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「それで、これはどういうことだ」
街から離れた森深く。基地と呼ばれるその場所で黒師の声が響いた。
怒りを隠そうともしない黒師は、自らの身体を掻き毟るように爪を食いこませながらナコを見つめる。
「はい。どうやら冒険者の手によって魔物の大移動は退けられたようです」
ナコは資料を手に黒師と歩きながら報告をしていた。
その資料に書かれていたのは、儀式に必要な材料についてや納品書。そして、最近の作戦の結果についてだ。
そこには、ルーと呼ばれる冒険者が魔物の大移動を退けたと記されていた。
「我らが主の奇跡を用いてまで集めた魔物だぞ? そう簡単に倒せるはずがない!」
「その通りです。冒険者達は魔物を倒したわけではないようですね」
仮面の奥から見つめる黒師の瞳がギョロリとナコを見つめる。
「つまり、何が起きたと言うんだ」
「はい。どうやら、魔物は恐怖に駆られて逃げたとか」
「恐怖、か。……たしかに我らは魔物を導いただけだ。倒す必要はないということか。しかしどうしたらそんな恐怖を生み出せる? 相手が司るのは【恐怖】ということか? それとも魔道具、呪具の力か? くそ、何もわからないのでは意味がない!」
黒師は苛立ちのままに壁を殴りつけた。
「なぜだ。なぜ、ただの冒険者風情が伝説の再現をできるのだ。これで敵を炙り出すはずだったのだぞ」
ぶつぶつと声を漏らしながら黒師は身体を掻き毟る。
その様子を横目で見ながらナコは呆れたように深く息を吐くと、資料についての説明をするために黒師と共に会議室の中へと踏み入れた。
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