第22話
「というわけで、協力してほしいんだけど」
「「えぇ……」」
当然のようにドリルとセリカは難色を示す。まあ、ドラゴン一狩り行こうぜ、って言われて付いてくる奴の方が頭おかしいのだが。
ドラゴンはお伽噺に出てくるような巨大な怪物だ。ポンポン倒せるような敵じゃないし、当然命の危険が付いて回る。
「無理だと思ってるだろ? でも、正直倒せなくもないんだよ」
「その証拠を示しやがれですわ」
おい口調。
「いや、威力で言えばセリカいれば普通に倒せるしさ。罠を掛けて動きを止めるにしても俺とドリルがやれば良いし。ぶっちゃけ勝算しかねぇ」
すると全員が押し黙った。
授業でセリカの魔法の威力については折り紙付きだし、ドリルの土魔法は攻撃には向いていないが、足を止めたり罠を張ることに精通している。
加えて、ステラの【光学迷彩】があればバレることなく接近できる。
あれ、これ全員強くね?
「んで、レインの固有魔法で止め刺せば良い」
「そんな簡単に行くのかなぁ……。僕のために皆を危険に晒すわけには……」
「別に王子のためじゃないですわ。ドラゴンスレイヤーの称号は喉から手が出るほど欲しいですのよ」
「右に同じく」
「ぐふっ、それはそれで……」
レインがショックを受けたように踞る。
「というか、いきなり深夜に呼び出されたかと思えば、あたしの協力は確実なのか……」
「脅すわけじゃないが、セリカにとっても悪い話じゃないだろ?」
「……まあね。損得勘定の話で言えばメリットしかないのは分かってる。でも、万が一の危機感が抜けてない?」
確かにドラゴンを倒すのは極論であるし、他にも命の危機を伴わない方法で功績を作ることはできる。だが、時間がかかりすぎる。いつ王が崩御するか分からない以上、時間をかけるのは得策でないはずだ。なおかつ、権力を持つ二人の王子を止めるにはドラゴン退治、という英雄譚のような功績を残すしかないのだ。
少しの間考えていると、セリカはふっと息を溢すと、呆れたように言った。
「ま、良いよ。あんたの無茶に振り回されるのも初めてじゃないし。やろうか。ドラゴン退治」
「私も仕方ないですが、賛成しますわ。家を見返す良い機会ですわね」
「私はユウに従う」
「みんな……」
全員の意見が固まったようだ。
良かった……協力してくれなかったら──
──弱味を握って脅すところだったぜ。
拒否権? ねーよ。
内心、黒い笑みで思考に耽っていると、レインが潤んだ目のまま俺に問いかけた。
「なんでユウは……助けてくれるの?」
どこか不安げだった。
今までレインには味方と言える味方がいなかったのかもしれない。城では第三王子という立場が人を寄せ付けず、派閥に属さないゆえか敵視される日々。
そんな中助けると言った俺の思惑は──
「は? 馬鹿かお前。お前が王になったら親友の立場使ってあれやこれやするためだろうが」
「やっぱりユウはユウだったあああああぁぁ!!!!!!!」
「「まあ、でしょうね」」
慟哭を上げたレインに対し、セリカとドリルの二人は納得した表情だ。
当たり前だろ。無償の善意なんか俺の辞書に無い。
「嘘、でしょ」
「……何がだ」
小声で囁いてきたステラに、俺は誤魔化すようにぶっきらぼうに返答する。
そんな俺をクスリと笑ったステラの横顔は可愛げがあった。
「親友って。少しは思ってるから。こんな無茶した」
「……無茶じゃねぇよ。できると思ってるからやってんだ」
「それでも。確かに王の権力を利用としているのも事実。ユウは自ら手を差し伸べたりしない。そうでしょ?」
「うるせぇ」
コツンとステラの頭を小突く。
こいつは……変なところで鋭いからやけに苛立つ。
俺は咳払いをすると、全員を集めて準備に向かった。
微かに頬は熱い。
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