×月×日

 電車に乗り込むとほのかに暖気を感じてほっとする。目的地の病院はさして遠くなく、座れるなら座りたいが立っていても良いだろう。僕はドアの近くに立った。

 そして到着。人混みは嫌いなのですぐ駅の外に出る。最寄り駅付近とは違い、大型のデパートやビルが密集している。人々は自然と枝分かれしたルートに沿って歩くため、少し外れて行けば人の数はまばらになる。駅前の新品のロッカー横で経路確認。病院に直行する予定であったが、変更しようと思う。電車で左右に揺られながら気付いた。手土産を持っていくべきである。家を出る前は僕と帯刀の仲だからとその必要性を完全に軽視していたが、帯刀の家族などに出くわす可能性があった。

 とりあえず駅前の百貨店に入って、地下のお土産コーナーを散策する。強烈な暖房にたまらずコートの前を開けた。こういう所に来たことが無い僕は目移りが止まらない。結局瓶入りのカスタードプリンをご家族分四つと予備で一つ購入した。

 無為にこれ以上留まる必要は無い。だが、病院に行きたくないという気持ちが邪魔をした。一旦外に出て、近くの衣料店などを見て回ることにした。そのうちにプレゼントとしてプリンに何か付けても良いだろうと考え付いた。普段なら一人で入らないような洒落た雑貨店に入店する。タグを除けばアルファベットのほうが多そうだ。そこで直感的にプレゼントを決定してしまった。頭でっかちなウサギのぬいぐるみ。店内でこの愛らしいウサギが明らかに浮いていて目に留まった。恥ずかしさを堪えて会計を済ませ、紙袋に入れる。まあ、最低限の礼儀は果たせそうだ。頼んだぞ、ウサギ。帯刀と言えば、卵とウサギが好きという印象がある。じゃあ、行きたくないけど行こうと思う。

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