第12話時戻りの噴水・ダール

そこは時戻りの噴水。

満月の深夜、水に映る月に祈ると、指定した過去に一時間だけ戻ることができるという。

ダールは一心不乱に祈っていた。


月の神よどうか、闘技会のあの日にもどしてくれ。

勇者ロイとあの少女の決勝戦の前まで。


まさか、あの小さな少女が、身の丈の三倍もあるハンマーを振り回し、勇者に勝つなんて、誰が思うだろう。

おかげで俺は、有り金全部を勇者に賭けて、明日の糧も無いありさま。


今度こそ絶対間違えはしない。勇者は負けると、そう知っているから。


だから今度こそ、大金は俺のものだ。どうかもう一度、チャンスをくれ。


やがて水に映る月が揺れ、波紋を描いた。

祈り続けたダールは、噴水の縁に腰掛けたまま、いつの間にか朝を迎えていたのだった。


(時戻りの噴水02)

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