第10話「神様はいつでもどこでも自分勝手」


 おぉおぉぉぉぉおおおおおおおお‼‼‼‼


 これじゃ! これじゃよこれ‼‼‼

 これしかないのじゃよぉおお‼‼‼


 妾が求めて求めて求め続けてきた恋愛ラブコメはこれなのじゃよ!! こうでなくては、やはり妹と仲の悪い兄など異論認めぬ。やはり持ちつ持たれずのこの関係! 軽い駆け引きを二人の間で展開していくようなデートを妾は見たかったんじゃ!


 普段高校へ行く時に比べておめかしをしっかりして、兄とのデートだと言うのに着飾った服を着たあの娘。妾の神社に「本音を前面に出したいのです」と一人寂しく願ったあの日から見違えたように積極的じゃ!


 まぁ、妾が改変すればこの年の娘など造作もないわな、かか‼‼


 とはいえ、それに比べて兄の方は……まったくお洒落の欠片もないわな。なんじゃあのパーカーにアニメTシャツ、ジーンズは着ているけど……あれはちょっとゲスぬわ。


 ひとまず、あやつに変な服を着てもらうのはやめてもらうか。我らが神の思し召しをあやつに仕向けてやろう。背は大きい癖に、顔もそれなりにいいんじゃから、もったいないわい!





 


べっぴんさん、べっぴさん、一人も飛ばさずしてぺっぴんさん。澪が俺の腕を引っ張りながら連れてきたのは駅前デパートの5階のすべてを占める有名チェーン店の服屋さんである「GUU」だった。


 男物の服から、女物の服まで、どちらかと言えば女性が着るような服が多いがカップルで来るなら確実にここ! って感じにプライスも品ぞろえも最高なお店である。


「やっぱり、最初はここよね!」


「そ、そうなのか?」


「えぇ、最近少しだけ大きくなってきたしっ……これが色々と新調したかったの!」


 にへらと笑みを浮かべながら幸せそうに言う彼女に俺も思わず微笑み返す。我が妹、さすが可愛い。いずれ誰かのお嫁さんとして家を出ていくのが惜しいくらいだ。


 まったく、俺はこいつの兄なのだ。デートはさんざん楽しんでやるが俺としてはあの自称神様にしてやられたりなどしてやるまいぞ!


 とはいえ、自称神さまこと電波少女は俺を監視しているようだし、演技くらいはしておいてもいいだろう。あいつ、意外に馬鹿そうだし……っ。


 この気持ちの疼きも俺なら抑えられるさ!


 義妹には手を出さないのが俺のポリシーだからなっ!


「ね、ねぇ……聞いてる?」


「ん、あぁ! すまん、こっちの話だよ」


「もう‼‼ 私が目の前にいるのに、他の子の事でも考えてるのっ⁉」


「違うって!! 俺の目には澪しか映ってないよぉ」


「……ほんとに?」


 涙目、上目遣い、そして頬のふくらみ。


 加えて、いつも以上に露出している澪の胸元の魅惑の谷間!!


 3コンボから4コンボで俺の目が離れない! いやはや最高だな、我が義妹はやはり最高に可愛いな!!


「っねぇ、どこ見てるのよぉ!」


「え、あぁ胸ってちが!!」


 おっとこういう時に限って本音が。


「っお兄の馬鹿!!」


「がぁっ!!!」


 ぱちん! 澪のストレートビンタが俺の右頬に炸裂! 大ダメージ! 案外大きかった音に周りを歩いていく女性客やカップルが物珍しそうに俺たちを見ていた。


「もう‼‼ 変態、ばか!!」


お顔が真っ赤! 昨日は一緒に寝た癖に、胸は嫌なのだろうか。そんな本音が飛び出そうになったが今度はしっかり口ごもった。


「ご、ごめんよ……いつだって澪の事見てる証拠だから許してよぉ」


 秘儀、兄の盲目発動!!


 すると、怒っていた澪の顔がだんだんと恥ずかしそうな頬の赤みに変わっていき、再び上目遣いでこう言った。


「ほ、ほんとにぃ?」


「あぁ、もちろんさ!!」


「うへへぇ……」


 今度は顔を蕩けさせている。

 我ながらちょろいな、澪は。ほいほいと変な男に連れて行かれないかが心配だ。


 よし、とりあえず、餌付けでもしてみるか。


「今日はお兄ちゃんが何でも買ってあげるから、澪の好きな服を選んでもいいぞぉ」


「ほんと、お兄ちゃん!?」


「あぁ」


「ありがとぉお! じゃあ、買おう!」


 そうして、女性服売り場へ走っていく俺たち。



 ん、あれ? 俺ってもしかして……澪に対してかなり誘惑していないか?








 へへっ、よぅし、これであやつは付き合ったも同然だな。今日はもっといいシチュエーションを選んでくれるわい!


 かかっ‼‼



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