第4話「ブラコンになっちゃった!?」


 いやはや、それにしても日が暮れると肌寒くなってくる。俺の皮膚が皆いやんと膨張して鳥肌に完全変態しちまっている。


 そう言えば、変態と言えばエッチな目の変態を思い浮かべがちだが、生物の形態、状態、生態変わることをさすらしい。その点で言えば、俺の変態紳士は案外悪い使われ方じゃないようにも思われる。むしろ、特別? って感じがしてかなりいいな。うん。


 それに変態は変な態度を略しているかもしれないし、可能性は無限大だな!


 そんな下らないことを足りない頭をぶるぶる回して帰路に着く現役大学1年生。偏差値はこれでも60は越えている。まぁ、自画自賛は趣味じゃないから自慢はここまでにするけど、馬鹿とは言わないでほしい。馬鹿も天才も紙一重、らしいけど。


 とにかく家に帰ると俺は思わず口をあんぐりと開けてしまったのである。


 別に帰ったら家が無くなっていたとか、帰ったら俺の部屋に美少女がたくさん住んでいたとか、俺の家だけサキュバスの風俗になっていたとか——そう言うことがあったわけではない。


 何が起こったか、それはいかにも単調で、単純で、それでいて驚愕できるような——非現実が目の前に広がっていた。


「————な、なに、何をやられて……おられるのでしょうか」


 俺は思わず、敬語を口にしていた。あまりにもおかしな姿に唖然として思うように口や体が動かない。


 まるで、メデューサにでも見つめられた気分だ。石にでもなってしまったんじゃないかと目を疑った。


 なぜなら――――義妹が下着にエプロン姿で玄関に座りながら、俺の方を上目遣いで少しだけ色っぽい視線で見つめていたからだ。


 状況が掴めない。

 全くもって意味が分からない。


 そんな中、俺は足りない脳みそで考える。


 しかし、答えなど出てこない。


 俺の可愛い可愛い義妹は、俺の好きで好きで仕方がない義妹は俺の事が好きだった。


 でも絶対に態度には出さなかった。それが今、まさに、全面的に、今までの溜めてきたものがすべて爆発したかのように表れまくっていた。



 すると、澪が笑みを浮かべ、人差し指を顎に当てながらこう訊ねる。



「お兄ちゃん、私、寂しかったんだけどぉ」


「さ、寂し……え」


「もしかして、他の女と遊んでいたんじゃないの?」


「他の女ってまさか……俺がそんなことするわけっ。っていうかいつも通りじゃないかぁ~~」


「私は寂しかったのにぃ……うぅ」


 急に涙目になり、ブラコン魂をゾクゾクとさせられた俺は彼女に駆け寄る。

 その瞬間、俺は澪に手を引かれてぎゅっとその胸の中へ。


 もきゅっ。ふわっ。


「っきゃぁ」


 小さな声が聞こえるのと同時に、俺の鼻からいい匂いが香る。すると目の目には澪のつけていたエプロンがチラリと見える。


 そして、柔らかい何かが俺の鼻からほっぺまですべてを覆い包むように優しく触れていた。


「あぁ……お兄ちゃん」


 ギクッと背筋が震える。

 この感触を俺は知っている。この前、たまたま澪がソファーで寝ているところを見てしまって魔が差し、手を触れてしまったことがあるから知っている。


 これは明らかに胸だ。

 俺の義妹の、澪の美乳だった。


 にまぁっと笑みを浮かべて、彼女は俺の顔の方に唇を近づけ一言。


「今日さぁ、ご飯よりも先にぃ……お風呂はいろぉ?」


「お、お風呂!?」


「一緒にだよぉ~~、澪の事、こんな風にさせたんだからぁ……も、ち、ろ、ん――いいよね?」


「……」


 ドキドキして、頭がおかしくなっていく。

 そんな甘い義妹の言葉にドヤされた俺は——いつの間にか、洗面台に立っていた。


「ひゃい!!」



 どうやら俺の妹はツンデレブラコンからデレデレブラコンにジョブチェンジしてしまったらしい。

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