第13話時戻りの噴水・勇者

 そこは時戻りの噴水。

満月の深夜、水に映る月に祈ると、指定した過去に一時間だけ戻ることができるという


きらびやかな鎧を着けた男が、頭をたれていた。


 月の神よどうか、ボクが勇者認定される直前にもどしてくれ。

英雄エクスカリバーの剣を引き抜く前に。


 こんなはずじゃなかったんだ。ちょっとした好奇心だった。

ボクは魔王と戦うことなんてできないよ、なぜなら小説家だから。


 勇者の物語や魔王の物語は、いくらでもつづれるけれど、ボクは剣では戦えない。ボクの武器はペンなんだ。


だから、今度は英雄エクスカリバーの剣には触れもしない。本当の勇者が現れるのを見届けるから。そして書き始めるよ、新たな勇者の物語を。


やがて水に映る月がゆがみ水面が波立った。。

勇者の姿は、いつのまにか闇に包まれ消えて行った


(時戻りの噴水03)

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