第9話
「決闘ですわ!!!!」
「え、嫌だ」
練習場に着くなり俺を指差し宣言したドリルが宣う。いきなりどうしたんだよ。ついに頭までドリルになった感じ?
「逃げるんですの?」
「いや、逃げるも何も決闘に至るまでの経緯を教えろよ」
「ふぅ……まったく。そんなことも通じないなんて……」
やれやれとかぶりを振るドリルの仕草は、人を小馬鹿にする感情がありありと伝わり癪に触る。
「さ、さすがに説明くらいはした方が良いんじゃないかな……?」
「むっ、レイン王子が仰るなら分かりましたわ」
流石爵位差別代表格。上の位の人間の言うことは利くのか。
「いいでしょう。オツムの足りないお馬鹿さんに、この私が! ……説明して差し上げましょう!」
「いえ、結構です」
「黙りなさい」
どうやら俺に拒否権は無いらしい。
断っても別に良いけど、何やら面白いことになりそうだから素直に聴くことにした。
「まず、貴方は私に対する態度……上への敬いがなっていません。同じ貴族として恥ですわ。だからこそ、野蛮な貴方に配慮して決闘で事を収めるのですわ。私が勝てば貴方はこれから私の奴隷です。まあ、万が一もありませんが、貴方が勝てば私への態度は許してあげますわ」
ふふん、と俺に説くドリルの表情は、本当に自分が勝てると信じて疑わない自信ありげであった。
「ねえ、受けるの……?」
ハラハラと横で俺たちの行く先を見守っていたレインが、気遣わしげな態度で俺に話しかけてきた。
他のクラスメートは、ステラも含めて全員が後方で成り行きをじっと見ていた。空気の読めないステラも決闘沙汰には無言を貫いている。……いや、あいつ何も考えてねぇわ。虚空を見てる。
「どーしよっかなぁ……」
「あら、入試成績二位は自信がありませんの? まあ、そうですわね。品性が有り余る高潔な精神を持つ私に、ぎったんぎったんにされて、ボッコボコにされるのが怖いんですわね」
「お前、情緒どこに置いてきた?」
品性ってなんだっけ。
だけど、まあ……
「そんなに俺を奴隷にしたいならなぁ……。受けることも吝かではないぜ。いったいムッツリお嬢様は俺を奴隷にして何……いや、ナニをさせたいんだろうな!」
「んなっ……!? ちちちち、違いますわ!!! 私はただ散々私を苦しめた仕返しに、貴方を苦しめたいだけですわ!」
ドリルはシミ一つない白い肌をボッと赤らめた。
「なるほど、そういう性癖、と」
「ちっがーーーーう!!!!」
お嬢様口調もかなぐり捨てて、ドリルは叫び地団駄を踏む。
「ユウ……。女の子相手にそれはないよ……」
微かに頬を赤らめたメスが非難するが、その顔で言われても説得力無い。ドリルより女の子っぽい反応するくせに何を言ってるんだこのメス堕ち王子は。
「ユウを……奴隷に……」
「なに、ちょっと目を輝かせてんだおめぇはよォ……」
「……うえい?」
ダメだ、手遅れだ。
対人能力を全て失ってやがる。
「ちょっと、私を無視しないでくださいまし! いいから、決闘受けるんですの!? 受けるんですの!?」
「選択肢くれよ。……ちなみにミラ先生は良いの? 生徒間の決闘なんて」
欠伸をしながら俺たちを見ていたミラ先生に聞くと、先生は手をヒラヒラさせながら間延びした声で言った。
「ご自由にー。死んでも治せるから安心して」
「リザクレション……!?」
ドリルはかなり驚いていた。『あの先生が!?』と俺より失礼なことを言っている気がするが、ミラ先生は気にしていない様子だった。
「そこまでお膳立てされりゃあ、逃げるわけにはいかないな。その代わり俺が勝ったら一つだけ要求するわ」
ニヤリと笑う俺に対して、ドリルはふんっ、と鼻を鳴らして、
「貴方が勝つことはあり得ませんが良いでしょう」
と澄ました表情で頷いた。
【おまけ】
クズ適性
ユウ→SS+
ステラ→S+
ドレリア→SS
レイン→???
セリカ→F
ミラ→S
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