プーチンの演説要約で9000RT2万いいねを押し付けられた私が思った戦争

南部連合のメスガキ

「俺たちが見ているのはあのソ連軍の末裔のはずだ・・・」


【警告】


この独白は捉え方によっては人種差別や露悪的に思われるかも知れません。

私はそれを否定も肯定も致しません。

それで不愉快になられましたら、少し休んでから読んでください。


序【大いなるもの東より】


人民、ただ人民のみが国家を構成する。

-連合政府論、毛沢東-


2022年2月、私は遂にテレワーク続けて一年目を迎えた事に内心驚いていた。

既に在宅勤務の快適さを知ってしまったら中毒になるなと思いながら、仕事してない時は友人たちとボイスチャットをしながら戦略ゲームフランス製の冷戦期が舞台のやつを続けていた。


《戦車が幾らすると思ってんだ!死守だ死守!歩兵はメキシコ産で安いが戦車はアメリカ国産の純正品なんだぞ!》


とかそう言う事をよく言っていた。(文字にするとひどいもんだな)

そんな我々は要するにミリタリーオタクである、マニアと書かないのはマニアに失礼だからだ、極論すれば他人の花火を横から好き勝手言ってる訳だからである。

そう言う訳で、ロシア軍が本格侵攻すると言う情報が出てきた12月以来、我々は着々と増強されるロシア軍の映像をよく見ていた。


《クリミアには空挺軍のNONA自走迫撃砲、東部には・・・わぁ!ムスタにT-80Uだぜ!》

《すごいなあ、フロッグフットだ!》

《この攻撃ヘリ連隊ってMil-28装備部隊ですって、凄いわね。》


と言う具合に。

全部ゲームで普段からドンパチしている兵器が、どんどん出てくる。

思い返してみると、一月あたりまでは「でもこの兵器って見せ金で、外交策の妥協を捻る役者みたいなもんだろう」というのが多数派だった。

無論そのサーバーには夢想的戦後日本平和主義は既に6フィート下に埋まってるから、これは予算を考えての意見だった。

ある者は「燃料費とか高そうだな」という理由からこれを考え、またある者は「弾薬とか大丈夫なのか?」と述べていた。

今にして思えば全部正解だった。

しかし物資集積は尋常じゃない、遂に2月前半に入ると《ロシア軍が・・・無線管制に入った》と知らせが飛び込み出した。

攻勢の前兆だ!サーバーにいた人達は殆ど大半がやるんだろうと薄々勘付いていた。


《で、割と真面目に皆さん、何日ウクライナが抵抗すると思う?》


ある時こう言うことを聞いてみた。

「二日」「三日かも知れない」「1日と半分かな」「三日じゃないか?」と帰ってくる。

別の軍事シミュレーションゲームで、戦車連隊が抵抗を受けなかった場合何日でキエフに達するか試してみた。

半日でキエフが陥落した。

誰もがそれをみて、ある意味衝撃を受けていた。

抵抗を受けるだろうし、橋が落とされるだろうしと考えても一週間以内には崩壊するだろう。

サーバーの意見は概ね二つだった。


1:「ロシア軍は東部戦線のウクライナ軍を包囲するべくベラルーシなどより南進し、敵野戦軍を撃滅しドニエプルを超える。」

2:「クリミアからの空挺軍の速攻と機械化部隊による電撃戦によりキエフが陥落する。」


今にして思えばモスクワのSTAVKA赤軍大本営より真面目に作戦を考えてた様な気がする。

そんな中、プーチンが演説すると言う話を聞いた。


「これはもしかしたら、歴史的瞬間が観れるかも知れない。

 俺はそんな瞬間を見れるんだ!」


私の悪いオタクの癖が出た。

やめとけば良かったものを・・・。

ちょうど個人通話していた友人一名を生贄にシンクロ召喚、私はRT通信を開き、片手にTwitterのウクライナ関連の英字アカウントを開いた、演説の書き起こしが出る。


午前3時、モスクワ製の怪文書生声朗読放送を私たちは見せつけられた。

当時の衝撃を抱きながら要約した文章を原文のママ、下記に記載する。


【マジやは痴呆老人ぷーちんちんの激ヤバ暴論】

ウクライナを作ったのは共産時代ロシアのレーニンだから俺のもん

クリミアがウクライナなのはフルシチョフがテキトーにやっただけ

ロシア帝国とソ連時代の遺産を放棄するつもりなんかありませーん!

てかウクライナ真の国家じゃないしー?

西側の傀儡でロシア語浄化してジェノサイドしてるじゃん許せねー!

西側の支援で戦術核兵器作ってるんやろ!

米帝は強い独立したロシアを殺そうとしている!

イスラム過激派もネオナチもみんなグル!

黒幕はアメリカ!


以上、演説要約


核保有国の国家元首の言動か・・・?これが・・・?

陰謀論者で全て敵だと信じ込む醜さ。


生き恥。


私が生涯反プーチン思想を抱くに相応しい理由だった。

突然深夜3時にこんなキ○ガイの妄言を大国の国家元首に言われたら人生を止めようか本気で思う。

こんな悪い冗談があってたまるか、神は死んだと言うのか、斯様な理由で戦争をするのか、冗談ではない。

大日本帝国のがもう少しマシな理由で戦争したぞ、自業自得だったがあの国はライフラインが止まった無敵の人理論のが理解ができる。


私たちは衝撃を受けてそっと8時、朝日の光を見ながらふて寝した。

ささやかなレジスタンスであった。


【開戦】


それはともかくとして、やはりサーバーの意見は「ロシア軍の速攻を食らって死ぬだろう」が多数派であった。

軍隊の指導者が陰謀論者とはいえ全員が狂ってるわけではないし、シリアでの経験を活かして制圧するだろう。

我々は「ナゴルノ=カラバフ紛争のアゼルより早く終えるだろうな」と考えていた。


そんな中、ロシアは元気に偽旗作戦をしていた。

冬戦争などを知っていたので誰もロシアの言い分を信じなかった。

まして大使館の妄言を信じる人間もいないし、当然極まるが「ウクライナにはハザール王国があって悪の秘密政府を制圧しに行くんだよ!」なんていう呆れる理論を信じたりしていない。

そしてロシア軍がドネツク及びルガンスクの分離主義テロリストたちの支配地域(国家扱いなんぞしてやるつもりは無い。)に足を踏み入れた。


《始まったな》


だが開戦初っ端から無差別弾道弾攻撃と巡航ミサイル攻撃が最初の一歩から不安を抱かせる。

不必要な戦略攻撃は市民の憎悪を煽るだけと言うのが大戦の戦訓である。

占領した後復興する予算は自分持ちだし、荒れ果てた土地の住民がゲリラ化して手に負えない事態になったら余計不味い。


《何を学んだんだロシア軍は》

《アイツら野蛮なスキタイのままだ!》


呆れと怒号の声が児玉しつつ、キエフ近郊に既にスペツナズが入ったと言う話を聞いた。

空挺旅団スペツナズと言うヤツか!と内心でワクワクしていた、速攻と特殊部隊による司令部攻撃、これこそ冷戦期の鉄のカーテンの向こうの戦争だ。

本気でそう思っていた。

そしてそれは幻想であった。


開戦二日目、ムリーヤが破壊され言い知れぬ悲しさを抱きながら情報を見ていたら、包囲された部隊が出ていた。

キエフに侵入し空港を占拠したスペツナズも援護を受けれず敗走していた。

・・・1944年のマーケット・ガーデンだって最後以外は上手くいってましたよ?

しかしそれでもロシアが有利だとみんな考えていた。

全員まさか、自分達がしている戦略ゲームの愚かな無能プレイヤー並みの知性で人間の命を動かしてるなんて信じれる程人間性が荒んでいない。

戦略ゲームにいる無能プレイヤーは大別して三種類いた。


1:ただ砲弾とロケットをばら撒いてろくな戦果を出さずに物資を浪費するアホ。

2:バカみたいに目的もなく戦車突っ込ませるアホ。

3:アホなのか攻撃ヘリを群れで突っ込ませれば勝てると思ってるアホ。


だが・・・。

時間が経つにつれて・・・。

明らかにロシア軍がコレだというのを認めるしかなくなった。

悪くて強くて格好いい北の国のヤバい陸軍国家は、ユニコーンと一角獣達のメルヘンな世界にしか居なかったのである。

二週間した頃には、我々がゲームで使ってる兵器達が派手に飛び散った映像が出てきた。


後部が抉れ飛んだBMP-3。

MANPADSに撃たれて不時着したKA-50。

空に舞って爆ぜたT-80やT-90。

捕虜の群れに更新される鹵獲された兵器類・・・。

鹵獲された兵器類に自走砲や指揮戦車がある、私は嫌な予感に包まれていた。

前線を指揮する指揮戦車や自走砲が鹵獲されるだって?それは指揮官や後方の砲兵陣地がヤラれているんだぞ。

ゲームでそんな事が起こっている時は・・・。

脳裏には普段のゲームで攻勢に出る味方戦車隊の様子が浮かんだ、まさか・・・いやしかし。


《俺たちが見ているのはあの強大なソ連軍の末裔のはずだ》

《その成れの果てでしょ、弱いし》

《動いてるだけの腐乱死体》


その時完全に、強国ロシアは死んだ。

私がその時感じた不安は、2014年に「いまクリミアにいます!」とフェイスブックに上げちゃった空挺軍のセルゲイくんが、無事に生き残っているんだろうかと言う事だった。




彼らは明らかに、こんな馬鹿げた戦争で死ぬには相応しくなかった。

「7日間で西ドイツ国境を食い破ってパリへ達する軍隊」の屍は、とっくに腐っていたが、もう誰も気にしなくなっていた。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る