第12話 乾杯と看破

「おもしろかったでぇ。おめぇらまた来いのぉ!」


ナルミアーナはかなりご機嫌らしい。立場も忘れて同じステージに立つぐらいなのだから。

これにはマギカルの面々も嬉々としていた。


「タダオ。ありがとのぉ」


「いえ、お嬢様のためならば」


「おめぇらもじゃあ! おめぇらが家臣でワシぁぶち嬉しいでぇ! 今夜ぁここまでじゃけどのぉ! 飲みてぇやつぁ朝までも昼までも飲んでええからの! 明日ぁ全員休みじゃあ! ワシぁちぃと疲れたみてぇなから先に寝るけどのぉ!」


ナルミアーナが退席すると聞いて残念そうな顔を隠しもしない家臣達。しかし最後だけは整列し、ナルミアーナを見送った。

そんな後ろ姿を見守るタダオ。追随するウニミ。


「さあお前達。お嬢様はお休みになられたが宴はまだ終わっていない。お嬢様のためにもまだまだ盛り上がろうではないか」


普段は堅物執事であるタダオにしては珍しい物言いである。場はナルミアーナとタダオの言葉で再び盛り上がる。マギカルは予定を変更し演奏を再開した。そして家臣達は歌い踊った。




「お嬢様。湯にお浸かりになられますか?」


「おお。そんでもう寝るけぇの。ウニミ、おめぇもはあ戻ってええ。後は寝るだけじゃけぇの」


「かしこまりました。お嬢様がベッドにお入りになるのを確認したら戻ります」


「おめぇも頑固じゃのぉ。ほれ、もういぬれ」


帰れと言いたいらしい。そう言ってナルミアーナは浴室へと消えていった。


「はぁ……」


ウニミはため息をひとつ。どう考えても、今日のナルミアーナが無理して元気に振る舞っているようにしか見えないからだ。タダオが率先して場を盛り上げようとしているのも同じ理由からだと見ていた。

ウニミは仕方なくナルミアーナの私室を後にした。




そして、いよいよ婚約披露パーティーの日がやってきた。会場は王宮。王子たるトシスイのテリトリーである。

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