第2話40歳の化け物退治

獣道を歩き平野へと出る。

街に建造物は見当たらない。博物館で見た2回りもでかいオオカミや

それを追い払った炎。もしかしたらここは異世界なのだろうか。

アニメでよく見たハーレム世界。通称異世界。

ついに俺の時代が来たか。興奮と期待で頭と一緒に下半身も目覚めた。

しかし遅かった。40歳にもなってどうやって異世界で生きてゆくのだろう。

ハレーム作ったアニメの男はみんな若い。モテることを祈って鍛えた体と

大切に大切に守った髪の毛はあるとは言え、歳はごまかせない。

異世界に来たとしても自分は一人寂しく死ぬのだろうか。

せめて童貞は捨てたい。規制の緩い風呂屋でもあるのではないか?

ならば一刻でも早く街へと行かねば!!

癖で腕時計を見る。200万という大金を積んでかった時計は完全に壊れていた。

三つの針はぐるぐると回転し迷子になったかのようだった。

1000年間でも狂わないというキャッチコピーは嘘だったのだろうか。

使い物にはならないとはいえ一応純金製。捨てるのは惜しい。

売ればお金になるかもしれないしつけておこう。



しばらく歩くと生い茂る雑草の中に直線上の地面の素肌が見えていた。

道だろうか?街にたどり着くことを願ってとりあえずその線をたどった。

日が暮れる頃街並みが見えてきた。

完全に日が暮れるまでに街へ着こう。

近づくと3メートルほどの城壁が囲っており、街中には検閲もなく入れた。

しかし寂れた街だ。あかりもなければ人の声も聞こえない。

ゴーストタウンのようだ。

大声を出して呼びかける。反応がない。明らかにおかしい。

生活感はあるのに人がいないことなどあるのだろうか。

街の中心に立つ高い塔へと向かう。

街の全貌が見渡せるかもしれない。

街の中心へと近づくにつれ異臭が漂う。明らかに様子が変わった。

鼻を押さえ歩を進める。するとそこには液体状のゴミがうごめいていた。

「おぉおぉおおおぉ」

うめき声とも泣き声とも判別できないような音が液体状のゴミからの泡とともに弾けて広がる。

やばすぎるなんだあれ

まんま千●千尋に出てくるゴミをまとった龍だ

違う点といえばこちらの化け物はゴミ山の上には何体かの人型が蠢いていることだ

ただやばいのだけはひりつく空気が教えてくれる

まだ見つかってはいない

逃げ出すべきか

背を向けてゆっくりと歩き出す。

「ぷぅ」

腹に力を込めたせいかオナラが出る。

「ぷぅーぷぷ」

振り返ると化け物はこちらへと進行してきた。

やばいやばいやばい

全速力で走る。

化け物の人型の部分から魔法陣が展開され汚泥が飛ぶ。

汚泥が足下へと落ち靴を絡め取る。

革靴なんて履くんじゃなかった

週末愛を込めて磨き続けた革靴を速攻で脱ぎ捨てる。

しかし二つ三つと飛んできた汚泥に完全に足が取られる。

転倒を両腕でとめ化け物を見る。

その距離約30メートル。

オオカミに使ったファイアーボールを使うしかない。

手を前に突き出し叫ぶ。

ファイアーボール

炎の玉がとび人型に当たるが勢いは衰えることなくこちらへと

向かってくる。

ファイアーボール ファイアーボール

何度も叫ぶ。しかし対してダメージを与えられていないのかそのスピードは衰えない。

この魔法は効かないんだ

何か他の魔法は・・・

アニメで見た魔法をうろ覚えで叫ぶが手からは何も出てこない。

汗が滴り落ちる脇は濡れ息は荒くなる。

何か・・  何か・・・

汗で濡れた手を合わせ祈る。せめて苦痛はないようにと・・

そのとき時計が光り輝く。三つ全ての針が統一され12時を指す。

あわされた手からは剣の形に炎が噴き出る。残り5メートル。

無我夢中で炎の剣を振る。

             炎剣・魔炎両断

大きく横に振られた炎の剣はゴミ山と人型を燃やし切った。

いつの間にか足下を覆っていた汚泥は消えゴミの化物はほぼ全てが灰と化していた。

手は震えるが怪我はない

俺はこの化け物を倒したのか?

震える拳を握りしめ雄叫びをあげる。

俺つえーーーーーーー

最強すぎる

この魔法があればモンスター退治をしてお金もガッポガッポと稼げて

童貞を捨てる、、、なんなら家庭を持つことだってできるかも

期待に満ちた未来に笑みが溢れる。

そのとき突然足が掴まれる。

な、何!?

足元を見ると1体燃え損なった人型モンスターが足を掴んでいた。

力は強く振り解けない。

もうすでに手が震えて魔法も使えない。

震える手を道のレンガに食い込ませなんとか逃げようとするが

モンスターはそれを許してはくれない。

痛たた 痛い!?

よく見るとズボンに穴が空き汚泥が皮膚を削っていた。

涙が溢れ尿が漏れる。

激痛が足を襲い意識を持っていく。

死ぬ

???「『死泥へと招く者』発見。魔法放ちます。炎槍・ジャベリン」

火のやりがモンスターの胴体へと突き刺さり一瞬で灰とかす。

その光景を見届け意識が遠のいた。

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