第2話 アジト

 アジトの扉が開くと、アイとビリーを、巨大な本棚部屋と、片足立ちのヒト型ロボット「キュー」が、持ち場の椅子を立って出迎えた。キューはアイが討った、警備体制レベルの低い領域に用いられる警備雑務用ノーマルロボット「PMー3x」と全体的に類似したヒト型ロボットである。異なるのは、後者のPMー3xが白と黒の色、即ち国家警察機関のモチーフを表しているのに対して、前者のキューは全身黒色に覆われている。黒は「ALL I DO」の象徴で、組に属する軍備品、装飾品、ロボットの全てが黒色に覆われており、人間は人体の一部に「B」の1文字を刻むことが義務付けられている。キューは細長い身体を支える1本の足を器用に動かし、アイとビリーの元に来て、その大きな1つ目で彼らの全身の身体をスキャンして

「異常なし。地下本部への通行を許可する。」

と、腹部にむき出しのスピーカーから男性の電子的な声を鳴らした。一度外部の空間に触れたモノたちは、外気に含まれる微細なナノ粒子物によるバグを起こしている可能性がある為、内部に入る前にはそのバグの有無をキューによって検索されなければならない。キューが通行を許可すると、一部の壁際の本棚が移動し、地下本部に通じるエレベーターの扉が露になった。キューは持ち場の椅子に腰を下ろし、読みかけの古本の読書を再開した。

「相変わらず古臭いアナログロボットだな」

 ビリーは首のうなじの小さな電子回路接合部をさすりながらつぶやいた。

「首に差し込むだけでに脳内に刻まれるデジタルデータと、先人の遺した紙媒体の文字から得られるアナログデータ、どちらが貴重かと言われれば、私は後者ですが」

 キューは冷めた対応をした。

「はいはい、はやく報告にいこう」

 アイは扉を素早く通り、それにビリーも続いた。エレベーターは地下本部のB1からB27階までの全てのフロアに通じている。アイがエレベーターのB5のボタンを押すと、エレベーターは緩やかな下降を始めた。B5のフロアに着くと、巨大なフロアが2人を迎えた。事務局スペースのヒト型ロボットに取り次ぎを頼み、本部への帰還報告の旨を伝える。その報告は、地下本部の全人員のデータを集積するデータベースに加えられ、このデータベースはAIによって、全人員の配属、指揮系統を、戦闘・医療・食事・工務・諜報の5つに至るまで、その一切の情報管理がなされた。

 

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