角を曲がった時、紅葉は後ろにいる海未を止める。
言われた通り止まる海未。とはいえ仮に言わなくとも、自発的に止めただろうが。
何しろ紅葉の見ている先……十メートルほど離れた位置に、ゾンビの大群がいたのだから。数は推定で十体以上。これだけの群れに出会うのは、紅葉としては学校に逃げ込んだあの時以来だ。
「ひっ」
「落ち着け。奴等はこちらを気にもしていない」
怯えた声を出す海未に、紅葉は静かにそう語る。
実際、ゾンビは紅葉達など見向きもしていなかった。しかし活動を止めている訳ではない。
ゾンビ達はとある教室の扉を、どんどん叩いていた。叩く、というのは正確な表現ではないかも知れない。ゾンビ達は扉に体当たりするような動きでぶつかっている。
もしも扉が押戸であれば、十体分の体重で強引に押し開ける事が出来ただろう。しかし学校の扉の多くは引き戸、横にスライドさせなければ開かない構造だ。押戸に比べれば押す力には強いかも知れない。
とはいえ所詮その扉は溝に嵌っているだけの、極めて貧弱な構造である。叩き続ければいずれ扉は外れ、開くだろう。
その時、もしも教室内に『誰か』いたなら……
「……海未、一つ相談したい」
「な、何?」
「ゾンビ達は何故あの教室に入ろうとしていると思う?」
紅葉が尋ねると、海未は少し考え込み……ハッとした顔を見せる。
ゾンビを引き寄せるのは人間の臭いだ。そうやって奴等は生きた人間を探し、仲間と区別をし、増殖していく。
紅葉の想像通りなら、教室内には生きた人間がいる。恐らくなんらかの理由でその人物は外を出歩いていたが、不運にもゾンビの大群と遭遇。近くの教室へと逃げ込んだのだろう。だが引き離すには距離が近過ぎたのか、はたまた体臭が強かったのか……それとも怪我でもしていたのか。いずれにせよゾンビを引き寄せてしまい、逃げ場を失ったと思われる。
このまま放置すれば、ゾンビはいずれ教室に押し入るだろう。そうなれば中の人間が助かる可能性はゼロだ。
「(流石に、それは御免だな!)」
折角見付けた生存者の手掛かり。いくら危険とはいえ、見捨てるなどあり得ない。
とはいえこの手に握っているのがただのバットなら、どんなにあり得なくとも、逃げるしかなかった。頭を破壊しても動くゾンビに、ただの女子高生である紅葉が勝てる筈もない。
されど今の紅葉の手には、ゾンビを打ち倒す方法が握られていた。例え時間は掛かっても確実に、絶対に助けられる術がここにある。
「そこにいる人! 聞こえているか!」
紅葉は大きな声で、教室にいるであろう人物に呼び掛けた。
返事は、ない。
体力の消耗が激しくて声が出せないのか、それともいきなり聞こえてきた声に戸惑っているのか、或いはそこには誰もいないのか。答えは分からないが、『最善』の状況を想定しておく。
そして掛ける言葉は決まっていた。
「今から六時間待て! そこにいるゾンビ共は、私達の手で一掃する!」
生きる希望を捨てさせない、具体的な数字を含めた言葉を。
それを証明するべく紅葉は自らが握り締める除草剤を、力強く構えるのだった。
……………
………
…
ばたりと、ゾンビが倒れる。
夜中であればよく見られるであろう姿。しかし今はまだ燦々と太陽が輝いている時間帯だ。朝と違って直射日光は入ってこないが、校内の廊下は十分に明るい。
それだけ明るければ、ゾンビ達の活動に恐らく支障はない。なのに倒れたのは……浴びせた除草剤の効果が現れたからだ。
経過した時間は、凡そ六時間。
除草剤を浴びたゾンビの活動停止を確認した。数々の実験を行ってきた紅葉にとって想定通りの結果である。しかしそれでも胸が弾むのを抑えられない。
いよいよ、生存者と出会えるのだから。
「ふぅ。ようやく最後の一体が倒れたな」
「待つしかないのは、もどかしいね」
紅葉の言葉に、傍にいる海未がそう答える。
紅葉達に使えるゾンビの倒し方は、除草剤を掛けた後放置する事だけ。安全ではあるが、兎にも角にも時間が掛かる。今正にゾンビが破ろうとしている扉に対し、効果が出るまで持ち堪えてくれと願うのが精いっぱい。
勿論誘導を試みるという作戦もあったし、紅葉は近くに居座る事でこれを実行していた。しかしその方法は接近して、臭いで引き寄せるという捨て身なもの。閉じ込められている相手が恋人や我が子であるなら、それをする価値もあっただろうが……呼び掛けた際に返事がなかった以上、誰もいない可能性も捨てきれない。無茶に対し、リターンが確実なものではなかった。
そのため積極的には動けず、扉に群がるゾンビは殆ど反応せず。仮にゾンビが扉を破っても、何も出来ずに見ている事しか出来なかっただろう。
そうした惨劇はどうにか起きないでくれて、六時間後を迎えた今、ゾンビは全員倒れてくれた。ひとまず、最悪の事態は避けられたと言えよう。
「(とはいえ、ここからが本番か)」
廊下の影からゆっくり身を乗り出した紅葉は、慎重な足取りで教室に近付く。
倒れたとはいえ、完全にゾンビの活動が停止したかどうかは分からない。口元に近付く、ましてや踏み付けるなど今でも危険な行動だ。
まず海未に金属バットでゾンビを扉の前から退かしてもらう。いきなり動いても噛まれないよう、慎重に。安全な空間を確保したら、紅葉が扉の前に立ち、扉に耳を当てて中の様子を窺う。
「(……いるな。間違いない)」
物音は聞こえてこない。しかし『悪癖』のお陰で気配は感じ取れる。
数は恐らく一人。
中で動いてはいないようだが、部屋の真ん中で棒立ちしている訳ではなさそうだ。恐らく、端の方でしゃがみ込んでいる。ゾンビらしさはほぼ感じられない。
早速扉を開けようとしてみるが、ガタガタと音は鳴らすが開きはせず。内鍵が掛かっているようだ。
「……ゾンビは片付けた! もう出てきて平気だぞ!」
紅葉は大きな声で呼び掛けてみる。
反応は、ない。
――――そう思ったのも束の間、バタバタと走り回る音が聞こえてきた。その音は扉に近付き、
どかんっ、と派手な音を鳴らすほどの勢いで扉の『手前』で何かにぶつかった。
どうやら扉の前に何か、大きな物が置かれているらしい。そして部屋の中にいる者は、それを退かすような物音を鳴らし始めた。
恐らく、中には『バリケード』があるのだろう。いや、ないと考える方が不自然かと今になって紅葉は思う。ゾンビが扉を叩いているのだから、それをどうにか邪魔しようと考えるのが普通。小学生でもそれぐらいの事はしそうではないか。
推測が確信に変わりつつある。
それでも紅葉は油断せず、一旦扉の前から退いておく。横にずれ、扉の前には誰もいない状態にした。海未も何が起きるか察したようで、紅葉と共に離れていく。
やがて紅葉の、それと海未の予感は的中する。
内側から扉が開かれるや、教室の中から『何か』が飛び出してきたのだ。
とはいえそれをゾンビだとは、紅葉は考えていない。あの腐った死体達には引き戸を開ける程度の知性すら残っていないのだ。バリケードをどうこうする事など出来なやしない。
思っていた通り、現れたのは傷一つない『人間』、らしき少女だった。
「(中学生、いや、小学生か?)」
身長は百四十センチぐらいだろうか。制服を着ているので中学生かと思ったが、この身長は女子でも十一〜十二歳の水準だ。制服がある小学校もあるし、平均より背が低い子も当然ながら多い。見た目だけで年齢は断定出来ない。
とはいえ可愛らしくあどけない顔立ちや、華奢な身体付きからしてまだまだ幼いと考えても良いだろう。肘の辺りまで伸ばした黒髪も艷やかで、若さというより幼さを感じさせた。
紅葉が『観察』しているうちに、その少女は紅葉達の方へと振り向く。直後顔をくしゃくしゃに歪め、パチリと開いていた目には涙を浮かべた。
「ぁ……! ぅ……」
「落ち着いて。無理に話さなくて良い」
少女が口を開くのを、紅葉は優しく宥める。少女は口をぐっと閉じ、こくこくと頷く。
……間違いなく、少女は人間だ。
それでも、まだ油断すべきではない。見えない場所を噛まれていて、今正にゾンビ化寸前という可能性もある。合理的な観点で考えれば、身体検査を終えるまでは接触厳禁だろう。
しかし涙目でこちらを見つめる少女を、突き放せるか?
突き放せるなら、実に素晴らしい人間性だと紅葉は思う。皮肉ではなく、最後まで理性を重んじるのは重要だと本心から思っている。感染症対策に取り込む医師や自衛隊がこの理性を持たなければ、被害はどんどん拡大していく事だろう。何もなければ紅葉だってそう振る舞えた。
されど幼い少女という、大事な妹を彷彿とさせる相手と出会ったら……理性という名の蓋が外れてしまうのも仕方あるまい。
「よく頑張った。おいで」
故に紅葉は両手を広げ、少女を出迎えてしまう。
全力疾走で飛び込んだ少女に呆気なく押し倒され、廊下にごつんと頭を打つまで、紅葉は自分の行為を一片たりとも後悔しなかった。
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