嘘告 図書室の聖女ver

 エイプリルフールというものをご存知だろうか。

 簡単に言えば嘘が赦される日。


 そこで俺はこの日しかできないことをしようと思う。

 『嘘告』だ。


 本来は最悪とみなされる行為。だけど、この日に限っては赦されるのだ。 


 何故そんなことをするのか?

 理由は簡単だ。

 告白ってドキドキするだろ?

 そのドキドキを味わってみたいんだよ。


 そういうわけで俺は今日2人に告白することにした。



◇◆◇◆◇◆



 最初のターゲットは後輩の沙織さおりにしようと思う。

 沙織は同じ図書委員で、よく一緒になる後輩だ。


 金髪ボブカットの美少女で、『図書室の聖女』とか呼ばれている。


 だけど、可愛いのは見た目だけで性格は可愛くない。

 沙織は口が悪いのだ。毒舌で誰に対しても高圧的な態度を取る。


 彼女に嘘告をしようと思ったのは簡単。

 元々好感度が低いため、嘘告したとしても俺への好感度はあまり下がらないからだ。

 ちなみにオッケイされるなんて選択肢は皆無だ。


 よし、やろう。


 俺はLIMEを開く。


『少し話いいか?』


 さて、何て言おうかな。

 最近のJKは今の時間帯(昼)きっと外で遊んでいるはず。

 だから返信は遅いだろう。ゆっくり考えよう。


 あ、沙織って彼氏いるんじゃね?


 ピコン


『なんですか?』

『しょうもないことだったら殴りますから』


 早っ

 いやでも、幼馴染の美鈴もいつもそれくらいだから普通なのかな。


 ちなみに沙織は殴るとかよく言うけどまだ一度も手を出されたことはない。

 素は優しいんだと思う。


『彼氏はいるのか?』


 俺はとりあえず問題点を潰しておくことにした。


 ここで沙織に彼氏がいた――


『いません』

『どうして先輩がそんなこと気にするんですか?』


 問題なかったようだ。


 なら、やるか。嘘告。

 何かドキドキするな。


『実は沙織のことが好きなんだ』


 うおぉ!言ったぞ!!

 ブロックとかされないよな?


『いつも悪口を言いながらも俺の仕事を手伝ってくれる』

『沙織のそんなところに惚れたんだ』

『俺と付き合ってくれ』


 よし、言い切ったぞ。


 ちなみに好きとか惚れたとか付き合って以外は本当のことだ。


 フラレたらエイプリルフールでした、って言おう。


『少し待って下さい』


 あ、時間置くのか。

 普通にごめんなさいでいいんだけどな。


 まあいいけど。


『できれば今日中に返事貰いたいかな』


 エイプリルフール過ぎたら怖いからな。



◆◇◆◇◆◇



――――――――――――――――


『少し話いいか?』


『彼氏はいるのか?』


『実は沙織のことが好きなんだ』


『いつも悪口を言いながらも俺の仕事を手伝ってくれる』


『沙織のそんなところに惚れたんだ』


『俺と付き合ってくれ』


―――――――――――――――――


「……えへへ♡」


 私はベッドの上で一人悶る。

 興奮が収まらないから抱きまくらを取り抱きつく。


「せんぱい〜♡」


 抱きまくらには先輩の姿がプリントされている。

 私の宝物。


 壁には至るところに先輩の写真私のコレクションが貼られている。

 ごはんを食べている写真。

 笑っている写真。

 私服姿の写真。

 体操服姿の写真。

 水着姿の写真。


 写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真。


「もう、こんなのいらないや。あ、でもでも可愛いし捨てるのはかわいそうだよね。やっぱりこのままでいいかな。あぁ、やっと本物が手に入る♡先輩好き好き♡大好き♡」


 まさか先輩と両思いだったなんて。

 うれしいなぁ。


「これからは私だけのせんぱい♡」

 

 だからまずはあの女をなんとかしないと。

 先輩の幼馴染かなんなのか知らないけどいつも先輩にまとわりついてるあの害虫。

 たまたま先輩の幼馴染になれただけで何調子乗ってんの?

 先輩が優しいから傍にいられてるってことわかってない。

 先輩も邪魔だって言えばいいのに。

 まあ、そんな優しいところも先輩の良いところなんだけどね。


「はぁ、やっぱり私がしなきゃね。私がせんぱいのことを守ってあげますから。せんぱいは何もしなくていいんですよ?ずっと私の傍にいてくれるだけで」





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