第6話「神様はぺったんこ」


「か、神様っ……」


「そうじゃよ、妾がこの地域を統括する神様じゃ! 名前はリストルテニーナ! ちなみにこれでも日本の出じゃ!」


「え……っ」


 彼女、いや自称神さまのぺちゃぱいの名前はリストルテニーナらしい。日本の出とは言っていたが、そんな神様の名前は生れてこの方聞いた事がない。


 何が何だか分からないし、ていうか神様って人の体をしているのか? これでも腐っても理系である俺はその事実と相反する事象に目を擦りながら頭を悩ませていた。


 それに、この神様胸が乏しいし。


「おい、貴様! 何か失礼なこと考えているだろう!!」


「え、いやいやまさか!! 神様の胸がぺちゃぱいだなんて何一つ思っておりませ――え?」


 あれれ、口がおかしいなぜか言葉すぐに出てくる。


「おい、貴様‼‼ ほんとか、ほんとなのだな!! 妾のこの崇高で素晴らしい身体の事をぺちゃぱいなどと言っておるのか!!」


「ま、まさか言って——いる!!」


 あれぇ!? さっきから思ったことがどんどこどんどこ口から洩れるんだけど!? 


「妾の前では嘘はつけんのじゃ!! 貴様、ほんとに馬鹿にしておるのか!!」


「う、嘘がつけない⁉」


「そうじゃ、私は本当の神様なのじゃぞ。嘘など神の前で付けるわけがない! 創造主に失礼じゃと思わぬのか?」


「別に——ってあ⁉」


「おい、馬鹿にしてるなぁ、絶対に!」


「してます!! これはもうきっぱりと単なる電波少女かなぁって!」


「……貴様、そこまで馬鹿にしてくるのは逆に清々しいぞ」


 なぜか今度は神様らしい少女が憐れな目で見つめてくる。可愛そうにと言いながら。


 って、これはどういうことなのかさっぱり分からない。ここは自称神さま少女に答えてもらうしかないな。


「——そ、その……自称神様!!」


「っ神様じゃ!」


「か、神様……神様って怒ったりするのかな?」


「……頼みごとのあるような人間とは思えないぞ、貴様」


「は、はいっ!! すみません!!」


「んで、頼み事は何じゃ?」


「この状況は一体全体何なんですか!!」


「この状況? 妾のことか?」


「は、はい! そうです!」


「別に理由はない。気になったから中から出てきただけじゃ」


「中とは?」


「神社の中、それだけじゃ」


「……ぺちゃぱいっ子を神社が飼っているのかぁ」


「貴様ぁ!!」


 さすがに言いすぎたせいか神様少女が涙目になっていて、俺も馬鹿にするのはやめることにした。


「……ほんと、貴様のような人間は初めてじゃぞ、まったく」


「あはは……それはそれは」


「褒めてないわい!!」


「あれ、あれれ……」


「はぁ……もう、貴様と話すのはめんどいのぉ。せっかく出てきたって言うのに……お願いを言うんじゃなかったのかのぉ」


 そこで、俺はハッとした。

 そう言えばだ。俺はこの電波少女と楽しく話すために来たのではなかった。妹と俺の関係の事で言いに来たのだ。


「あ、そのっ——ぺちゃぱっじゃなくて、神様!!」


「……なんじゃ」


「お、お願いを言っていませんでしたので、言ってもいいでしょうかっ」


「うん、なんじゃ?」


「どうして妹があんな性格になって、俺が妹に魅力を感じなかったのか教えてくださるとありがたいです!!」


「そうじゃな……」


 そうして、神様による弁明釈明が始まったのだった。

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