第6話 犠牲

 チャーリーの背中はサリーによって貫かれ、そのままうつ伏せに倒れた。

 アイはその一瞬の出来事に動揺したが、咄嗟にサリーの身に飛び掛かり、重機関銃を彼女の手元から奪い去って、その矛先を彼女に向けた。

「サリー、何の真似よ!?」

「違うの、アイ!何故か分からないけど、身体が勝手に動いて」

 アイは、その鷹のように鋭い目と共に、そのセリフの真偽を伺うように手元の重機関銃の銃先を彼女の胸に突き刺した。

 サリーは自身の銃で打ったチャーリーのうつ伏せの姿を見て、その懺悔の意からか、涙を目にいっぱいに浮ばせている。どうやら嘘の演技ではないようだ。しかし何故ー

 アイの思考回路は瞬時にその脳内を駆け巡り、サリーの事実的な敵対行為に『ある可能性』を見出した。

 アイは彼女の背後に素早く回り込むと、彼女の首の後ろの電子回路接合部に『AES型USB』を差し込んだ。サリーは白目を剥き、

「何をcctwいrs」

と意味不明な音声を発する。

「暫く眠るといいわ」

 アイはそう言いながら、全身の力を失ったサリーの身体を支え、首元に刺さっているままの『AES型USB』を抜き取った。

 アイが見出した『ある可能性』とは、サリーが空気中の電子パルスに侵され、敵による一時的なハッキングを受けているということだった。

 『AES型USB』とは、『新型HB8号機』の電子接合部に突き刺すことで、機内のコンピュータシステムの暗号セキュリティを復旧させるものだ。

 アイは自身の勘が見出した『ある可能性』が当たっていることに安心しつつ、ハッキング元、つまり敵側にこちらの位置情報が渡っていることを確信する。

 何故なら、ロシア軍事基地方面の高空に浮かんでいる、巨大な黒龍型操行機体が、アイたちの方へ突っ込んできたからだ。

 それに加えて、先程の銃声を聞きつけた付近の『PNー3y』達が、一斉に銃弾を浴びせてくる。

 アイはサリーとチャーリーを引っ張りながら、側のコンクリート建物の陰に身を隠して、現状況報告をする為に無線機を取り出した。

「こちら2班、緊急事態発生。緊急事態発生。同班2名の内、1名が重症。他1名が無力化。繰り返す、1名が重症、他1名が無力化。オーバー」

「了解。2名の内、生存確率の高い者を連行・合流せよ。繰り返す。2名の内、生存確率の高い者を連行・合流せよ」


 





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