第5話見つめる

 窓を開けると、巨大な眼球と目が合った。

アーモンド形の瞳は、何の感情もなく、瞬きもせずに、ただ見つめていた。


直径三メートルはあるだろうか、すべらかな丸の表面に、細い血管が編目のように巡っていた。


赤い管の内部には、ドクドクと脈打つように、あかい血が流れていて、私の心臓の鼓動とシンクロしているのに気がついた。


巨大な眼球は二階の窓のすぐそこに、ふよふよと浮き上がっていた。窓枠からはみ出るほどに大きいので、視界が遮られて外を見ることができなかった。


それが何なのかはわからない。私の心が作り出したモンスターなのか? 

恐怖もなければ、感情もわき上がらない。ただ、黙って、冷静に、見ているだけだった。


眼球は私を見ていた。私は眼球を見ていた。

いつまでも、ずっと。ただ、見つめていた。


(窓を開けると…… 05)

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