第12話「エピローグ」


「ふん、ふんっ……」


 小鳥の囀り、燦燦と照り付ける日光……そして、いい香りのコーヒー。

 朝の風物詩と言っても過言ではない3コンボに囲まれた環境に身を置きながら俺は今日も今日とて朝ご飯を作っていた。


 燦燦と照り付ける太陽と言われれば俺は陰の付いた命吹き込む巨乳のイラストを思い出す。


 小鳥の囀りと言えば、なぜか子猫ちゃんの喘ぎ声を連想しちゃうし、なんならことりさんも朝からセっくに励んでいるのだろうか——なんてことだって考えてしまう。


 きっと、俺に彼女が出来て、何もない朝の日光を浴びながら腰を振るのだろうと未来を想像して物思いに更けてしまう。


 鳥だけに朝チュン。

 いやはや、朝ちゅん、ちゅんちゅんなーんて。


 俺はそんなくだらないことを頭に浮かべながら鼻歌交じりに朝食を作っていた。


 今日の朝食は俺の十八番。

 フレンチトーストだ。


 この料理は俺が中学生の頃から試行錯誤を繰り返していて、メレンゲと生クリームを使っている。カフェで食べれるようなふわふわトロトロのフレンチトーストが朝から食べられるために澪からは大変好評である。


 まぁ、俺からしてみれば澪の顔だけ眺めていられればご飯三杯は軽くいける。ぺろりんちょとな。


「よし、こんな感じかなっ」


 日を止めて、焼いていたフレンチトーストをフライパンから取り出し皿に盛りつける。


 ダイニングキッチンから、皿を持って歩いていき、食卓に並べていく。いつもよりも色鮮やかで、どことなく舞い上がりそうな雰囲気を醸し出していて——思わず自分が女の子にでもなったかのような気分だった。


 いやはや、今日は気分のいい朝ですわね、お嬢様。おほほほ……なーんて。やっぱりエプロンしていると女心も分かるってわけよ。


 というわけで、後は我らが義妹である……いや、こんなよそよそしく呼ぶのはよそう。一人の女の子である澪を起こしにいくとしようか。


 




 二階に上がり、澪の部屋の前で立ち止まる。まずはノック――なんて普通なことをする前に、まずは一回。耳でも当てながら中の様子を聞きましょか。


 俺は扉に耳を当てて、澪の様子を窺うことにした。


【えっとぉ……今日は数学と物理、古文と……英語表現かなぁ】


 どうやら澪は中で今日の授業の準備をしているようだった。俺的には朝オナを期待していたのだが、これもこれで素でいいかもしれないな。



 エロの中にエロスがあるわけではない。


 普段の生活の中にエロスがあるのだよ。



 そんな台詞を思い出した瞬間だった。


 とまぁ、とりあえず澪の様子は悪くはなさそうなので呼び出すとするか。


 ノックを二回して、扉の向こうから澪に「ご飯できたよ」の一言。


「今行く~~!!」


 するとすぐさま返事が返ってきて、俺は一足先に食卓に腰かけたのだった。








 ご飯を食べて、学校に行き、講義を受けて、俺は澪を迎えに高校まで向かう。


 一応、今日は二人で例の神社をお参りに行くことになっているのだ。別にどくだんいみがあるわけではない。あの後、俺たちはデートの帰りに色々と話したのだ。高校を卒業するまでは兄妹でいる事。


 そして、それが終わればまだ気持ちが残っているのならお付き合いしようと約束したこと。


 それを含めて、きっかけをくれたあの神様には一言言ってやりたいのだ。


「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん、どうした?」


「こんどさ、数学教えてくれない?」


「数学か? 別にいいけど、俺の教えなんていらないだろ? 澪、結構勉強できるしさ」


「そうでもないよ、私文系だからね」


「あはは。まぁ、いいけどさ」


 いっそのこと保健体育の勉強でも教えてやろうか?

 なーんて、俺は童貞だったんだ。


「あ、今エッチなこと考えたでしょ?」


 どうやらバレていたらしい。


「うぐっ」


「お兄ちゃんってほんとに変態だからね、そんなんだから女の子に振られちゃうんだよ?」


「な、どうしてそれを!?」


「いやぁ、お兄ちゃんが告白した女の子って私の友達のお姉ちゃんだったらしいんだよね。それで普通に耳に入ってきた感じで……特徴聞いたらお兄ちゃんだったからさ」


 ジト目を向けてくる澪。

 生憎と、間違ったことは言われてないため俺は何もできないでいた。


「……めっそうもありません」


「あはははっ」


 にこやかに笑われる兄。いやはや、俺が最強のドMなら最高にイイ羞恥プレイのシチュエーションだったが俺はどっちかと言うとSだ。しょんぼりしてしまうよ。


「まぁ、でも」


「ん」


「お兄ちゃんを好きなのは私一人でいいもんね?」


 と、どうやら俺の妹は策士らしい。

 いたずらな笑みを向けて、小悪魔チックに微笑む彼女に俺は少し頬が熱くなった。






 そんなこんなで俺たちは無言で手を合わせて、感謝を述べる。別に大したことをされたわけでもないが、何かされたらしっかりと感謝するのがうちの家の家訓だ。


 こういう積み重ねはしたほうがいいだろう。


「よし、それじゃあ帰るか」


「うんっ」


 結局、あの電波少女からの交信はなく、俺たちは家に帰ることになったのだった。














――――――そして、またどこかで二人の恋路の行方を見守る神様が、いるのであった。







FIN




 


 

 


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