第7話40歳冒険者ありえない痴態を晒す

「二人ともお疲れ〜」

ゴブリン3体を瞬殺したシャーロットは普段通りニコニコと笑いながら

こちらへと歩いてきた。

えっ何が起きたんだ今?魔術二つ目を打つ前に倒したのか

「相変わらず化け物みたいな強さね」

いやいや落ち着いている場合じゃないですよフィーナさん

強すぎやしませんか?

俺必要なかったじゃん 足手まといにすらなれなかった

「いつもは一人でもっと強いモンスターも倒してますから!!」

「「おー」」

これは素直に脱帽だ 惜しみない拍手を二人で送る

ふふんと得意顔になったシャーロットはとても可愛いらしい

「このままゴブリンたちの住処の洞窟まで行きましょう!」

そう言って森の奥へと進んでいく。

「シャーロットはなんで道がわかるんだ?」

「なんとなくだよ。勘かな?」

マジックアイテムとかで道標を立ててるとかではないのか

少し狩猟の経験があるがこの林で生活をしているはずの

ゴブリンの痕跡はよくわからない

慣れてきたら俺でもわかるようになるのだろうか

「あれ?何か引きずったような跡があるよ?」

「家畜でも連れ込んだんじゃない?」

「ゴブリンはそんなに力がないから家畜を攫ったとしても若い家畜だけだよ

オークぐらいだったら運べるかもしれないけどこの洞窟を住処にするには小さすぎるしいないと思うけど注意したほうがいいかも」

確かに洞窟の前には新しくできた引きずられたような跡があった。

「ここは私に任せなさい」

そう言って何やらフィーナが呪文を唱える

「第3回魔法?」

「儀式魔法よ。第2回位の魔術の派生ね。時間やコストがかかるけど強力な魔術が使えるわ」

フィーナは口先を窄めてふーと息を洞窟の中に向かって吐き出す

ゆらゆらとピンク色の煙が奥へ奥へと進み立ち込める

「眠りごなの魔術よ5分もすれば眠るし霧散するわ」

へぇ便利な魔術だ

洞窟のような密閉空間にはかなり効果的だ

俺も気の利いた魔法が使えるようになりたいが一個づつ試してみないと

特性をうまく使いこなせない

特に残り9種の魔法を早く使ってみたい

5分洞窟前で時間を潰して松明とフィーナが出した魔法の光で

奥へと進む

フィーナは攻撃型の魔術士と聞いていたが汎用性のある魔術も大半は

使いこなすことができるようだ

「しっかしゴブリンの姿が見えないな」

「そうだねやっぱり何かあったのかな?」

フィーナの魔術で眠っているゴブリンたちがちらほら見えてもおかしくはないのだが

さっぱり見えない 巣から追加で出ているのはみていないので不信感が募る

「なんか臭いな」

「ゴブリンは人間種の中でも不衛生な方の種族だからね。これぐらいの規模になるとこのくらいの臭いはするんだよ〜」

いやこの臭いは明らかにおかしい

確かに獣臭というか体臭のような臭いもかすかに臭うがそれとは

明らかに一線をきしたニオイが放たれている

「うわっ」

足を滑らせて尻をついてしまった

「ほんと鈍臭いわね。怪我とかしてないでしょうね」

「少し手を切っただけだ大丈夫。」

シャーロットに手を貸してもらって立ち上がる

意外と力持ちなんだねふーん

ジムでボディメイクして密かに自画自賛していたが

あまり活躍の場がないな俺の筋肉

しっかし何にすべったんだ

松明で照らされた足元を見るとどす黒い赤が飛沫していた

「血!!」

「獲物の解体でもしたのかしら」

「フィーナさん違います!!ゴブリンは血までしっかりと飲み干すはず!

これは色から言ってもゴブリン自身の血!」

同族で戦ったのかそれとも・・・

「ナオ!!危ない」

闇の中から何かが顔に飛翔する。

とっさで腕で顔を庇う

その間に二人は臨戦体制になる

ゆっくりゆっくりと闇から姿を表したのは何十mもあろうかというようなヘビだった。

「『ポイズンスパイト』です!!重大級<S>で強力な神経毒を吐きます!絶対に避けてください!解毒薬は手持ちにありません!」

ぬらぬらとした黒い鱗と首元には1本筋の赤い線が入っている

どうみても危険だ すぐに距離を取る

あちらもこちらを警戒しているのか近寄らず頭をゆっくり上げてこちらを狙っているようだ

「弱点は氷です。何か魔法ありませんか?」

「フリーズアロー!」

フィーナから氷の矢が飛ぶがそれを巨体でしかもこの狭い洞窟内でぬらりと

『ポイズンスパイト』はかわす

「範囲攻撃じゃないと避けられるみたいね」

さっきの名誉挽回だ 俺の10種の魔法が襲いかかるぜ

魔導書を開き魔法の項目に指を這わす

一番長いスペルのこの最後に描かれた魔法が良さそうだ

発動を念じるが引っ掛かりがある

おそらく儀式魔法のような発動までに時間がかかるのだろう

「少し時間を稼いでくれ!魔法を放つ!」

「「了解!!」」

一糸乱れぬ行動が俺の体を震わせる。

シャーロットが前衛をはりフィーナは後から援護射撃

めちゃくちゃかっこいい!!

これぞパーティの醍醐味だろう

緊張のせいか腕が少し硬い だが絶対失敗はしない

ぐるぐると腕時計の針がまり始める

「二人とも離れて!!」

すぐさま二人が離れた場所に手をかざし頭に思い浮かんだ言葉を

連ねる。

「今ここで問う。我が魂天上天下不変なり。貴様はどうだ!!」

          

            時空間魔法・輪廻転生

時が止まる・・・・・・・

目線ひとつ変えることのできない世界で

胸元がゴソゴソと動く

「ふあぁ」

手元に口を当てあくびをしながら俺の顔元へとくる

妖精・・・

紫色の髪をした妖精それが顔をペシペシと叩く

何が面白いのか手を叩きながら笑う

ひとしきり笑ったのか満足げな顔をして俺の頭へと飛びついた

そして時は動き出す

「何どうなったの。あんたどんな魔法を使ったの!?」

「ナオすごーい!!」

二人してこちらへと飛び込んでくる

まいったなモテモテだこのままじゃあらぬとこに手が触れてしまうではないか

手が触れて・・・・・・

手が・・

手を動かそうとするが1mmも動かすことができない

どうしてしまったのだろうか

「っとふ っふ っふと っふ」

変な呼吸が口から漏れ出る

「あんた何ふざけてんの?」

「違いますフィーナさん!!これは『ポイズンスパイト』が出す神経毒

の症状です。今すぐに治療しないと死んでしまいます!!」

「早くそれを言いなさいよ!!」

やっばい

死ぬかもどうしよう

呼吸がうまくできない体もうごかせない

腕の感覚はすでに麻痺したのか全く感じることができない

やばいやばい

やばい

せっかくいいとこまで来たんだかっこつけさせてくれ

お願い神様

あとちょっとあとちょっとでいいから

もう少しだけ生きさせて

そうじゃないと

俺は・・・

俺の夢・・

「俺の!!

「しょうがないの〜特別じゃよ ほいさ」


<魔術組合・講義室>

「なんだなんだ急に空間に穴が!!」

ざわざわ ざわざわ

「誰か俺の童貞を今すぐもらってくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

「どういう意味ですか?ナオさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る