第20話
いつものように登校すると、珍しくレインがいなかった。
朝早く来るあいつが来ないとは珍しいな。寝坊でもしたか?
「あら、レイン王子がいませんの。珍しいですわね」
「もう授業始まるし休みかもな。体調でも崩したか?」
「そうでしたら心配ですわね。……まあ、仮にも王子ですから優秀な治癒士が控えてますわよ」
「仮にもとか言うなよ」
「貴方が言いますの?」
そんなやり取りを交わしていると、ミラ先生が教室に入ってきて授業が始まった。
そしてレインはその日から学校に来ることは無かった。
☆☆☆
「緊急会議を始める」
「なんであたしまで……ただ風邪を拗らせただけじゃないの? あんたも大概王子のこと好きだよね」
「ちがわい。からかう相手がいなくてつまらないだけだ」
机を円卓上に並べ、Aクラス全員で集まった。文句を言いながらもちゃんと来てくれるセリカこそレインのことを気に入ってる証拠だと思うが。
最初から心配していたドリルは言わずもがなだが、ステラは俺が無理やり引っ張ってきた。ちなみにヌルリと俺の隣に居座っている。
「でも、王城にいる時点でどうすることもできないですわよ? グラキエース様なら理由を付けて赴くこともできるでしょうが……」
「多分、無理。父上は忙しい。私単体では不可能」
「だろうな、今時期結構忙しないし、確証も無しに変な行動をするのは避けたい」
「じゃあどうするの? 学生の身ではできることも限られるでしょ」
「だから俺は考えた。神算鬼謀を張り巡らせてな!」
「エスペラントが大抵何かを豪語する時は、何かをやらかす時ですわ」
失礼な。俺だってたまにはちゃんと考えたりするんだよ。行動全てが裏目に出るドリルが言うと面白いな。
「で、どうするの?」
「忍び込む」
「はい、解散ですわ」
「そうだね、あたしも寄りたいところあるし」
「おおおぉぉい!! ちょっと待って話を聞け」
パンパンと手を叩いて荷物を纏め始めたドリルとセリカを引き留め、無理やり席に座らせる。
「勿論、王城の警備は厳重だし捕まれば学生の身分とは言え一発でアウトだ。だが、今回だけは別だ。おい、ステラ分かるか?」
ステラはヌボーとした表情のままコクりと頷いて言った。
「子どもの頃見つけた裏道使う?」
「そ。不本意ながらも俺がステラに連れ回されていた時に見つけたもんだ。多分一回使えばもう使えないが、今回ばかりは有効な手だ」
「それでも見つかればただじゃ済まないと思いますわ」
「当たり前だ。だから今回は俺とステラだけで行く」
ステラに頼るのは業腹だが魔法の都合上、これが適任なのは事実だ。できれば誰も巻き込まずに一人でやりたかったが……
「グラキエース様も巻き込むんですの!? いくら婚約者だからって命の危機ですわよ!?」
「俺もできればそうしてぇわ。でも、俺が一人でやるって言ったら絶対付いてくるだろ?」
「もちろん。この年で私を未亡人にする気?」
「結婚してねぇし、する気もねぇわ」
ステラは不肖と言った様子で頬を膨らませた。
そう、どうせこいつは付いてくる。なら、それを見越した上で計画を組むより最初から仲間にした方が早い。不本意だがな!!
一応切り札を切ればステラを誤魔化すことはできそうだが、別に戦うわけでもあるまいし大丈夫だろう。
「まあ、グラキエース様がそうおっしゃるなら……」
「何にせよあたしは協力『魔法』……分かったって」
一言でセリカは呆気なく折れた。ふっ、俺に弱味を握らせたのが悪い。
まあ、危険な目に遭うのは俺だけで良い。
頑張るか。
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