第7話「ぺったんこ等価交換」


「……えっ。澪の方もっ?」


「そうじゃ、あの子娘も私のところに来て願いおったぞぉ」


「ま、まじか……」


「まじじゃ。髪は嘘はつかぬ。貴様ら人間のような矮小な存在とは違ってのぉ」


「ぺちゃぱいに言われても刺さりませんね……おっと本音が」


「貴様ぁ!!」


 これはこれは、目の前に佇むぺちゃぱい様は何とやらギャーギャーと喚く子猫のように俺のお腹をポコポコと叩いていた。神様の割には力が弱い。やっぱり電波少女なのかとも疑ってしまうものだ。


 って、そうじゃないそうじゃない。話がずれまくったがとにかく今回の出来事は色々と重なり過ぎてしまったらしい。俺がこの電波少女——いや、自称神さまちゃんに聞いたところによるとあの日、夕方にお参りする前の時間に澪が先に来ていたらしく、本音を言えるようになりたいと願ったらしい。


 いやぁ、本音ねぇと。

 俺の義妹はどんだけ変態だったのか、正直もしもあの性格のまま爆発していたらどうなっていたのか分からないな。


 一緒に風呂まで入って、裸エプロンで出迎えて……女の子の性欲はよく分からないものだ。


「ったく……あの健気な娘をもっと見習ってほしいのぉ、兄よ。あのひたむきさに妾は感動したんだぞっ」


「変態じゃないですか……」


「貴様、乙女心が分かっておらぬようだな。妾のような崇高な存在も含めて、礼儀知らずもここまで来ると憐れじゃな」


「憐れって言うなよ。良いじゃないか、俺の方は家族に手を出さないように消してもらったんだぞ? 真っ当じゃないか」


「ははーん。そう言うので悲しむ者もいるって言うのに。数年前のお前の行動で小娘の人生は大いに変わったのだ。だからこそ、ツンデレをこじらして、今ではああなっている。純愛とは思わぬのか」


「俺も好きだけど……家族に、妹に手を出すのは違うって」


「ほう。貴様、巷では変態紳士と呼ばれているようだな?」


 へ、誰がそんなことを‼‼

 この自称神さまちゃんの講釈に耳を傾けているとそんなことを言いやがってきた。確かに俺はそれを自称しているがチンあいつくらいしか知らないはずだ。


「まぁ、神は何でも知っておる。そう不思議なものではないっ」


「おい、自称神様、俺に盗聴器でも付けたんじゃ!?」


 このぺちゃぱい神様め、まさか悪徳宗教の教祖様とかだな? 俺に変な噂が流れていることを伝え、それを治すためなら私を崇めよとかそういうやつ!! っち、俺がいつか巨乳教でも立ち上げようとしていた矢先、こうもぺちゃぱいの刺客を送り込んでくるとは中々やりおるわ!!


「貴様……いい加減懲りろ」


「おいおいおい、お前がジト目を向けるんじゃねえ! ぺちゃぱい!!」


「だーれがぺちゃぱいだ!!」


「当たり前の、至極当然を言ってるじゃないかぺちゃぱい‼‼」


「かぁ~~怒ったぞぉ!! 貴様がそこまで言うならこの状況も直してやらんぞぉ!!!」


 ってそれはダメだ。マジで駄目。


「すみませんでしたっ!!」


 俺は高速、いや神速土下座を繰り出した。

 さぁ、ペチャパイはどうするっ?


 そんなパケモンの戦闘メッセージが俺の目の前には広がっていた。


「……謝るのはいっちょ前じゃな。貴様、そこは尊敬するぞ」


「な、なんなりとっ——というか何とかしてくださいぺったんこ様‼‼」


「妾はリストルテニーナじゃ!! 神様じゃ!! ぺったんこではないわい、どっちかで呼べっ‼‼」


「じゃ、じゃあ……リストルテニーナちゃんで」


「意地でも神様とは呼ばんのじゃな」


「だって信じてないですし、これでも俺は理系なんでねっ‼‼」


「……まぁ、いいが。とにかくだ。直してほしいんだろ? この状況を」


「そ、そうですね!」


「直すことは簡単にできる。妾は全知全能、すべての願いをかなえることができる」


「じゃあ——」


「しかし、そう簡単に願いは叶えぬ。妾は妾がいいなと思った願いしか叶えぬ。そう言う風に考えているのだ。だいたい、生意気な貴様の願いなど叶えぬ」


「っ……だって、俺は親には神様なんていないぞと英才教育を受けて」


「たわけ」


「んぐ……じゃ、じゃあどうすれば!!」


「どうすれば? まずは貴様は何の願いを取り下げたいのだ?」


「お、俺のは良いにしても……澪のはっ」


「身勝手じゃな。よし、分かった」


「ん」


「貴様に義妹を好きになる気持ちを戻してやろう。そして、その気持ちの思うがままに義妹と交際をするのじゃ、そうすればあの性格、貴様の腐った根性、すべてをいいものにしてやろう」


「——っんな!!」


「異論は認めぬ。では、さらばじゃ」


「ちょ、ま——」


 俺がすぐさまペチャパイ様に飛びつこうとしたが彼女はキリになって消えていき、気が付けば意識を失っていた。


 

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