?????(3)

「一体昨晩何があった! 何故こんなに白徒が減ったのだ!」


 王城の地下牢にて、黒師の叫びが響く。眠りから目覚めた黒師がナコからの報告を聞き、絶叫したのだ。


「奇妙な男に出会い、白徒のほとんどが殺されました。男はこれを貴方に見せろと」


「何だこれは……。いやまて、この力は?」


 フェクトから渡されていた腕輪を黒師に渡したナコは下を向き押し黙る。内心、腕輪を手放せたことにナコは深く安堵していた。白徒の命が宿った腕輪など気味が悪くて仕方なかったのだ。


「なんと……。我らが主にも匹敵する強力な力をこの腕輪から感じる。触れてはならぬものに触れてしまったということか。姫はその男の場所に?」


「はい、現状はそうかと」


 ナコの言葉に黒師は小さく唸ると、頭を抱えた。ガリガリと頭を掻きむしり、黒師は唸りを次第に叫びへと変えていく。そして、唐突にぴたりと動きを止めた黒師は仮面の奥からナコを鋭く見つめた。


「今回の失敗は仕方ない。だが姫は何としても必要だ。その男と戦うために、全兵力を集める。ナコ、基地に白徒共を集めておけ」


「……基地とはどこでしょうか」


「なに? 伝えていなかった? また意識の混濁か? あぁ、くそっ! 地図と他の白徒との通信魔道具を渡す。後は任せた」


 半狂乱に身体を掻きむしりながらナコを自らの部屋に案内し、黒師は必要な物を全て渡すと寝台に倒れこむ。呪詛のようにぶつぶつと呟きながら黒師はただひたすらに身体に爪を食いこませていた。


「では、任されました」


 ナコはその様子をしばし見つめ、冷たく言い放つと部屋を出ていく。手に持った通信器具と地図を少し眺めて、ナコは疲れから深く息を吐いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る