第15話 復讐

目の前に転がる黒龍の首を、アイの虚ろな眼が見下ろす。

アイは手元に電磁砲を力なくぶら下げながら、仲間の仇を取ったことに何の喜びも感じいれられない心の鼓動にため息をついた。


テッドの裏切り、いや、策略に嵌まった日から3年がたつ。

アイは1人、復讐を誓い敵討ちを目論見ながら、放浪の旅に出ていた。


道中、戦争の残骸が襲い掛かる度に、討ち続け、武器を奪い、携帯食料を奪い、生き延びていた。


アイは自身の汚れた足元を見下ろしながら、テッドの居場所はどこかと曇る脳内で思考を走らせるが、いずれも仲間の死体の顔が浮かぶばかりだ。


鼻の中にこびりついた血と煙硝の匂い。

血に濡れた銃と身体。


それらの残酷な感触だけが脳裏に沁みついている。


電磁砲がバッテリー切れの合図のサイレンを挙げると、アイは手荒く床に電磁砲を投げつける。


黒龍の腹を破り、エネルギー核を探り出し、内臓から抉り取る。

黒龍は悲痛な叫びをあげ、最後の息を力なく吐き出した。


黒龍のエネルギー核を電磁砲にはめ込み、虚空に向かって打ち上げる。


一線の稲妻が地から天に向かって、電磁砲の先から放たれる。


周辺の残骸は恐れおののき、アイから遠くへ逃げ出す。


この銃が、いつかボスに。


心臓の鼓動が復讐の音をはやく、はやくさせる。


ウォン、ウォン、ウォン。


遠方の彼方から近寄るステルス飛行機がかすかに見える。

右翼と左翼の色違いのサインを観て、メッセージを読み取る。


近くに着陸する。射撃はするな。


アイは銃を下げ、ステルス機の着陸地点へと歩みを進めた。

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