第53話:どうする。
ヒロインちゃんの行動がアレすぎて、殿下たちのことを忘れていた。彼ら、一体どうなるんだろう。
気になるならソフィーアさまとセレスティアさまが目の前に居るんだし、聞けばいいか。学院だと、近寄れないから丁度いい機会である。一応、ヒロインちゃんに巻き込まれた被害者だから不敬にはならないだろう。
殿下たちが気になるというより、彼らの婚約者の将来が気になる。お貴族さまとして真っ当なのに相手の所為で地に落ちるとか笑えない。
「ところで、殿下たちはどうなるのですか?」
「あの女が故意か無自覚かで多少は左右されると思うが、陛下や彼らの家の当主が決めることだからな。残す価値ありと判断すれば罪は軽くなるだろうし、必要ないと下されれば、まあ……そうなるだろう」
「ですわね。陛下の決定を一番に重んじるでしょうが、当主の決定も重要視されますから。――事実確認に裏取りにと、少々時間が掛かるかもしれませんわね」
国王陛下や家の決定次第ということか。こればかりは待つしかないのだろうなあ。裏取りとかもしなきゃならないだろうし、他に工作員やらが忍び込んでいたら大事だし。
『シナリオ』に従ったヒロインちゃんの所為でとんでもないことになってきた気がするのだけれど。
「やっかいなことを起こしてくれたものだな」
「あら、その割には深刻そうに捉えていないようですけれど」
「自爆だろうアレは。――頭が回るならもっと上手く立ち回るし、こうも簡単に失敗せんだろう」
ですよねえ。五人もの男の人に同時にアタックして成功させたことは凄いけれど、五人もいれば相手するのが大変なんだもの。
「確かに」
「ナイ、お前がアレと同じ立場で魔眼持ちだとしたら、どう振舞う?」
「え」
なんで私に聞くかなあ。頭は回転は遅いし、世渡りは前世の上澄みがあるからそれなりに繕える訳で。ソフィーアさまが期待するほどでもないのだけれど。まあ私からすれば、一択なのだけれどね。
「何もしませんよ。第二王子殿下に粉かけるなんて大それたことをする勇気なんてありません」
小心者ですよ、私は。あれ……ということはヒロインちゃんは大物になるのか。確かに肝は太いと思う。初対面で知ってか知らずか殿下に声かけてたし。
無邪気だなあ、で済ませていたのが裏目に出たか。初手に止めることが出来れば……たらればはもういいか。考えても無駄だ。
「普通はそうなるよなあ……」
「普通、であればですわね」
「仮に手を出すなら商家の人か騎士爵持ちの人くらいでしょうか。――お二人は彼女と同じ立場であれば、どうされますか?」
平民であればここいらの人で妥協しておいた方が良い。仮に商家生まれでお金を持ってて販路や後ろ盾が欲しいなら、政略でお貴族さまを狙っていいと思うけど。それでも子爵家くらいまでではなかろうか。伯爵家より上ともなると歴史が長い家が多いだろうし、周りが止める。
今回は学院という特殊な場であったからだ。お貴族さまと平民の垣根をもう少し低くしようと試みていたから、今回初めて特進科に平民を入れたそうだ。初手でおおゴケしとるやんけと突っ込みを入れたくなるが、学院側もこんなことは想定外だろう。
「ん?」
「まあ。――面白い仮定ですわね」
私から話を発展させる言葉が珍しかったのか、一瞬不思議そうな顔をする。まあヒロインちゃんと一緒にされるのは、快くは思わないだろうけれど。興味本位で聞いてみただけである。
「私もお前と同じだよ、手を出さん。王家が無能という訳でもない直ぐに気付かれて適切な時に処分されるのが妥当だろうな」
「わたくしも何もしませんわね。欲をかくなら豪商の家の者を狙いますけれど」
「……ですよね」
結局三人とも意見は同じであった。あんな無茶振り誰もやらん、と。
「しかし……わたくしたちの立場も危うくなりますわね」
婚約者がやらかしているものね。そりゃ自分の足元は確りとしておいた方が良いことである。実家で肩身の狭い思いをするなんて嫌だろうし、嫡子に奥さんが居るなら出ていかなければだろうしなあ。
あれ、お貴族さまって小姑の扱いってどうなってるのだろうか。まあお金は持っているだろうから一人養うくらいは簡単だろうけれど、浪費癖とかあるなら邪魔だよね、正直。
「ああ、何か手を打っておかねばな」
だから私を政治の話に巻き込まないでくださいってばっ!
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