第6話伴侶

 窓を開けると、川沿いの土手が見えた。

夕刻、わずかに陽がかげってきた頃、いつも自転車を走らせて通る少年がいた。


きょうは釣りをしていたらしい、ハンドルに釣り竿を引っかけて、成果の魚は荷台のバッグの中か。


家の前まで来た時に、少年はいつも自転車を降りて、窓を見上げる。見ている私に軽く手を振っただけで、またすぐに走り去ってしまう。


その時は、少年がどこから来て、どこへ帰るのか、私は知らなかった。


 十数年の月日が過ぎた今。大人になったかの少年は、自動車に乗って帰ってくる。

いつも庭に立ち、窓を見上げる。釣りの成果を、自慢げにかかげながら。


(窓を開けると…… 06)

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