第2話「変態紳士VS変態紳士」


 さてさて、遭遇してから3日が経った。


 妹の恥ずかしい姿を見たからと言って俺の生活が何か変わったと言うわけではない。


 澪の方も俺のパンツで自慰をしていたことをちゃんと、正直に認めてくれたし、これ以上その話をするのは澪にとっては不合理で不必要だろう。


 俺としては澪が俺のパンツでやってくれていたことに少しだけ嬉しい気持ちになったが、そんな俺は変態なのだろうか。いや、男なら当然。自分の大切な相手がそんなことをしてくれているのなら興奮は不可避だろう。



 まぁ、いっそのこと澪の貞操を守るためにもお兄ちゃん体を張ってお付き合い、そして入籍の道も案外悪いものではないのかと思い始めてきている。


 というか、ヨスガノ空的な? むしろ、やっちゃいなよ的な? その舞台ステージまで来ているくらいに俺は妹の虜になってきている。


 本題にいこうか。


 先日、俺は妹の事を好きだと言った。それも、恋愛的な話ではなく勿論兄妹愛的な部分でそう言った。


 しかし、俺には学校に好きな人がいるのだ。彼女のことはもちろん恋愛的な意味でだ。


 地味で、メガネっ子でいつも図書室にいる最強で最高な芋っ子属性の持ち主。言うなれば俺の妹とは全くもって真逆の子だ。


 髪の長さも短めでショートボブ? と言ったらいいだろうか。


 顔も決してアイドルのような可愛さがあるわけではないが時より見せる微笑んでいる表情が途轍もなくそそられるものを持っている


 いっそのこと告白したいのが、妹がいるせいで——妹の事が好きすぎていつも過ぎってしまってそこまで踏み込めないのである。


 あの美乳が、あの笑顔が、あの顔が、あの実はエッチな感じが——いつも俺の恋愛を邪魔をするのだ。


 全くどうしたらいいのだろうか。


 この妹好きシスコンを俺から奪ってくれないのだろうか。


「ところで、お前はさ」


 大学のお昼休み。


 学生食堂の外が見えるテラス席に座わりながら最重要事項に頭を悩ませている俺に、隣に座っている腐れ縁の珍田信三ちんだしんぞうがふと問いかける。


「ん? 俺は巨乳派だぞ?」


「僕は貧乳だな、断然」


「おっとぉ……邪道ですなぁ、チン」


「ははっ、僕はあんな下品な胸には興味がないんでねぇ……例えばほら、あそこで独りでご飯を食べている芋っ子とか貧乳でイイッ!!」


 張り切って視線をその芋っ子Aに向けるチン。


 ちなみに、こいつのあだ名がチンだから俺はそう呼んでいる。経緯を説明するのはいたって簡単。珍田→チンダ→チンチン→チンと言った感じで小学生の時に名付けられた。


 いやはや、ここまで下ネタをストレートに使ったあだ名は他に類を見ないともいえる。俺としてもよくもまぁ、考えたって今更だが感心しちまうよ。


 にしても貧乳かぁ。俺からしたら邪道も邪道だ。あの母性があるママ的な雰囲気がいいって言うのに、何もわかっていない。


「美乳もしくは巨乳だ。もちろん、いっそのことドラゴンぺぇぺぇがいいくらいだ」


「よくないねぇ……俺と属性は被ってるのにな。不思議だ」


「ははっ。こっちの台詞だぞ」


 属性と言うのは好みだ。


 俺らは妹好きシスコン兼地味子芋っ子好きでもある。ただ、胸の大きさだけはまったく譲れない個性も兼ね備えている。


 同じ好き同士でも一つでも気に食わないところがあれば全く違う。それが俺たちが腐れ縁でいられる所以である。かれこれ10年以上も胸について語っている変態紳士なのだ。


「よしっ……勝負でもしないか?」


「勝負? 世界中で一番の美乳を探す勝負なら俺が勝ちだぞ?」


「貴様の義妹に僕の本妹が負けるわけなかろうて」


「はっはーん。やってみようかぁ!?」


「って馬鹿。俺の妹は道具じゃねえ、勝負は俺たちでやるんだよ」


「ほうほう?」


「オーイシにもいるよな、地味子の好きな人」


「あぁ、いるけど……一回だけ話したことあるし」


「よし、いいね。僕も同じ条件だ」


 どこまで行っても腐れ縁だな、相性がいい。

 これ女の子だったら、エッチの時も最高に相性がいいのかなぁ。ぐへへへ、これはもうWINWINな関係になっちゃうよね!


「そこで、だ。その芋っ子地味子に告白して先に付き合った方が勝ち! って言うのやらないか? それで俺たちの胸談議に決着を付けようぜ」


「ほほーん、中々面白いこと言ってくれるねぇチン。俺には秘策があるって言うのに」


「残念ながら、僕もだ」


「っち、同じか。まぁいいか。俺もそろそろこの10年胸戦争の決着を付けたかったんだ」


「んじゃあ、やろうか!」


「おうよっ!!」


 食堂のテラス席で大きな声で話していた俺たちを周りの女子大生が変な目で見ていることもつゆ知らず、変態紳士の仁義なき戦いが始まったのだ。

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