第3話 依頼
本日の供食のジャガイモたっぷりスープが配膳されたアイは、自身のスープとビリーのものを見比べて、ふっとため息をついた。半人兵器に供給される料理の量は、それぞれの依頼任務達成度に基づく評価によって決まっている。
「なんだ~?やっぱり悔しかったのか?」
アイはビリーの言葉に不快感を増幅させながら、その苛立ちをかき消すようにスープを口の中にかきこんだ。すっかりと頭に沁みついているコンソメの風味と、ジャガイモのほのかな甘みが更にその動作をはやくさせ、アイは速攻で完食した。それとは対照的に、ビリーは光悦な表情で、実にゆっくりとその風味を堪能するように、一口一口に時間をかけて味わっている。
「依頼後の飯はうまいな~。実にうまい。しかも、お前のその顔を見ると何倍にもおいしく感じるな~」
「食事中は口を慎め、ビリー」
背後からのテッドの声。ビリーの顔が蒼白となり、手元のスプーンがテーブルに落ちる。次の瞬間、椅子を飛ばすような勢いで立ち上がると、振り向きざまに最敬礼の姿勢をとった。
「リーダー、いつからそこにおいでに…」
「そんなことはどうでもいい。2人とも食事中のところ悪いが、次の任務について話がある。」
テッドはビリーに最敬礼の姿勢を直させる。ビリーがアイの方を見ると、彼女はとっくに最敬礼の姿勢をとっていたようだ。アイはしてやったり顔でビリーの顔を見返した後、すぐにその表情を緊張させてテッドの方に向き直した。
「今回の任務、実にご苦労であった。2人には北部のナノ粒子散布区における対PM用新型電磁砲の試用と、低警戒LVのノーマルロボット『PMーⅢ』の排除を頼んでもらったが、その見事なはたらきに感謝する。」
公安の裏軍事勢力「ALL I DO」が国家警察機関の警部用ロボットを排除するという行為は表向きには裏切りの行為に見られるが、その真の狙いは、国民にその身の危険性を警察保護下に誘導するための扇動にすぎない。それは、国民が自分たちの存在を脅かすものを自らの脳内で作り上げさせるように、メディアがあらゆる技術を用いて偏向報道するという行為と同じだった。
「次の任務ではロシア軍の偵察にいってもらう。詳しいデータは後で送る。それまで英気を養っておけ」
「了解っ」
テッドは2人の潔い最敬礼を見届けると、颯爽とその場を立ち去った。
「またロシアか。」
ビリーが席に着きながらうんざりしたように言った。
「仕方ないでしょう。私たちが北でなにをしているのか、その情報が国外に漏れている場合、今回、その尻拭いをするのは私とあなたよ。ロシアで動きがあれば、必然的にその可能性を確かめなければならないのは当然。」
「食事中は汚い言葉を慎め、アイ」
ビリーがテッドの口調を真似た。
「でも、私も同感よ。偵察といえどあそこに行くのは気が引けるわ。」
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