「え?モスクワ沈んだって!?」「あのさあ・・・」
だが同時にファシズムは政治と経済の体制でもある。
それではなぜその定義を明確にして広く受け入れることができないのだろうか?悲しいかな!
私たちはそれを手に入れていないのだ……ともかくも今はまだ。
なぜそんなに時間がかかるのかという疑問はもっともだが、それはファシスト自身や保守主義者、種々の社会主義者といった議論に参加する意志のある者たち全員が認めるような満足のいく定義をファシズムに与えることが根本的に不可能なためだ。
さしあたり皆に可能なのは慎重にこの言葉を扱い、いつものように罵りの言葉に貶めないようにすることである。
➖「ファシズムとはなにか?」著ジョージ・オーウェル、1944年3月24日➖
開戦から時間が経ち、前線から異常なニュースが出るのは最早感覚が壊れていくのを感じていた。
新聞には「露軍揚陸艦撃沈」が踊る、俺はそういう時代にいる、ただそれだけ。
そう分かったような態度をして自己防衛し続けていた。
「第八軍司令官、狙撃されたってことはこれ極東方面の交代部隊の片割れが死んだやんけ」
「将官のキルスコアは一人差でウクライナの勝ち、プーチンは最低後二人をキルしないとゼレンスキーに勝てない」
「また大佐死んでるんだけど佐官がナポレオン戦争時代並みに死んでるな?」
いつも通りディスコードのサーバーでは何気ない雑談のように戦争の話をしていた。
開戦前からそういうところだったし、そうでない時はホモビデオの改変文書かベストコリアたる北朝鮮ネタがされていたから、元から変わらないが。
そしてある日、恐ろしいことを述べるものが出た。
「この戦争44日経ったぞ、アゼルの戦争より長いってよ」
プーチンの戦争指導はアゼル以下。
コーカサスの産油国より戦争が弱い無能の核保有国。
衝撃力があまりに強過ぎる、実はアルメニアにチェルノブイリと同型の原発があると知った時の気分だ、アゼルバイジャンは原発攻撃などという行為をしなかったから倫理観でも勝っているのだが。
「黒海の第22上陸戦部隊が勝手に壊滅したのでコレ、オデッサの予備兵力が全て東部戦線に回せるな」
「ヘルソンぶち抜いてクリミア行けるんですかねぇ?」
「クリミアの陥落は2014年以降のウクライナの状況の転換点としてあまりに価値がでかい、犠牲が出ようと価値があると思う」
「ところでマリウポリ陥落はまーだかかる感じなのかねロシア軍」
今にして思うと、案外私の言ってたクリミアへの圧力激烈化は正しかった気がする。
というかまあ、常識的に考えてドニエプル西岸の橋頭堡だから当然だが。
そんな中事件は、ある日の早朝に飛び込んだ。
「ウクライナ軍は巡洋艦モスクワに対する地対艦ミサイル攻撃を行い、敵艦を撃沈せしむ」
「ロシア巡洋艦モスクワはSOSを発信中、"我沈没シツツアリ"」
???????????????????
寝起きの頭が一気に醒めた。
ナアナアナアナア!これでもボクは軍事オタクの端くれだ!
しかもモスクワと言えばスラヴァ級巡洋艦であり黒海艦隊の旗艦だろう?
いくらイギリスから地対艦ミサイルが送られたからと言って君達はそんな数持ってないだろう?
しかしウクライナ軍から入った続報は「今月試作品完成の新型地対艦ミサイルネプチューン2発命中です」というものだった。
岸辺露伴先生でも「この展開はおかしくないか」と言われるに違いない。
どうせ飛ばしかかすり傷だと思ったらロシア国防省が「総員退艦しただけです!火災なだけ!被弾してない!」と言い張り出した。
だがいくつか疑問が浮かんだ。
1:
2:黒海艦隊僚艦は何をしていたのか、随伴艦を伴わぬ独航は考えられないので小戦隊を形成していたのか?
3:露軍艦艇の防空能力は何をしていたのか。
4:被弾2発で沈むってナンデ?
詳しくこの疑問について理由を述べていこう。
まず1に関してである。
基本として艦艇というものはハリネズミの背中のような対空能力を大きければ大きいほど有する。
第二次世界大戦期間の艦艇に於いては「概ね最大10キロからが対空の射界」というケースもしばしばある。
艦艇の対空射撃は各分野で何層も構成されており、現代では「ECM→対空ミサイル→チャフとフレア散布→CIWS及び主砲」とレイヤーが構成されている。
これは1980年代のフォークランド紛争のケースでも行われている。
アルゼンチン軍はイギリス軍の艦隊、特に空母へ対艦ミサイルを撃ったが欺瞞で狂わされ、関係ない輸送艦を吹っ飛ばしたのである。
決してミサイルは楽な兵器ではない。
続いて2の疑問である。
黒海艦隊旗艦ということは、要するに艦隊の威信である。
かつての帝国海軍の長門や、レイテ突入時の連合艦隊旗艦愛宕のように旗艦はお供をつれるのが道理である。
さらに言えば、モスクワは自艦を含めて3隻しかロシアに居ない。
本来8隻くらい作るつもりが予算とソ連崩壊で、なんならモスクワも未完成になりかけたし、ロシアが無理を言ってウクライナから譲ってもらったようなヤツである。
そんな船を一隻で出す?はじめてのおつかい気分で海軍してるの?何考えてんの?
まして広い太平洋とかで輸送任務中とかなら分かるが、黒海はそんな広くねぇだろ!と叫ぶしかない。
3の疑問に移るが、1で述べた通り対空ミサイルのみならず多層レイヤーでミサイルは阻止される、したがって船を沈めるにはなかなかの数がいる。
イージスシステムが同時16目標、124目標応対が出来る訳である。
いくらロシア艦艇の防空が宜しいと言えないと言っても、モスクワにはS-300というロシア版パトリオットがあるし、艦首にAK630CIWSもある、それに短距離SAMだってある。
地対艦ミサイル大隊がおおむね14発だから、難しい話ではない筈だ。
そして、個人的に一番の問題と思える4であるが、結局のところ当たる時はやっぱミサイルって当たる。
何せアメリカ海軍すらイラン海軍にぶち当てられた事がある。
しかしながらその際はアメリカ海軍が大戦の経験からさらに発達したダメコン能力を見せている。
歪な急成長を遂げた為に帝国海軍の空母加賀のダメコン要員が50人で縦割り化がされていたのに対し、当時から空母レキシントンは各部署から引き抜かれた300人が即応要員としているような海軍だ、イギリスの血があるだけはある。
しかしながら第二次世界大戦が終わる頃には日米英は「艦艇って沈ませない努力に必要なことがある」と理解していた。
当然それはロシアもそうだと考えられてきた。
基本的に艦艇は喫水線の下に打撃を与えない限り早々沈んだりしない、日本海海戦でも炎上して放棄されたからで、それ以外にロシア戦艦は沈んだケースは魚雷だけである。
上部構造物が捥げてしまおうが浮力がある限り船は浮くし、適切なダメコンがされれば艦艇は復旧するし、火災で弾薬庫誘爆なんて早々に起きない。
フッドよろしく恐ろしく不運だったか、ユトランドのイギリス戦艦よろしく乗員の安全管理がアホだと起きる。
【真実はいつも残酷だ】
やがてその情報は出てきた。
アメリカ国防省が「浮いてはいますがえらい大損害」と言い、ロシア国防省は「曳航しつつセヴァストポリに退避中」と言う。
しかしながらモスクワは、ついに沈んだ。
クレムリンがガバガバな「嵐、嵐のせい!」と言い張るのを尻目に、命中に至るまでの情報が出てきた。
それは目を覆いたくなるものだった。
何故ならそれはロジェストヴェンスキー提督の戦艦<クニャージ・スヴォーロフ>の犠牲すら踏み躙る愚かしさの塊で構成されていた。
こんな有様になってると知ったら対馬沖から彼らが蘇ってペテルブルクに主砲弾を喰らわせにいくに違いない。
「慢心しきって敵の近海で空睨んで対空ミサイル基地のつもりでボッチでいたらドローンに釣られて、射撃レーダーは全方位じゃないので目を逸らしてたような状態でミサイル直撃しました」
ナンデ?
バカがよとしか言いようがない、愚かしさの総合商社だ。
要するにロシア海軍は「改良もしてない油断しきった艦艇をわざわざ敵地前面に浮かべて悦に入ってた」のだ。
こんなザマを見せるのがあのソ連の後継だと言うのか、確かにソ連海軍も色々ガバガバだったがこれはあんまりだ!
普段はウクライナ軍の声明に噛み付く陰謀論者たちは悉くこのニュースを無視していた、そりゃあそうだろう、光の聖戦士プーチンがこんな間抜けで分かりやすい戦果を出されるなんて。
それでも一部は「DSの捏造!ロシアは無事なモスクワを出せる!」と言っていたが「それロシア国防省の公式声明ですよ」で完封勝ち出来てしまった、雑魚がよ。
さらに「工作員が乗っていたんだ!」と言うものがいたが「作戦行動中の艦艇の乗員に工作員乗り込まれるってダメだろ」で勝ってしまった、我ながらかわいそうな戦いをしてしまった。
以来Twitterでも掲示板でもモスクワ撃沈に関する陰謀論者のニュースが来なくなった、ついでにロシア国営放送もカバーストーリーの嵐設定を忘れていた、北斗の拳のがずっと設定を大事にしてるよ?
しかしながら、ウクライナ軍が取った戦法は中々面白いものであった。
モスクワは全方位に射撃レーダーを対応させていない--海自の一部護衛艦なども同様との事--ので、まず無人ドローンであるバイラクタルくんを大量に突撃させて気をひきます。
続いて別方向から斜めにスライドしながらネプチューンくんが飛び込みます。
モスクワ艦体中央部対空ミサイル弾薬庫誘爆。
なるほどなるほど、確かにこりゃすごい。
要するにシンゴジラのヤシオリ作戦と同じなわけだ、無人機が幾ら飛んでもメカフェチ以外悲しくないからな。
しかもこの一週間ほど前にアメリカ軍は「追加支援でスイッチブレード特攻ドローンあげるね、まず300くらい」と渡している、五千兆円も気軽にPON☆とくれそうだな。
そしてネプチューン対艦ミサイルの実戦投入、これも代わりのイギリスからの地対艦ミサイルがある。
つまり、ウクライナは仮に失敗してもあんまり失うものがないものでロシア海軍に1906年以来の屈辱を与えたのである。
・・・靖国で東郷元帥が憤慨しているに違いないな。
そしてダメージコントロールの話も真実が見えてきた。
沈む少し前のモスクワの映像が流出し、舷側のやたらに多い窓の焦げ跡から艦内が業火に包まれたのが容易に読み取れた。
さらに元モスクワ乗員の証言で「俺の勤務中の火災なんて2件しかなかったよ」とロシア水兵のモラルが感じられるヤバい案件が出てきた。
艦艇の!!!火災は!!!!!!本来大問題!!!!
いや給湯器CICに持ち込んで炎上事件起こした日本が言える話でもねーけどさ・・・。
しかもモスクワ艦内の映像を見るとやたらに木が多い、可燃物まみれじゃねーか!!
旧海軍ですら基本可燃物は戦闘前に棄てるべしと言う鉄則があるんだぞ!なんなら高級士官室のソファーすら瑞鶴は投げ棄てたぞ!
お前イギリス海軍がやらかしてただろ!
しかしながら、我々は最悪の真実と直面した。
ロシア艦艇のVLSは西側と違いリボルバーロンチ式VLSという、この装填方式なのだが・・・区画が分けられていない。
弾薬は殆ど剥き出しな状態でそこに収まっている。
お前ら・・・何をしていたんだ・・・。
これユトランド海戦のイギリス戦艦より酷いじゃないか!
以下に妄想による補填を多分に含んだモスクワ撃沈に至るまでの経緯を記す。
戦後の資料開示後批判していただきたい。
1:<モスクワ>に対して高度を上げてバイラクタルは前進。
↓
2:無人ドローンの総攻撃に<モスクワ>は対空射撃を開始、同時にネプチューンは低空をシースキミングで飛行する。
↓
3:本命のネプチューンがスライド飛行の最終突入態勢へ。
↓
4:2発命中、艦体中央部VLS近くに被弾し火災が急激に拡大する。(恐らくこれで半分沈んだようなものと推測)
↓
5:<モスクワ>はSOSを発信、西側AWACSのデータ横流しでウクライナ軍が命中を確かめる。
↓
6:火災拡大により総員退艦、恐らくここら辺から先で適切な措置を図らなかったものと思われる。
↓
7:曳航艦艇とトルコ海軍により乗員が救助される、またここで旗艦を喪失し漂流し始めたのを米軍が観測した可能性あり。(米露の表現の食い違い)
↓
8:曳航作業を開始したことにより破口か何かから浸水が拡大したと推測。
↓
9:<モスクワ>、黒海で特別魚礁作戦に永遠に従事する。
↓
10:ウクライナ政府の新作切手として盛大にネタにされる。
【最後に】
私はこの戦争を観測していて、自身の中にある民主主義価値観と倫理観、そして根強い反戦意識がある事に驚きを持った。
私は祖国と自由と生命と尊厳の為の戦いを否定しないが、正当性や正義どころか下らぬ野望による侵略戦争に憤りを感じれる事、そしてその中で確かに存在する英雄と呼ぶべき存在の輝きを見ると、言いようのない感情に包まれた。
私は腐ったシニシズムではなく、自身なりの正義を維持出来ていたらしいということは、大きな喜びであった。
そんな私が日本製陰謀論者の逮捕を肴に巻き寿司を頬張っていた4月の中盤。
露軍の東部戦線大攻勢と再編された戦車師団の前線到着の報告が入った。
【第三章:「凄いぞ、赤軍アカデミーで見たクルスクの戦いの再現だ」】
東部戦線大攻勢に続く。
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