第11話 私の勇者さま
「な、なんという強さだ!?」
「いやー、初めから私はあの者が勝つと思っておった」
ジルベルトに勝った俺に耳に周りにいる貴族たちの声が聞こえる。なんつー手のひら返しだ。
ジルベルトとアイザックは気を失ったようで、衛兵に抱えられて去っていった。その後ろを女魔術師が慌てて追いかけている。ふん、いい気味だ。その様子を眺めていると、王様とアストミアが近づいてきた。
「いやー、さすが勇者様。ただの冒険者など相手になりませんなぁ。はっはっはっ!」
王様は満面の笑みで笑っているが、こめかみに一筋、冷や汗が垂れているのを俺は見逃さなかった。
「コジマ様。よろしければ王国の現状をご説明したいと思います。どうぞこちらへ」
アストミアが俺をどこかへ先導してくれる。俺はそれについて歩いた。そして王様が戦闘、その後ろにアストミア、最後尾が俺という形で城内を歩く。俺はずっとそわそわしていた。王様と城内を歩くということへの緊張はもちろんあるが、ステータスを確認したくて仕方がなかった。ステータス確認も他人がやっているのは見たことがない。そもそも他人にも見えるのだろうか。よくわからないが、とりあえず秘密にしておきたい……
「あの……すみません、先にトイレに行かせていただいても……?」
俺は恐る恐る申し出た。
「おお、これは気が付かず済みません!」
王様が俺に謝罪し、アストミアがトイレの場所を案内してくれる。お客様みたいな扱いだが、やはり勇者ってのはそんなに偉いのだろうか。自分で言うのもなんだが、どこぞの馬の骨が強いだけでそんな立場になってしまうのには問題がある気もするが……
とはいえ、無事に一人きりになれた俺はワクワクしながらステータス画面を開いた。
小島修一 レベル51
HP 288
MP 102
ちから 80
素早さ 94
器用さ 67
魔力 0
スキル
おおっ! 一気に50くらい上がってる! 相変わらず魔力はないしスキルも増えていないが、なんか嬉しい。ステータス的にはやはり近接戦闘系なのだろうか。無限収納の範囲が短い以上、敵とは接近せざるを得ないのでスキルと能力値の相性は良いと言えるだろう。
レベル51というのがどれくらい強いのかわからないが、一流冒険者のバイパーズに楽勝で勝てるということは、人間の中では相当な強さなのだろう。おそらくBランク、ひょっとしたらAランク冒険者くらいの強さなのかもしれない。
俺はトイレを出ると、再び王様たちについて歩いた。行きついた先は応接室のような部屋であった。俺はふかふかのソファーに座り、豪華な調度品に囲まれている。対面には王様とアストミアが座っていた。
給仕の女の子が飲み物の入った杯を目の前のテーブルに置いてくれる。王様は自分の杯を傾け、ゴクリと喉を湿らすと、俺に向かってしゃべり始めた。
「実は最近、魔王軍の活動が活発になっているようでして……北の魔王領との間にはスノーデンという大国があるため、めったにこの辺まで魔王軍が来ることなどないのですが、先日我が娘、アストミアも所属する騎士団がゴブリンの部隊と遭遇しました。数はそれほど多くなかったのですが……ご存じの通り、向こうには魔王軍四天王の一人、ジャバックがおりました。騎士団は我が娘を残し全滅……アストミアも殺されそうになったところを、あなたが助けてくださったのです」
「へー」
話の規模が大きすぎて他人事のように流した。
「そもそも我々騎士団の目的はスノーデンの調査でした。ここ一週間ほど、スノーデンとの人の往来が途絶えていると報告があり、スノーデンの様子を見に行くところだったのです。もしかするとスノーデンがすでに陥落しているという最悪の可能性も考えなければなりません」
アストミアが硬い表情で言った。そんな大国がやられているとしたら、この国は大丈夫なんだろうか……?
「そ、それって他の国にも協力してもらって、一緒に対処した方が良くないですか?」
俺はそう提案する。しかし王様は首を振った。
「いまは戦争こそしておりませんが、国同士は常に領土拡大のチャンスを伺っております。我々が魔王軍との戦いで力を失っていると知れば、我々が魔王軍と戦っている後ろから他国が攻めてくるかもしれません。実際、魔王軍をいままで抑えていたスノーデンにも各国は特に援助や援軍などは送っておりませんでした」
アストミアが説明する。なるほど……逆に言えば、魔王軍と言えども一国で戦える相手ということだろうか。
「いままでもときおり、魔王軍がこの辺りまで来ることはありました。ですがそういった時には伝説通りに必ず勇者様が現れ、我々の窮地を救ってくださるのです」
ふ~ん……まあ「勇者が現れる」と言うより、「勇者」という存在を作り上げて軍の士気を上げるのが目的なんだろうな。
「伝説の勇者様は魔王軍を撃退するどころか、魔王軍の領土に侵攻して魔王を倒しました。もしかするとコジマ様のお強さは、その伝説の勇者様に匹敵するかもしれません」
王様が俺の様子を伺いながら話す。
「魔王を倒した……ということは今の魔王は何代目かの魔王ということですか?」
俺は気になって尋ねる。
「いえ、魔王の存在を消滅させることはできないと言われております。たとえ殺そうとも、すぐに復活してしまうのだとか……」
「え? じゃあ封印とかするってことですか?」
「伝説では勇者様が魔王を倒した時、魔王に『今後百年、人間に手出しはしない』と誓わせたとなっております。もちろん、詳しいことは定かではないのですが……」
アストミアが俺の疑問に答える。消滅しない……? 話が本当なら、魔王を倒しても魔王が戦いをやめる気にならない限り延々と戦い続けなければならない気がするが、どういうことなんだろう。
「コジマ様にはぜひ魔王を倒していただければと……」
王様が俺に媚びるような目つきで見る。いやいや、なぜそこまでやらなければならないんだ……
「もちろん、金銭的な支援等も行わせていただきます。国の財政が傾かない程度となりますが……もし魔王を倒せた暁には、ぜひ我が娘、アストミアを娶っていただければと」
「お、お父様!」
王様の言葉にアストミアが頬を赤らめる。お、おう……それは悪くない……もし駄目そうなら逃げればいい。俺はこの国の人間でもないしな。
「わかりました。私がどの程度お力になれるかはわかりませんが、やれるだけやってみましょう」
俺は「勇者様」となることを受け入れたのだった。
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